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31 ポーターハウスステーキ・ポテチ添え

あれから色んな肉や野菜を切っては食ってを繰り返した。


タマネギは切るだけで甘くなり、トマトはより瑞々しく、バターを切っても刃に付着しない、ニンニクも臭みが抜けて、肉は骨まで豆腐の様に切れてしまったぞ。


元から骨も切れるぐらいに手入れはしていたが、更に切れ味が上がり切断面も綺麗に……


どうやら俺の聖剣(ブッチャーナイフ)聖剣(エクスカリバー)に進化してしまったらしい。


何で俺自身がパワーアップしなかったんだとツッコミたいが、便利だしいいか。


それにこれなら……日本では食えなかったアレを作る事が出来る!





そんな訳でマットさんに口添えして貰いつつ、肉の解体場にやって来た。


目当てはサーロインとヒレなんだが……よし、良い状態で残ってるな。


サーロインから不必要な脂身を切り落としつつ、ヒレはギリギリまで大きく取る様に、と。


因みにこの世界ではサーロインはサーロと呼ばれていた。


俺が作ろうとしているのはポーターハウスステーキ……通称Tボーンステーキという奴だ。


Tボーンステーキはヒレのサイズによって呼び方が変わり、大きめがポーターハウスステーキ、少なめがTボーンステーキと呼ばれている。


因みに骨だけ残してヒレがないサーロインステーキはLボーンステーキという。


聖剣(エクスカリバー)と化したこいつなら好みのサイズに切れるし、ヒレは内臓が近いのもあって臭みが出る場合もあるが聖剣(エクスカリバー)ならそれも出ない。


まさに俺向けのパワーアップだったな。


「……よし、7人分取れた」


俺、タープ、マリア、苺心、キャリ、マリアの両親で丁度7枚……日本じゃ1枚で2500円もするから手が出し辛かった。


それにステーキハウスじゃ焼いたのが最低でも8000円はするからな……クソ上司に強制連行された接待で、かつ俺の財布から3人分を出させやがって畜生。


しかもミディアムレアって注文したのをウェルダンで出しやがって……オマケにソースはオリーブオイルと黄身を混ぜたアレだったし。


まあクソ上司と接待相手の代金はクズ上司が酔い潰れた隙に回収させて貰ったがな……交通費と利子も含めて。


「いや、スマンが資金は出すからもう2人分追加してくれ……俺も食べてみたいしハニーも同じだろう」


まあ口添えしてくれたし、マットさんには世話になってるからな。


焼けと言うなら喜んで焼くよ。


味付けはシンプルに塩コショウでするが、付け合わせはちょっと変わった物を作ろう。





よし、始めるか。


まずは付け合わせからだな……材料はトマト、ジャガイモ、チーズだ。


ジャガイモはスライスして高温の油でパリッと揚げるポテチにして、冷ましたら砕く。


チーズは角切りにしておこう。


アルミホイルにバターを塗ったら中身をくりぬいたトマトを乗せて、中に砕いたポテチと角切りのチーズをギッシリと詰めて、包んで焼く。


割合としてポテチ6、チーズ4が丁度いい。


後はこれをちょっと焦げるぐらいに焼けばバーベキュー式ポテチグラタンだ。


因みにバターじゃなくてオリーブオイルでも美味しく出来るぞ。


そして次はいよいよポーターハウスステーキ……


マリアの両親はレア、マットさんとロリババアにキャリがミディアムレア、後は全員ミディアムにする。


焼く直前に塩コショウと少量のガーリックパウダーを振り掛けて、じっくりと焼けばいい。


注意するべき事は最初サーロインは直火、ヒレは火から放して焼いた方がいいってぐらいか。


余談だがキャリがミディアムレアなのは、ミディアムに焼いた肉が固いと言って泣いてしまった上にレアに焼いた肉は気持ち悪いと言っていたからだ。


まあキャリは今までがアレだったし、年齢一桁の内は好きな物を食わせてやってもいいだろう。


顎を鍛えるなら歯が生え変わってからでも遅くはないだろうし、レアは日本人でも嫌がる奴が居るからな……気持ちは解らんでもないけどレアも美味いんだぞ。


タープとマリアからは甘いと言われた上に可愛い妹から親バカ扱いされたが、この考えを改める気はない。


叱るべき所はちゃんと叱ってるし。





