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異世界で頑張る  作者: 平田凡太
チュートリアル
5/50

夜は来ず、太陽は佇む

  薄く目を開ける。少しぼやけている。

耳を立てる。遠くから何かと聞こえる。

だんだんと意識が戻る。だんだんと記憶が戻る。

ああ、死体が……


  バッと上半身を起こし吐き気に耐える。

 残酷にズタズタに切り刻れた死体。死臭、血の臭い、混ざり合った不快な臭い。

 ゾンビの時は死体に似た何かで魔物と区別してなんとか耐えたが、今回は人だ。人の死体だ。頭の中に死体が再びフラッシュバックする。


  深呼吸し精神を安定させる。状況確認をしなければならない、周りを見回す。既視感がある。

 ガイアの小屋か?と理解するとガイアとケモミミ少女が入ってくる。ガイアが椅子に座り、ケモミミ少女は隣で立っている。


「随分寝てたな。調子はどうだ? お前さんが道端で気絶しているところをこの娘が運んできてくれたんだ。あとでいいからお礼言っとけよ?」

「俺は色々と処理する事があるから。気分良くなるまで寝とけ。気分良くなったら話す事があるからここで待っていてくれ。帰ってきたら話す」


 そう言うとガイアは小屋を出ていき、小屋の中は、顔色の悪い男とケモミミの少女がいる空間となった。

 かなり気まずい。今までの超展開は事務的にテンプレ対応していたが、今回は違う。見知らぬ少女と二人、とても犯罪の香りがする。

 まずはお礼だ。お礼を言わなければ。

 一つ咳払いし御礼の言葉を言う。


『ここまで運んでくれてありがとう』

「この度はありがとうございました」


『』が理想で「」が実際だ。


 そして笑顔のつもりが、奥の鏡を見ると完全に不審者スマイルだ。

 l子供に話すのだから柔らかく言おうとしたつもりだったのだが何故か硬くなってしまった。

 理想も現実も、お礼の言葉としては最低点以下だと思うが。


 沈黙の間が長い。


  話す事が尽きた。二人とも話し下手だと大体こうなるのは仕方のない事だ。

 しかしこの微妙な空間をなんとかしたい。だが話し掛けて無視された時にはもうダメだ。

 俺の心は風船のようなもので、刺々しい視線で返された日にはもう枕を濡らすしかないのだ。


「あの……もう帰るね?」


 帰宅を提案する辺りもう俺とはいるのは厳しいと判断したのだろう。こっちも気まずい空間が生成されて辛かった。

 だけど視線がとても冷たい、破裂しそうな心を萎ませて顔に出さない様にする。


「何も言われてないなら帰っていいよ」


 そう言い少女に別れをいい、帰らせた。


  今回は綺麗に言えたはずだ。ガイアが話があるのは俺だけだろう。あの娘は俺を助けてくれただけで関係ないと思う。

 倒れてから時間も経っていると思うし、辺りも暗くなってきて……いないな。


 窓に目をやると明るい陽が差し込んでいる。おかしい、ガイアも随分寝てたって言って……


 そこにちょうどご都合展開よろしくガイアが戻ってきた。

 俺の顔色が悪かったのだろうか、ガイアは心配そうな顔で体調を聞いてくるが、それに対し大丈夫だと答えた。


「話、していいか?」


 ガイアに深刻な面持ちで言われ、無言で頷く。


「この世界は色々と不思議でな解明出来ないこと尽くしなんだ。その一つに時間の概念が含まれてる。この世界じゃ夜は来ない、太陽は頂点のままだ。俺が最初百年前くらいからいるって言ったよな。実際には二百年かも知れねえし三百年前かも知れない、もしかしたら短くて十年も経ってないかも知れねえ。時間の長さなんてものはない。人によっちゃ一日と数えたものが一秒に感じたり、一日が一年に感じたりな。」


そう話しガイアは俯向き、話を続ける。


「中には狂う奴も出てくる。そんな奴の結末は二つしかない、一つは死ぬ事。この世界じゃ自殺はできない。だから殺して貰うんだ。だが一方的な殺しじゃ殺した奴は捕まる。大きな城があるだろ?そこから兵が出てきた捕らえて殺される。だがどういう訳か『決闘』という形なら捕まらない。」

「もう一つは永遠を求めて永眠する事だ。この世界は眠くならない。だが寝ようと思った時に寝れる。しかもどれくらい寝れるかお決められる。そして永遠を願い、寝る奴がいる。そいつの最期は幸せそうな顔で光になって消えるんだ……」


  ガイアは顔を上げ、こちらに顔を向ける。寂しそうな苦しそうな顔している。


「だからお前も狂わないでくれ……これ以上街人が狂い消え逝く様は見たくねぇ」



 この生活を何百年も……主人公補正を取得しなかった事を後悔する。だがこの後悔は無意味だろう。持たざる者は持ちし者を待つしかないのだから。


 しかし時間の概念がないという事は非常に辛い、そういえばこの世界に来てから時計を見ていない。

 時計があれば非常に便利だが、時計の作り方など知るはずもないので自分に出来る唯一の事。



 ──寝床探しを再開した。



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