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101 恩師のソーセージ・アンチョビソース添え

いよいよ領主とアンカーの結婚式が始まった……


やはりと言うか何と言うか、領主以外の貴族も当然の如く参加しているが全員が見事なマッチョだよ。


一部が急拵えな舞台でボディビルみたいな事もしていやがるし……ってさりげなくマットさんにペグさん、何故かシェラフまで参加者に混ざっていやがった。


だが何よりサーマより更に逞しい筋肉をしている老人の腕の太さが凄まじい。


「ボーイ、挽肉を味付けしたらベーコンの処理を始めてくれ」


「解った」


まあ、ボディビルの勝敗は気になるが今はバーベキューに集中しよう。


「マレスはアンチョビソースを任せる……予め塩を少なめに頼んだがギリギリまで塩を抜いて、限界までニンニクを効かせるんだ」


「わ、解りました!」


肝心のソースはマレスにやらせるのか……まあ魚を使うなら確実に俺やジョニーさんよりも上だからな。


だが塩が少ないアンチョビって魚の臭みが抜き切れないんじゃ?


「……よし」


お、ジョニーさんが作ったソーセージ……色がやや黒い?


それに燻製香も強めで、あれは始めて見るソーセージだ。


「こいつはブラッド・ソーセージ、ポークの血で作るソーセージだ」


「ああ、苺心が難色を示したから今まで食う機会がなかったあの噂のソーセージか」


噂と言ってもあのピットメンバー達から聞いた話しか知らんけど。


特にスコッチさんが熱く語っていやがったなぁ。


「でも確かそのソーセージって強い癖があるんじゃないのか?」


「そりゃ血の塊だからな、ある意味こいつは癖の塊だ……だがボーイなら知ってるだろうが血は癖の塊でもあると同時に旨味の塊でもあるんだぜ」


そりゃ肉には必ず流れているからな……


話に聞いた事しかないがブラッド・ソーセージは文字通りの血生臭さがあるが凄い旨味でもあるという。


確かにそれを入れたベーコン・エクスプロージョンは美味いだろうが臭みはどうするんだ?


「ま、臭みについては心配するな……俺の得意分野を忘れた訳じゃないだろう?」


そうだった、ジョニーさんは臭みの強い肉を使ったジビエが得意だったな。


それでも一抹の不安はあるが……ここは信じよう。





「……よし、後は焼けるのを待つだけだ」


「ふぅ、疲れたな」


「ハハハ、確かに俺が酒も飲まずにコンロの前に立つ事は滅多にないからな、緊張しただろう」


「とか言いながら早速飲んでるじゃねぇか」


「俺の役目はこいつを焼くまでだ、仕上げは領主の指名を受けたボーイとマレスに任せるぜ」


おのれ……領主の結婚式だからシラフでいなきゃならんので仕方ないとはいえ酒が飲みたい。


後で貝を生でやる時は浴びる程飲んでやる。


「ふむ、やはり魚はマレスに任せて正解だったな……火から下ろして、焼ける直前にまた温めてやれ」


「は、はい!」


どれ、俺も味見してみるか。


お、このアンチョビソースはレモンとニンニクが効いてて美味いが……やはりアンチョビの魚臭さがあるな。


「ボーイ、マレスもここに余ったブラッド・ソーセージがある……こいつにそのソースを付けて食ってみな」


おお、始めてのブラッド・ソーセージ……ちょっとドキドキしてきたな。


まずは何も付けずに一口、あー……確かに生臭い。


例えるなら豚の肝臓、レバーの臭いに近いな。


だがレバーよりも舌触りが滑らかで食べやすいし、味もこっちのが美味い。


作り方だけは聞いてるし、帰ったら作ってみよう。


そしたら次はソースを付けて……何じゃこりゃ!


「え、あの生臭さが消えてスッキリした味になった?むしろいい匂いがします」


「マジか!」


「ハハハ、そういえばボーイにも教えた事はなかったな……こういう癖のある肉は臭みを抑えるなら柑橘類のソースがベストだが、逆に全く別の癖をぶつけるのも有効なんだ、レモンは念の為の措置だがな」


そうか、それでアンチョビの塩を限界まで減らした上に抜いたのか。


「因みにこのブラッド・ソーセージはブルーチーズのソースで食っても美味いんだ……この世界じゃ手に入らんがな」


ブルーチーズ……ああ、あの酒に合う青カビが生えてるチーズだな。


あれも癖が強いからこのソーセージによく合いそうだ。


とはいえジョニーさんがないと言うなら作る事も出来なかった、という意味でもあるだろう。


「所で手が空いたんですけど……待ってる間は何をすればいいんですか?」


「まあ焼けなきゃ仕上げられんからな、夕方まではキャリと遊んでやってくれ」






さて、祭りが落ち着いた所で来客が席に着いて……マレスも戻って来た。


一人一人が順番に領主へ祝辞を述べて、純白の衣装を纏ったアンカーが来たな。


ロリババアが後ろから着いて来てるが見た目のせいかベールガールにしか見えん。


言わないけど……っと、ジョニーさんも戻って来たか。


「ボーイ、あそこのレディを見な」


「あそこって……あいつは野菜狂信者か?」


見た感じロリババアと同じぐらいの背丈だが……金髪のエルフだから間違いない。


「奴はフィオレという、俺が最初にこの世界へ来た時にも居た……当時は部隊長とか言ってたが出世したらしい」


ジョニーさんが最初に来た時って事は800年以上も前から居る……正真正銘のロリババアじゃねぇか!


「だが奴は味方ではないが敵でもない、ベジマニアの中に居ながらかつての俺達が敬意を払えた存在だ……さっきまで酒に付き合って貰っていたしな」


つまり肉や魚も食える数少ない野菜狂信者……いや、肉や魚も食えるならベジタリアンか?


ってか酒が飲めない俺の前で酒の話は止めてくれ、今すぐ飲みたくなってきた。


「……他は身内やらを連れて来てるがあの人は一人か?」


「流石のベジマニアも人数で劣る現状じゃ領主や国と事を荒げたくはないんだろう、そこで唯一肉も食える奴が派遣されたって所か」


成程な、野菜狂信者もバカじゃないのか。


元の世界の野菜狂信者は菜食主義を広める為に手段は選ばず、逆に敵を増やしていたんだがなぁ。


「因みに奴はライスの酒が好物でな、明日は奴も参加して質問があるなら3つだけ答えるそうだ……ベジマニアの事情や動向を知りたいなら拒むなよ」


「解った」


野菜狂信者の事情か……確かに知っておいた方がいいか。


まあどれだけ悲惨な現状だとしても態度を改める気は一切ないし、トゥール様の指示があるから今後も肉を食わせてやるけど。


式が終わったら聞きたい事をリストアップして、3つまで絞っておかないとな。


おっと、その前にようやく焼けたこのベーコン・エクスプロージョンを振る舞わねば。

ブラッド・ソーセージは高い上に腐りやすい……

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