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予知夢探偵

作者: 月影 ゆかり

マンションの一室。


横には大きな木があって、空は暗かった。



首を絞められている。


あれは、縄?だろうか。


いや、登山用のロープかもしれない。


そのロープでキツく、キツく 絞めている。


30代くらいの女の人が抵抗しようとしているが、首を絞めている人は男の人だった。


抵抗は虚しく、女はぐったりとしていた。


口から涎が出ていて、女は青黒くなっていた。


男が、1枚の写真を取って家から出て行く。




1.


「ふぅん、事件か…」


俺は友達と一緒に居酒屋で酒を飲んでいた。


友達の名前は 芳本(よしもと) 蘿琉(かげる)

警察だ。


蘿琉は、中学の時からの友達だった。


俺は普通の会社員で、名前は渡部(わたべ) 直斗(なおと)


蘿琉は、今回の事件が難しく難航していた。


ニュースでも 少し取り上げられていた事件だった。


30代くらいの女が殺害されたという事件だった。


犯人は首を絞めて殺したそうだ。


「首を絞める時に使ったのは、わかったんだがなぁ」


蘿琉は、結構 酔ってきている。


一般人にこんなこと 話していいのか。


「まぁ、友達に頼んでみるよ。なんか わかるかも」


その友達というのは、高校からの友達で かなり変な奴だ。


そして、あまり売れていない探偵だった。


名前は知崎(しざき) 智塚(ともつか)




2.


あれから、1週間後 やっと休みがとれて 智塚のいる探偵事務所へとやってきた。


「なんで、インターホンが鳴らないんだよ」


探偵事務所と書いた、少し古びた看板。


少し古びたドア。


インターホンは、あるが鳴らない。


「はぁ。」


仕方なく、ドアをノックする。


すると中から、「どうぞ」と言う声が聞こえてきた。


「おじゃましまーす」


俺はドアを開けて またげんなりした。


床が散らかっている。


何かの資料が多かった。


智塚は、奥の机にいる。


机もまた 色々な物が散乱しているが、床よりかは綺麗だ。


「資料を床に置いていいのか?」


俺は、なるべく踏まないように 智塚の所へと行く。


「個人情報とかの資料は、ちゃんとファイルに入れてる。」


こっちの資料もファイルにしまえよ と言いたいところだが、言っても無駄だろう。


あいつは、掃除があまり好きじゃない。


「でも、直斗が来るなんて珍しいな。 ほら 椅子だ」


やっと、智塚の所までこれた。


椅子は、結構綺麗だ。


まだ 新しいのだろう。


「俺も、来たくなかった。」


俺は椅子に座り、一息着いた。


「てことは、友達の警察さんか?」


智塚は、すぐ後ろの台所でコーヒーを淹れている。


ここはお前の部屋か!と言いたいところだが 言わないでおく。


「あぁ。 お前に依頼だ」




3.

智塚に事件のことを話した。


「なるほど、それなら知っている。」


俺はコーヒーを飲んでから、言った。


「ニュースでも、やってたからな。あ、そうだ。殺すのに使った縄だけど…」


「登山用のロープだろ?」


「え、なんで知ってんだ? 俺 さっき言ったっけ?」


この事は、ニュースでは言われていない。


智塚は、あたかも当たり前のように言った。


「夢で見たんだ」


「なるほど」


智塚は、よく予知夢を見る。


最初は驚いたが、今ではもうすっかり慣れている。


「犯人が見つからない…か。」


「あぁ」


智塚はコーヒーをぐびっと口の中へ入れて、席を立った。


「その家に連れて行ってくれるかい?」


「言うと思ったよ。 外で友達が待ってる」


智塚は、上着を着て床に散らばっている資料を踏みながらドアを開けた。


俺も、資料を踏みながら ドアの所まで行く。


外に出ると、すぐ近くに蘿琉の車が置いてあった。


蘿琉は、窓を開けて言った。


「やっと、来たかー。 ほら、早く乗れよ」


「あぁ、ありがとう。」


蘿琉と智塚は初対面なのに、もう親しくなっている。


2人とも、フレンドリーだなぁ。


「じゃあ、俺はここで。」


せっかくの休みを こんなことでは使いたくなかった。


「はぁ?お前も来るんだよ。ほらほら 早く乗れ」


蘿琉は、車のドアを軽く叩きながら言った。


智塚は、もう車に乗っている。


「わかったよ。」


俺は渋々 車に乗り込んだ。




4.