「よし、このステーキは熱い内に食ってくれ」


「おお、ヒレとサーロを一緒に食えるとは贅沢な肉じゃなぁ」


「うむ、どちらも同じ焼き加減に出来ているな……流石だ」


サーロインとヒレじゃどうしたってサーロインが大きくなるからな……下手に焼いたらサーロインがミディアム、ヒレがウェルダンなんて事はよくある失敗だ。


商売なら脂が大好きな日本人向けにサーロインを重視する傾向もある。


だがバーベキューなら話が違うぞ、いつもの片側寄せで焼く事で均一の焼き加減にする事が出来るからな。


「この前のステーキも美味かったんやけど、こっちも美味いわぁ」


「凄い……ベーコンがないのに満足」


「本当にお兄ちゃんのステーキって美味しいよね……」


ははは、誉めたって付け合わせの追加しか出せないぞ。


もしくはパンを炙ってやるぐらいか。


「パパー、真ん中のが固くて切れない!」


「キャリ、それは骨だから食べられないぞ」





「ほぉほぉ、この焼いたトマトとチーも中々じゃな」


「中にサクッとした物が入っているが、これは美味いな」


「熱々を頬張るのが美味いわぁ」


やはりこのグラタンも好評だな。


ジャガイモにトマトとチーズで不味い筈がないんだが、ポテチも普通に受け入れている様だ。


「因みにこれがそのサクッとした物だ」


余分に作っておいたポテチも出してみたが……全員、可愛い妹までもが手を出してやがる。


「サクサク、パリパリと楽しい食感じゃな……これだけでも美味いわい」


「こいつはポテチと言ってな、以前教えたベーコンエッグを更に美味くさせる為の物だ」


「な、何じゃと!?」


そういやロリババアには言ってなかったか……


まあ不利益がある訳でもないし、教えても構わんな。


「実はあの本を書いたのは俺の師匠とも言える人でな、あの黄金のブタを焼く為に組み立てたコンロも師匠が考案した物だ」


「そうじゃったのか……意外な繋がりもあったもんじゃなぁ」


師匠って言ったのはその方が納得しやすいだろうと思ったからだ。


実際は同じピット……すなわちバーベキューを共にすれば家族だというのが尊敬するピットマスターの持論で、俺もそれは尊重している。


タープとマリアは本当に家族になったしな。





翌朝……再びポテチを作って、またベーコンエッグを作る羽目になった。


まあ教えた責任もあるし構わんけど。


基本的な作り方は変わらん、仕上げのチーズに砕いたポテチを混ぜるだけだ。


これにより柔らかいベーコンエッグにカリッとした食感が加わり更に美味くなる。


勿論ハチミツとの相性は抜群だ。


「これが……ベイケンエッグの本当の味なんじゃな?」


「ああ、これまでこの世界にはジャガイモがなかったからな……ポテチが手に入らなかったが今なら作れる」


ポテチ自体はサツマイモでも作れなくはないけどな……


ただサツマイモでは強い甘味が全体のバランスを崩すし、ジャガイモのポテチと違ってパリッとしない。


一度だけ試してみたがこのベーコンエッグに使うとカリッではなくガリッて音がする。


「ジャガイモはケンタン領で栽培を始めた、5個で13バラン」


「よしマリア、商談をしようじゃないか」


商魂逞しいなマリア……だが俺は商売の素人だからな、お任せする。


「イチゴお姉ちゃん、ハチミツかえしてー!」


「既に瓶半分もかけてるんだから、これ以上は駄目だよ」


キャリ……それは流石に掛け過ぎだぞ。


後でしっかりと歯を磨いてやらなければならんな。





「……ジャガイモ、10個で20バランまで値引きさせられた」


あのマリアから値引きするとは……族長の肩書きは伊達じゃなかったんだな。


端から見ればただのロリババアだというのに。


「あの潤んだ上目遣いが、反則すぎる」


見た目を最大限に活用してやがるなロリババア!?


前に誰も逆らえないとか言ってたが、まさかそういう事だったのか?


まあ元々が10個で1バランの安売りだし、利益はあるからいいけど。

Tボーンステーキの骨もサクサクと食える……そんな人間になりたい

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