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異世界で頑張る  作者: 平田凡太
森の館
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四十一話

 大樹と戦っている場に戻ると、男が力を溜め、周りの盗賊達が時間稼ぎをしているのが見える。男が何かを叫び、盗賊達は散り散りに去っていく。


「亜流・嵐壊!」


 男は大樹を中心とした、周りの複数の木々を巻き込むほどの威力の風を放つ。木々は砕け、大樹はメキメキと音を立てながら折れていった。


 男は近くにあった倒れた木に座り、その元に自称勇者が近寄る。


「中々の腕前だが……名を聞いていなかった。名は何という」


 自称勇者が男に問う。


「ん? ああ、名乗り忘れてたな。俺は勇者親衛隊第一隊隊長、カインだ」


 えっ勇者親衛隊? 勇者ってフリッカの事か? いやいやいや、フリッカに親衛隊とか要らんだろ。強いし守られる必要ないだろ? でもなぁ……さっきの技見ちゃうとなぁ……


「私も名乗っておかないとな。私の名前はノート。このペンダントはお前の探している物なんだろう?」


 とノートは首からペンダントを外し、カインに渡す。


「ああ、そのペンダントはフリッカ様のものだからな」


 フリッカ何やってんの? えっいや……えっ。

 困惑していると、ノートがカインの前で跪く。


「お前ほどの腕前なら私達を殺す事は容易いだろう。私は殺してくれても構わない。だが、こいつらは見逃してやってくれないか?」


 ノートはカインに首を差し出し、カインは無言でノートを見下ろす。

 ノートの部下達は後ろでどよめくだけで、誰も間に止めに入ったり、共に首を差し出すこともない。


「……俺は魔族を殺しても、人は殺さない。人には、更生する機会を与える。お前を殺すのはお前が魔に堕ちた時だ」


 なーんか聞いたことあるな。なんだっけ……思い出せそうで……ああ、人間至上主義のアレに似てる。


 人には必ずしも悪に手を出してしまう時がある。だが、人間は他の生き物とは違い、更生する事が出来る唯一の生き物である。故に人間には更生の機会を与え、人間以外には|救い(死)を与える。


 というのが人間至上主義の理念だったはず。真剣に教祖になろうと考えた時に見つけた。

 基本的に人間以外の種族に親族や友人が殺されたとかそういう奴が多い。あとは昔から親に捻じ曲がった人間観を押し付けられた奴とか。


 一時はこれを元に派生した宗教家になろうと思ったけど、この宗教の派生の全組織、謎の解散を遂げてたし止めたな。


 なんてことを思い出していると、盗賊達がいつの間にか解散していた。


「あれ? いつの間に……帰して良かったんですか?」


 とベルがカインに尋ねる。


「ああ、フリッカ様に人は殺さないように言われてるしな」


 フリッカに言われただけだった。人間至上主義とか関係ないわコレ。あー声に出さなくて良かった。


「……! 終わったのなら早く助けにいかないと!」


 とベルが焦ったようにカインを急かす。


「……誰を助けに行くんだ?」


 カインは不思議な子供を見るような目でベルを見つめる。


「……いや、誰って──あ、あのもう一人いたあの人ですよ!」

「それならここにいるじゃないか」


 とカインに指をさされ、ベルの方に視線をやる。


「──ッ!?」


 ベルは驚きからか声も出せずに指をさし向けてくる。

 うん。いやまあ隠密状態だったけどさ。ずっとカインの後方にいたよ? その反応は哀しいよね。


「──あっあの魔物は!? 服がボロボロですが、大丈夫なんですか!?」


 と心配してくれる。もう本当、民の心配するとか出来たお姫様だよ。


「あの魔物は──」


 ……なんて答えれば良いんだ? 短剣振ったら暴風が出て消し炭にしたなんて現実味がない。

 いやこの世界ならありうるだろうけどあの状態から無傷で帰って来れたなら援軍を要請する必要はなかっただろうし……


「……なんか吹っ飛んでった。服は……一緒に吹き飛ばされた」


 と少しばかりボカして言ってみる。


「なんでですか!?」


 うん、そうだよね。誰だってそう言われたらそういう反応する。魔物が吹っ飛んだっていう結果しか伝えられてないしね。


「まあ彼がそう言うんだからいいじゃないか。今はこの状況をどうするか考えよう」


 返答に困っているとカインが話題を逸らす。

 対応に困ってるのが察せるカインさん本当イケメン。

 顔が良くて、性格が良くて、心が広くて、気が利いて、強い。

 欠点なんてフリッカに忠誠を誓ってることくらいじゃないか?

 いやフリッカは勇者だし、忠誠を誓うのは欠点じゃないか……


「そ、そうですね。ここで待つと言っても捜索隊がここを探し当てるのに何日掛かることか……」


「ん? 一介の冒険者にわざわさ捜索隊なんて出すか?」


「そ、そうでしたねっ! でも何処までも森が続いているわけがありませんし、直進すればいずれは何処かの街に……」


「いや、この空間はある地点を境に戻ってくる構造になってる。先の賊を風で追っていたがある境で風が重なって追えなくなった。恐らく占い師の術印でここから出られないのだろう」


 完全な手詰まり状態だと嘆いていると、突然辺り一帯に高く耳をつんざく雑音が鳴る響く。


 耳に響く音にすかさず耳を塞ぐ。


 雑音が鳴り止むと、辺りに声が響き渡る。


「大変長らくお待たせいたしました!」


 ベルは辺りをキョロキョロと見渡し、声の主を探している。カインは丸くなって耳を塞いでいる。さっきまでカッコよかったのになぁ……


「えーこちらの不手際で転送位置を少しばかり間違えてしまい、只今迎えの者がそちらに向かっていますので今しばらくお待ちください!」


 それを最後に声は止んだ。


「な、なんだったんでしょう?」


「迎えの者が来ると言っていたな」


 丸まっていた体勢からの立ち直りが早いな。


「先の声は占い師の仲間、あるいは主人だろう。既に敵の手中にいる事を忘れず警戒した方が良いかもしれない」


 そう話していると森の奥から二つの影が近づいて来た。




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