起動、そして…
…どれくらいの時間が経ったのだろうか?
どうやら俺は生きている様だ?
しかし不思議な事に身体の感覚がない
まるで五感全てが機能してないかの様に
何も見えず聞こえない
(まさか…死後の世界!?やっぱ死んじゃってるのか?それとも病院のICUで植物状態とか?…どうなってんだ?)
“Cherubim system start-up”
(ん?なんだって?ケルビム?)
混乱状態の中、突如として聞こえた英単語に驚きつつ、俺は徐々に五感が戻ってきた事に安堵していた。
「ぉ……ぉ…ぃ…おぉ〜い、聞こておるか?さっさと起きんか寝坊助め!」
感覚が戻った途端にいきなり怒号を浴びせられ、何事かと声のする方を見ると
白衣を着た見るからに怪しげな髭面のジジイが青白い顔でこちらを睨みつけていた。
「あ、あんた誰だ?い、医者か?ここは…何処だ?」
視界がクリアになったおかげで自分が今どんな状態なのかようやく理解した
病院のベッドに寝ているのかと考えていたが何故か手術台の様な物に固定されていたのだ
そのうえ、室内は薄暗いが明らかに病院では無く研究施設の様に見える
ますます状況が分からなくなってきた
「医者ぁ?ワシがか?ハーっハッハッハ!ホーッホッホッホッホ!!何を寝言を言っておるんじゃ!」
「違うのか?じゃあ何者なんだ?どうして俺は縛られてんだ?」
「まてまてまて、そういっぺんに質問されても困るわい」
「良いかぁ?ワシの名はドクターケルビム!知能指数300にして世紀の天才科学者じゃぁ!!」
………。
……。
…。
…なるほど。これは関わってはいけない類いの人だ。
恐らく心の病気を患っているのだろう。
なんにせよこの拘束を解かねば何をされるか分からない。
動けない状態でコイツと一緒は危険だと判断した俺は、ひとまず話を合わせてみる事にした。
「これはこれはケルビム様ご機嫌麗しゅう、ワタクシは何故ゆえ拘束されてているのでしょうか?」
「たわけが!適当に話を合わせるでない!ニシャニシャ笑いおって小馬鹿にしとるのが分からんとでも思ったか!!!」
速攻でバレたwwwwよし作戦変更ござるwwwww
「おじいちゃん、よく分からないけどこの拘束解いてくれないかなぁ〜?今ならまだイタズラで済むよ〜?警察沙汰にはしたくないよね〜?」
「ふむ…なるほど…」
お?効果ありか?
「貴様はまだ自分の置かれた立場と状態が正確に分かっておらん様だな…」
「へ?立場と状態?」
「自分の身体よく見てみるんじゃ」
ジジイはそう言うと俺の身体を照らした
「はぁ?俺の身体がどうしたって………」
俺は有り得ない光景に自分の目を疑った
普通なら死んでる様な事故だったのにも関わらず傷ひとつ無い自分の身体
まぁそれは良しとしよう
問題はそこじゃない
問題は色だ
光沢感のあるメタリックなシルバー
新品のスプーンみたいにピカピカだな
手術台の照明器具が反射して眩しい
うん…なるほど…メタルマ〇オかな?
イヤッヒイィイwwwヒィウィゴーゥwwwww
「って、なんじゃこりゃああああああぁぁぁ!!!!????」
受け入れ難い現実を目の当たりにして俺は再び気絶した