義務
私は今沢山の幽霊を掻き分けながら会社に出勤する途中だ。
何故幽霊を掻き分けながら出勤しているかと言うと、地球温暖化が原因である。
夏の最高気温が60度を越えたとき、オカルトやホラーに造詣が深い政治家の発案で政府はある条件を見返りに幽霊と契約した。
そのお陰で私達国民は朝から幽霊を掻き分けながら出勤する事になったが、冷房の効いた部屋の中にいるのと同じくらいの冷気の中を歩けるようになる。
見返りに出した条件とは、山や海の自然を保護する事と街を昔ながらの情緒溢れる街並みに戻す事。
人間を怖がらせに出てくる幽霊にしてみれば、川を覆うように造られた道に出現するより、川のせせらぎが聞こえる川縁に出現した方がより趣があるとの思いから。
だから私達国民も昼間涼しい環境で仕事や勉強が出来る見返りに、夜幽霊に出会ったら悲鳴を上げ怖がる事を義務付けられている。