21 露天風呂・鰹のタタキ添え
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何やかんやで1週間……再びペスカタへ向けて出発した。
キャベツの栽培は上手く行ってオヤッサンを交えながら焼そば食いつつ……いっそ委託してみる事にした。
少なくともにわか知識でやるよりは専門家に任せた方が良い結果になるだろうし。
それと女神様に頼んだ物もちゃんと届いたぞ。
どうしても変換が出来なかったマヨネーズに材料がなくて作れなかった香辛料……何より尊敬するピットマスターのレシピ本が嬉しい。
一応品物は全部揃っていたがまだ金は余っているらしいし、必要ならまた送ってくれると言っていた。
本当にありがとうございます。
だが夜の営みはあれから1回しかなかった上に到着まではお預けらしい……しかも寝る時は変わらず添い寝だそうで、拷問ですか?
まあいい、新居を建てるまでの辛抱だ。
今回は合計4台のリアカーを用意して、内2台にベーコンを、1台にコンロや調理器具の類、最後はカボチャやベーコン以外の食材を乗せて移動する。
向かうのは前回とは違う街で、そこには神父も行っている温泉があるそうだ。
俺が引いているリアカーは調理器具の奴で、前回は置いてきたミンサーもちゃんと持ってきたからな……これでイワシハンバーグを作るのが楽になる。
「ウメオ、今回お酒を買うのは我慢して」
「新居の為にだろ、それぐらい解るが」
「そうじゃない、ペスカタ領でお酒を販売出来るのはノース……コンテストに居たあの男と、その配下だけだから」
「……そういう事か」
あの時マットさんに沈められてから、随分と痛めつけられたらしいからな……
マリアと結婚した俺に恨みを持っていてもおかしくはないだろう、だとすれば完全な逆恨みだが。
って、この世界でも酒を売るのに免許とかあるのか?
「それだとこっちの商売も邪魔される可能性があるんじゃないか?」
「それは平気、今から向かう街の街長は私の幼馴染でノースが唯一逆らえない相手……それに、そこらのチンピラを差し向けたってイチゴが対処できる」
……まあ、可愛い妹は空手をやってたし、女神様から色々と貰ったらしいしな。
最近は空手より鞭を使ってる方がしっくり来るそうだが。
「それにウメオのベーコンは圧力をはね除けてでも欲しがる人が大勢居るし、そもそもペスカタは海の向こうから来る人の方が多いから大丈夫」
そういう物だろうか?
まあ、現地のみで通用する権力じゃ余所者には余り影響しないってのは確かだけど。
はい、到着っと。
道中は1度だけ盗賊が来たが可愛い妹がアッサリ片付けた……鞭で。
しかしあの盗賊、たまに見る顔だったのと……鞭で打たれて喜んでいる様に見えたのは気のせいだろうか?
気のせいだな、うん……深く追及してはいけない。
「そういや宿はどないするん?」
「2部屋借りる必要があるから1番安い所に泊まる、お風呂なら温泉があるから問題ない」
温泉か……強制参加の社員旅行で入ったきりだな。
しかも積立金4万も取っておきながら自腹の現地集合で1泊8000円の宿、出てきた料理も1人2500円の一番安いコース。
更に言えば飯食って温泉入って帰るだけの日帰りだったからな……当然帰りの交通費も自腹だった。
同僚と協力しながら、そんな社員旅行を企画した奴の横領の証拠を集めて訴えてやったが金は返って来なかった……
クビは切られたらしいからいいけど。
「着いた、ここは2人部屋が1部屋で1日15バラン……ちゃんと温泉もあるし、部屋は防音も万全」
何故防音……いや、解るけど。
それで日本なら1泊1500円の宿か……ワケありでもなきゃありえん値段だな。
「ただし食堂の料理は不味い、だから明日からはウメオかイチゴが作って」
「そういう事か……解った」
部屋に拘った余り料理を軽視してるんだな……客を舐めてんのか、どっちも拘れよ!?
「って明日からでいいのか?」
「今日は街長にお呼ばれしているから、夕食もご馳走してくれると言っていた」
成程、タダで食えるなら大歓迎だ。
それに現地で好まれる味付けを知るにはいい機会だからな。
「2人部屋を2部屋、滞在は10日、お酒は2人分を初日と最終日だけ、食事はいらない」
「はい、お酒だけ込みで400バランになります」
酒代は2人の2日分で100バラン……1万円か。
まあ2人でその値段なら安いぐらいか、タープは飲まないし苺心は未成年だからな。
というか宿泊費もマリアの貯蓄から出させてしまった……頑張って稼がねばならんな。
さて、リアカーの荷物を運んだ所で……
「今日は疲れを癒して屋台は明日からでいい、街長に会う前に温泉へ案内する」
まずは温泉か……確かに風呂は入りたい。
入口には何故か暖簾がかかっているし、赤が女湯で青が男湯とすると……そこの紫と黄色は何だ?
