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27 アンチョビピザ・トルネードステーキ添え

親父(レクタ)さんはまだ湯治をするとの事だから俺達だけでケンタン領に戻って来た。


別れ際に何故かマレスに泣かれたが可愛い妹もたまには遊びに行くと言ってたし、その内ピットマスターとしての腕前を見に行ってやろう。


何でピットマスターなんだって?


俺が教えたのは全てバーベキュー料理だからだ。


「はぁ……暫くはマレスちゃんやあの美味しいエビとお別れか」


「あのクルエビなぁ、ホンマ美味かったわぁ……」


「確かに美味しかった、また食べたい」


3人揃ってあの伊勢海老もといクルエビを随分気に入った様で……結局毎日食っていたもんな。


いや、確かに美味かったけど毎日捌いて作る身にもなれよ?


あの強烈な旨味と甘味を飽きない様にする味付けって大変だったんだぞ。


「……所でお兄ちゃん、出発前の朝早くから作ってたそれは何?」


「アンチョビだ、イワシの腹身で作る保存食にして調味料」


「あ、よくピザに使われてるアレね……」


これは保存を優先してキツめの塩を使っているからそのまま食うには向かないが、こいつを乗せたピザは美味いんだ。


それに酒のツマミにもなる。


使わなかった背側の身は朝飯で美味しく頂いたから無駄にはしていないぞ。


「お兄ちゃん、夕飯はピザにしない?トマトソースなら私が作るから」


「解った、生地と他の具は用意する」


可愛い妹のリクエストならば応えるしかあるまい。






「職人に話はつけた、明日から着工してくれるみたい」


夕飯のピザを食いながら新居についての話をされた。


うん、やはり刻んだアンチョビにベーコンをたっぷり乗せたピザは美味い。


伸びる程に入れたチーズもちゃんと溶けてるし、スライスしたトマトとタマネギもいい仕事をしている。


「場所は教会の隣、費用は経費込みで105000バラン掛かるらしいけど何とか足りた」


今回ペスカタで稼いだほぼ全額じゃねぇか……


しかしそうなると家具が買えんな。


それとタープ、チーズは調子に乗って伸ばし過ぎると服が汚れるぞ?


「どの道すぐに建つ訳やあらへんけど、またベーコン売りに行くんか?」


「暫くはサーマが買い取りしてくれるから売りに行く必要はない……それにイチゴのお菓子も材料が足りないから売りに行けない」


「あの孤児院でうどんを売る様になったみたいだからね……評判がいいみたいだし暫くは薄力粉が手に入らないかも」


あの時マリアは商談があるとか言ってたが……成程、それか。


まあベーコンは作り足す必要がありそうだし、子供達が育つにも金が必要だからな……仕方ない。


後可愛い妹よ、さりげなく自分の取り分に乗ってるベーコンをマリアの取り分に移すな。


マリアなら美味しく頂くだろうけど。


「家の完成は次にサーマが引き取りに来る来月辺り、それまでにウメオの難題を片付けようと思う」


難題……ああ、野菜狂信者に肉か魚を食わせろって女神様からのアレか。


確かにいつまでも先伸ばしにする訳にはいかんし、ここらで手を付けた方が良さそうだ。


それはそうとタープにマリア、俺の取り分をかっ拐おうとするな。


足りないなら追加を焼いてやるから。


「つまり……イチゴが思わず食いたなる肉を作ればええんやろ?」


「何で私を引き合いに出すかなぁ……私はお肉も食べるよ?」


そうだぞタープ、可愛い妹は肉を全く食わない訳ではないからな。


ただ食べる量が少ないだけだ。


だがどうした物か……最初は焼きたてのお好み焼きでもと思ったが山芋や豆腐はないし。


あからさまな肉や魚では絶対食わないだろうな……まあ魚は鰹節かアンチョビぐらいしかないんだが。


やはり肉……それも野菜狂信者が食いたくなってしまう肉が必要か。


……あるかなぁ?





