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高校生活初日の朝 ―もう一人の幼馴染と委員長―

前回から一か月以上空きました。


話のボリュームもペースもこれ位になると思います。

「シンー、いくぞー」


「悪いな雅也。よし、行こうか」


 隣にある慎太郎の家に迎えに行って団地を出て学校に向かう。昔からやっていることだが、今日から始まる高校生活でも同じになりそうだ。


「シンくーん! おはよー!」


 団地を出てすぐ、後ろから女子の声がした。前に話した、小さい時に団地で迷子になっていた子だ。(よし)()加奈(かな)という名前だ。子供の頃から目を惹く栗色のセミロングを揺らして走ってくる。


「カナ、おはよう。カナも今日から学校なんだな」


「そうだよ。やっぱり緊張しちゃうね、新しい生活って。あ、雅也君もおはよう」


 予想通り慎太郎しか見えていなかったようで、ついでにされる挨拶に返した。


 本当は二人で話したいんだろうが、先に行くと慎太郎に言われるのは分かっていたのでとりあえず三人で行く。




 中学の時、一度加奈に「シンくんと二人で登校したいから先に行ってもらえない?」と言われ、登校する時位良いかと、その時喉が渇いていたのもあって150円で手を打った。


 だが翌日、慎太郎から「何で置いていくんだ!? 俺何か悪いことしたか? したなら謝るから」と教室で必死に謝られたので事情を話した。


 加奈に頼まれたとの答えに慎太郎が加奈に聞いたが、二人で話したいことがあったから悪気は無いと少しフォローしておいた。それもあってか、ずっと三人で登校している。




 元々頭が良い方だった加奈は、試しにと受けてみた進学校に受かったので俺達とは違う高校になった。だが登校する時間は同じなようで、途中までは今まで通り三人で行くことになっている。


 電車も同じ方向だったので一緒に乗り、慎太郎と話したがっている加奈に慎太郎の相手をしてもらいながら、俺は窓の外を見る。たまに電車に乗っていたが、高校生になっての景色は気のせいか新鮮に感じる。


 誰にも邪魔されず、こうして動く景色を車窓から見るのが結構好きだ。慎太郎と話すのも面白いが、この時間に関して言えば加奈がいて助かる。


 先に俺達が降りる駅に着いたので、二人で降りる。取り敢えず加奈に軽く手を上げて挨拶するが、いつも通り慎太郎の方を見て挨拶していた。だから適当な挨拶でも済むから楽だ。


 慎太郎と話ながら歩いて10分程で、これから俺達が通う東条高校に着く。去年校舎を塗り替えたばかりらしく、外壁は白く、校舎ならではの堅牢さがある。


 校門の所には入学式を知らせる立札があり、改めて自分達が入学することを実感させる。


「高校生活楽しみだな! 雅也!」


 うわぁー、楽しそうだ…。俺はこれからどうしたらお前のフォローをしつつ、まったりとした高校生活を送れるかどうか考えているというのに…


「だな」


 まあ楽しいのは良いことだ。


 この学校は各学年で登下校口が違っていて、校舎の左、中央、右の三か所ある。俺達の使う一年用登下校口は校舎の左にある。その証拠であるように、すぐ近くの大きな掲示板に張り紙が貼られていた。張り紙には新入生徒の各クラスの振り分けが書かれていた。


「お、また一緒のクラスだな! 良かったー。今年もよろしくな!」


 振り分けを見ると、俺も慎太郎も同じ1-Bだった。先に気付いた慎太郎が元気に言ってくる。


「宜しくも何も、家となりだしな」


 そうだな! と俺の返しに笑っていた。


「おはよう、慎太郎君、雅也君」


 後ろを振り返ると、黒髪の三つ編みにメガネというベタな要素を詰め込んだ女子がそこに立っていた。装いはありきたりだが、その奥の目は女性らしさを思わせ、元々の顔立ちもあって大人びて見える。可愛いというより綺麗系だった中学での委員長、冴島(さえじま)()(づき)だった。


「お、委員長! 委員長も同じクラスか?」


「いいえ、残念だけどA組よ。あと委員長はやめてくれないかしら。もう違うのだから」


「けどまた委員長やらされるんじゃないのか? そうなったら応援しておくよ」


「…頑張れはづきち」


「ちょ! 雅也君、はづきちは止めてよ! もう…」


 雅也経由で話す機会が出来た葉月だが、彼女の趣味の読書がきっかけで話すことが増えた。俺も気になった本があったりすると読むことが多い。委員長も慎太郎が気になっているようだが、その中でも俺が一番話せる相手だった。


 話のきっかけで幼少時に「はづきち」とあだなで呼ばれていたのを知って、俺も試しに言ってみる。いつもこんな感じで少し困ったような反応をするが、嫌でもなさそうだった。


「ああ、葉月だからはづきちか。頑張れ! はづきち委員長!」


「! ちょっと…もう…」


 慎太郎が言うと思い切り反応して顔が少し赤くなった。慎太郎は「どうした? 熱か?」とありきたりな勘違いをしたが、当然そんな訳無い。


「…もう行きましょうか。時間もあまりないし」


 速足で進む葉月を追うように、俺と慎太郎は登下校口に入った。

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