「紫はオスムスメと呼ばれる人達で、黄色は混浴になってる……どちらも昔、迷い人から聞いたアドバイスを元にしたらしい」
オスムスメ……雄娘?つまりオカマか男の娘用って訳か。
って混浴あるのかよ!
いつ来た迷い人かは知らんが……良くやってくれた!
「混浴は異性に飢えてる男が多数陣取っているし、その男達を狙う男も居るからオススメしない」
そこは日本と同じなんだな……いや、日本の混浴にゲイは居なかった筈だが。
まあ時間はあるんだ、ちゃんと男湯に入っておくか。
覗き?する訳がない。
運良くタープとマリアを見れた所でまた湯気か謎光線……あるいは新顔の海苔が邪魔するだろうからな。
更に言うなら可愛い妹に気付かれてしまった瞬間、確実に嫌われてしまう。
ふぅ、サッパリした。
例の如く男の入浴なんざ実況したってつまらんから割愛だ。
それにしても温泉上がりに飲むただの水がやけに美味いな。
どうせならミルクかビールが良かったが……ミルクはケンタンで売ってる物より高いし、ビールは存在してないから諦めた。
しかも今の俺が自由に使える金は200バランしかないからな……無駄な出費は可能な限り避けるぞ。
「早いねお兄ちゃん……」
「おお苺心、お前も大して変わらんぞ」
って可愛い妹はミルクを飲んでるし!
まあいい、苺心が自分で稼いだ金だし……でも腹は壊さない様に注意しろよ。
「お待ちどー!」
「少し休んだら街長の所へ行く」
タープもミルクを飲んでるがマリアは水か……まあこの辺は性格の問題だろう。
で、街長に会っている訳だが……
「久しぶりねマリア、何でも優秀な料理人と結婚したそうじゃない?」
「久しぶりサーマ、此方が旦那のウメオ」
「あ、ども……」
美人だが8パックに割れた腹筋、はち切れんばかりの大胸筋、まるで山の様な上腕二頭筋……全体的に見てもマットさん以上に強そうだ、ってか絶対強い。
こんなの例の奴でなくても全く逆らえる気がしないだろ。
皮膚の色からダークエルフだとは思うが耳はそんなに長くない?
「サーマはハーフダークエルフ、父親が普通の人間だった」
あ、成程……ハーフか。
「まあまあ、まずは食事にしましょう」
出てきたのはやはり魚か……
そぎ切りされた生の赤身に薄切りのタマネギやニンニクがたっぷり乗って、醤油とレモン果汁がたっぷり掛かって……ん?
「100年前に迷い人から習った、今朝釣れたばかりのカツで作ったタタキって料理だよ」
迷い人から習ったタタキ?カツは鰹の事か?
という事は刺身じゃねーか!?
まあ考えてみればこの世界にも鰹節があったからな……そりゃ鰹だって居るに決まってるわ。
「見た目は生で抵抗あったんやけど、確かに美味いわぁ」
「サーマはズルい、こんな美味しい料理を100年も内緒にしていたなんて」
やはり魚を生で食う文化はなかったか……以前イワシの刺身も食いたかったが自重しといて良かった。
でも確かに美味いな……苺心も夢中で食ってるぐらいだ。
これは酒が欲しいが宿に戻るまでは我慢だな。
「それでマリアが言ってたベーコンとやらの買い取りだけど、条件を出すよ」
そんな事を話していたのか……まあ例の奴の妨害を避けるなら唯一逆らえないというサーマを通すのが一番安全で確実か。
多少は値引きをさせられて、幾らか手数料を取られるだろうが確実に金に出来るという強みがある。
何より商売ならマリアに任せた方がいいからな……反対はしないぞ。
「その条件は?」
「こいつを見てくれるかい?」
これは以前も世話になったイワシと……イカじゃないか。
しかもイカはまだ生きている、刺身にしたら絶対に美味いだろうな。
「最近やたらと網に入ってくるこの2つの魚、これをどうにか売れる様に出来たら引き受けるよ」
「なっ!クラケンって食えるんか!」
クラケンって何だその中途半端な名称は……まあいいか。
イカはタコと同様に食べる国が少ないからな、そう思うのは仕方ない。
「大丈夫、ウメオが美味しく料理する」
「……やっぱり俺に振るんだな」
さて、イワシは前回同様でいいとして……イカはどうするかな。
鰹はニンニクたっぷりのタタキに限る