「という訳で色々と試作してみた」


「朝っぱらから色々と並んどるんはそれでかいな」


「美味しいなら幾らでも食べる」


さて、まずは色んな豆を潰してニワの挽肉と混ぜ捏ねたハンバーグから……


「んー……豆と肉の相性が良くないわぁ、それにパサパサしとる」


駄目か……脂が少ない方が食って貰えると思ったが肝心の味がイマイチじゃ意味がない。


それじゃ次はアンチョビをペースト状にして生地に練り込んで、ハチミツを塗りながら焼いたパンケーキだ。


「味はいいけどバターの匂いが強い……これだと口にすらして貰えない」


バターすら駄目なのかよ!


「お兄ちゃん、パンケーキには卵も欠かせないんじゃない?」


あ、そういやそうだった……


元居た世界の野菜狂信者の中にはパンだけは食べる奴とか、チーズ牛丼をかっこむ奴とかも居たんだがこの世界には居ないらしい……となると米かジャガイモを使うべきか。


「潰したジャガイモにみじん切りのタマネギと挽肉を混ぜて揚げたコロッケという料理だが……これはどうだ?」


「美味しい、けど挽肉の食感に気付かれたらウメオの命が危ない」


「……いっそ肉や骨から取った出汁でスープにでも」


「アカンわ、そんなん匂いでバレてまうよ?」


おのれ野菜狂信者共……どんだけ我儘なんだよ!?


やはり目に付いた端からふん縛って、口に無理矢理詰め込むしかないのか?


「はぁ……らしくないよ、お兄ちゃん」


「……え?」


「いつものお兄ちゃんなら自分が【これが一番美味いんだ!】って思ってる料理を強引に薦めるのに、何で今回は相手に合わせようとしちゃってるの?」


えぇ、可愛い妹から見た俺ってそんな奴だったのか?


……考えてみれば思い当たる節がありまくりだったわ。


結婚もしたし少しは自重した方がいいんだろうか?


「やっぱり変な小細工はしないで、お兄ちゃんが自信を持って出せる料理を食べさせなきゃ意味がないんじゃない?」


そうだな、その通りだ。


まさか肉を嫌がる可愛い妹から諭されるとは思わなかったが……紛れもない正論だ。


俺が最も美味いと思う肉料理、それを野菜狂信者共に食わせてみせる!


……でも上手く行かなかった時はふん縛って食わせよう。





という訳で昼に食うのはどうかと思い夕飯……俺が最も美味いと思う肉、ウシのランプ肉に自家製の牛ベーコンを巻いて焼いたミディアムのステーキ。


通称トルネードステーキと呼ばれている料理だが、本来はヒレ肉で作る所をランプ肉で作った……


俺が尊敬するピットマスター(故人)に初めて会った時、目の前で作ってくれたのがこれだったんだ。


味付けはその時と同じ塩コショウ、ガーリックパウダーとパプリカパウダー、最後にベーコン。


ついでにニンニクを牛脂(ヘット)で揚げたガーリックチップをステーキに散らして、メインはこれで良し。


付け合わせに塩茹でしたジャガイモ……それをアンチョビ、タマネギ、ニンニクのみじん切りとオリーブオイルを混ぜたアンチョビソースで和えた。


最後に残った牛脂は……1cm幅に切ったコッペパンを焼いた物に垂らして、仕上げに乾燥パセリを振り掛けた。


これはフランスパンでやると美味いんだが、コッペパンでも中々の物だ。


ともあれベーコンとパンに違いがあるけど、あの時の再現は可能な限りに出来た筈……後は味だが。


「ホンマに美味いやん!今まで食うた中でいっちゃん美味いわ!」


「本当にこれは美味しい、流石ウメオ」


「うん、やっぱりお兄ちゃんが作るならステーキだよね」


普段は肉を余り食わない可愛い妹までしっかり食ってるし……


だがこれで自信が持てた。


後は野菜狂信者の元へ向かう前に肉の確保とベーコンの追加、ジャガイモやニンニクの仕入れだな。


「肉の確保は私の役目、でもベーコンだけはウメオに任せるしかない」


「ジャガイモとニンニクはウチが引き受けたるよ」


「じゃあ私はパンを用意しておくね」


ベーコン作る以外にやる事がねぇ……本当に頼りになる。


とりあえず風呂でも沸かしておくか。

アンチョビの乗せ過ぎは注意

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