目的のマンションへと辿り着いた。


見た目は すごく綺麗で、どっかの探偵事務所とは大違いだ。


「5ヶ月前にできたマンションらしい。」


「この大きな木は… 桜か?」


「あぁ、たぶんな」


蘿琉は、あまり植物には詳しくない。


マンションの事も、誰かに聞いたのだろう。


事件があったのは 302号室だった。


「あ、そうだ。これ してから中に入れよ」


蘿琉は、軍手を渡してきた。


指紋を付けないためだろう。


「死体は?」


「死体は ここにはない」


「そうか」


智塚は、もう真剣だ。


「夢で、犯人は見なかったのか?」


俺は軍手をしながら、聞いた。


智塚も軍手をしながら 答えた。


「顔は見れなかった。全身 黒だったからな」


「え、体格とかはわかるか?」


蘿琉は、智塚の言ったことをメモしている。


「体格か…。 結構痩せていたな。」


「なるほど。ありがと、探偵さん」


「あぁ。」



俺らは中へと入った。


中は結構、広くきちんと片付いている。


まぁ、警察が置いて行った物も結構あるが。


窓からはちょうど 大きな木が見えた。


「通報者は?見つかった日と殺された日も知りたい」


「通報者は、会社員の人だった。見つかった日は3月10日で 殺された日は、2月26日だ。」


「結構、日が経ってるな」


智塚は、顎に手を当てながら考え込んでいる。


今日は、3月16日だった。


「よし、帰るか。」


「え、もういいのか?」


10分くらいしか、この部屋にいてないし まだ他の部屋も見ていない。


蘿琉も、驚いている。


「この家を調べても意味はない。殺された女について、知りたい。」


「そうだな。死因とかもわかってるし。近くに喫茶店があるから、詳しく教えてやるよ」




5.


殺された女は、独身で名前は青坂(あおさか) 美波(みなみ)


年齢は33歳で、父を幼い時に亡くしている。


働いていた職場は、デザイン業だった。



と、わかっているのは それだけらしい。


「事件性のあることは、何もないと」


「あぁ、そうなんだよ。だから困ってる。犯人に導ける物も何もない」


俺は、コーヒーを飲みながら蘿琉と智塚の話を聞いていた。


大変そうだなぁ。 というか、もうそろそろ帰りたい。


「写真は、あったか?」


智塚はコーヒーを一口飲み、言った。


「写真?」


蘿琉は、不思議そうに聞き返す。


「写真なんて、見つからなかったけど」


「そうか。 じゃあ、犯人が燃やしたかもな」


智塚は、少し伸びをした。


「写真か…。そういえば会社員の人達にも聞いてみたんだが、どうやら青坂さんは 男性社員と付き合ってたそうだ。」


蘿琉は、コーラを飲んでから続けた。


「まぁ、そっちは否定してるみたいだけどな」


「ふぅん。」


智塚は、そう相槌を打つなり 考え込み始めた。


「それって、男性社員が犯人じゃないのか?」


俺は、2人が言わなかったことを言った。


すると蘿琉は、答えた。


「証拠がないんだよ」


「なるほど」


証拠がなければ、犯人だとは断定できない。


「あ、わかったぞ!」


智塚はいきなり、大声を出す。


周りにはあまり人はいないが、びっくりするからやめてほしい。


蘿琉は智塚に向かって言った。


「ホントか!?教えてくれ!」


「いや、まだだ。もうちょっと待ってくれ。後日 結果を送る。」


蘿琉は少し拗ねてはいるが、コクリと了承した。


これで事件も解決するといいんだが。




6.


そして、1週間半後。


また、あの探偵事務所へと呼ばれた。


もう、蘿琉には知らせたらしい。



「また、散らかってるし」


俺は入ってきて早々、げんなりした。


「よく来たな、直斗」


智塚は、歓迎していると顔では言っているが 部屋を見る限り歓迎されている気がしない。


「それで、なんでわかったんだよ」


俺はまた、前と同じ椅子に座る。


「もっと、人間関係を調べてみたんだ」


智塚は、それをまとめた紙を俺に見せてきた。


「犯人は… 社長!?」


「あぁ。ちなみに詳しく話すと」


智塚は、椅子を座り直してから言った。


「前話した男性社員の父だ。」


「マジか…でもなんで?」


智塚は、言った。


「男性社員は不倫をしていた。その写真を青坂さんが証拠として撮ったんだ。 男性社員は苦しめられていた。」


「それを弱みとして、金とかを貰ってたんだ。」


「だからあんな豪華なマンションに住んでたわけか。」


智塚は少し付け足した。


「ブランド物もいくつか、あった。 話に戻るが、それに気づいた父、社長が息子の代わりに殺した。」


「へえぇ」


「社長は登山家だったらしい。 写真はきっと燃やしただろ。」


俺は少し一息着いてから言った。


「それって、予知夢でわかったのか?」


「だいたいな」


「まぁ、いいけど。お疲れ様。 もう俺は呼ばれないことを願うよ」


俺は椅子から立ち上がり、帰ろうとした。


「これから暇か?」


「暇だけど」


智塚は財布を出して、ニィッと笑った。


「どこか食べに行こう。臨時収入があったんだ」


「奢ってくれんならいいけど?」


俺もニィッと笑う。


「仕方ないなぁ」


笑顔は今でも、変わっていなかった。




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