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異世界で頑張る  作者: 平田凡太
大会
38/50

日常

魔物率いる魔王第三幹部ネロ・クラウド(以下『ネロ』という)が 三番目の街(パルテノ)を襲ってから早七日、私は今一度その日の事について書き留めようと思う。


この一件はネロが魔王の命により手を下したものと思われる。以下は私の仲間の行動及び街への被害状況である。


フリッカは街民の避難経路の確保、ファスタは闘技場で魔物の討伐、街への損害は軽微、市民への損傷は擦り傷切り傷等の軽傷、盗難品目は今大会の賞品であった宝剣及び混乱に乗じ金品が数件。


今回の件では、私は原因を怒らせた上に何も出来なかったという始末である。面倒ごとに巻き込まれたのならば、原因が見つかり次第潰すべしという判断をしたのが間違いであり、失敗であった。


余談であるが、今大会は勿論中止となり、ファスタは怒髪天の様相ではあったが、大会及び魔物との闘いにおいてファスタとフリッカは賞賛された。その後国家のギルドに報奨金を握らせれ、ギルドに勧誘された後それを快諾。現在大陸に中央に位置する国で働いている。



と日記に一筆(したた)め終えると椅子の背もたれに寄りかかり大きく背伸びをする。ふと天井を見てぬぼっとしているとある思考がふわっと浮かぶ、平日か休日かは定かではないがこんな事でいいのかと。


今はフリッカとファスタはギルドなる国家機関から正式に依頼を受け、魔物の討伐やダンジョンの攻略に赴いてはその日の内に済まし報酬を受け取り帰ってきていると聞く。


その一方で日々図書館に足を運び、この世界の雑多に存在する書物を読み漁る事くらいしか出来ず、転移者でこの世界の雑学を最も知っていると言えるだろうが、勿論胸を張って言う事ではない。


そして悲壮感を溢れさせている背後で昼間にも関わらず寝ているのがフィア。何もない時は半日寝てる。フィア曰く、『寝ると時間が経つのが早いからね。あとお昼寝は気持ちいい』との事である。完全に不健康者の日常である様な気もするのだが殆ど変わらない身としては何も言い出せないのである。


この世界に来てからロクな目に合わなかった気がする。このフィアとの半同棲生活を大切にすべきだと今は思う。


……というかもうぶっちゃけ一度死んだ身としては転生後の異世界転移とかいう手順を半強制的に踏まされた上で、この殺伐とした世界で生きる事を……目的ってなんだっけな?


目的とか言われてない気もするし、一般異世界転移・転生ものだと魔王を倒す事が目的だけど、他に数百人以上異世界からの冒険者がいるわけだし現地の冒険者や兵士等々と合わせたら数千人はくだらないだろう。


今まではフリッカという勇者の仲間であったがが、フリッカはあの性格だ。これからは他に仲間が増え、やがてその他大勢のモブになるだろう。そうすれば冒険などせずの放浪者ライフの始まりだ。


複雑に絡まり乱雑に纏まった思考を停止させ焦点を合わせず虚空を見つめる。


「あー就職してぇ……」


そんな心にもない事を口から零す。


「本当にそう思ってるの?」


フィアが起きてしまった様だ。先程の独り言を聞かれフィアは少し寝ぼけ眼でこちらを見つめて来る。なんとも愛おしい姿である。


「本当は宝籤当てて楽して過ごしたい。多分前世でも同じ事何回も言ってる」


「そんな夢物語言って……」


「宝くじなんて多くが空のくじだからな。非現実的なのはわかってるんだよ。そこの夢と希望と奇跡があるから人はそれを掴みたがるんだよ」


フィアは興味なさそうに相槌した後に枕に顔を埋める。フィアが起きている間に聞きたかった事が一つあるのを思い出し聞いてみる。


「そう言えばこの世界の魔王って何やらかしたんだ?歴史書によって書いてあることがバラバラなんだよ。多くの人々を殺戮したとか一つの都市を滅ぼしただとか、中でも非現実的なのが神を殺したからとか色々あって」


こんな歴史の真実一つ知らないままではこの世界の雑学王になれない。


「あーその辺は言っていいのかわからないんだよね……一つ言うならその出来事は本当の事だって事かな?」


やはり真実というものは碌でも無いものだと実感してしまう。それが真実だと確定しても真実だと認識したくない事実がある。こんな絵空事な真実を雑学大会で言ってみろ、頭のおかしいやつだと言われて出場権の剥奪だ。


「……あんまり驚かないんだね?」


内心驚いたつもりがあまり顔に出なかったみたいだ。


「そりゃもう最初期に言われれば驚いてたよ?こんな世界だし、人の命が軽い訳で。あ、なんか今なら宗教始めて教祖にでもなれる様な気がする」


「キミは本当におかしな事考えるよね」


フィアは布団から出てベットに腰掛ける。こちらもそろそろ腰が限界なので起き上がり、椅子をフィアの方に向け話を続ける。


「そういえば最近心の中に突っ込まなくなったな」


「ふふふ……最近ネコミミの後ろ側を押すと心の声が聞こえなくなる機能がついてる事に気がついてね!」


少しドヤ顔で自慢げにいうものだから茶々の一つも入れたくなると一言突っ込む。


「その機能とか普通は渡された時にその説明受けない?」


その言葉に反応し、フィアは少し目を逸らしながら上目遣いで話す。


「だって……急いでたし……ね?」


ね?と言われても行間を読めと言うのは難しい話である。


こんなフィアとの同棲生活ではあるが、夜に出歩く事さえなければ危険はないし、騒がしいということはない。

この時間がずっと続けばいいのに、とそう切に願う。


毎回後書きを書くか悩んでいます。

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