クラウド
──かと思われた。
「危ないっ!」
シアンはそう言うと心を突き飛ばす。
何事かとシアンを見ると一本の光がシアンの肩を貫いているのが見える。
「ふふっ……」
ネロを覆い尽くしていた光は次第に黒に染まっていき、ネロを周りを動き回り自由に扱っている様に見える。
「あははっ!一緒に楽しもう?」
ネロは指先を振り動かすと光も指の軌跡通りに光も軌跡を描く。そして指先を心とシアンに向ける。
「光の所有権が盗られたか」
「もうあの光は使えないのか?」
「使えない。あれは一日に7個まで使えるんだけど……」
シアンと心は黒光を避けながら会話を続ける。
「あの子を止めるのに3個、さっきの竜に3個、病院の前で暴れていた獣に1個で、もう今日の使える分はもう無い。丸一日耐久戦でもすれば……」
黒く染まった光が心の肩を掠る。
「まぁ、無理だよね?」
「あの光は非殺傷性じゃなかったのか!?」
「強い魔力を帯びて殺傷性が付与されてるね」
「あいつを倒すしか無いのか?」
「さっきも言ったけど、どんな状況であれ女の子を傷つけるのはね」
「それじゃあどうすれば……」
「……とりあえず逃げるしかなさそうだね」
空には暗雲が広がり、辺りは薄暗くなる。
「あははははははは!」
シアンは黒光をしっかり見極め一発一発避けていく。
一方心は傷がすぐに塞がるからか相手にされず、光が体に突き刺さり壁に固定されて身動きが取れずシアンが逃げている姿しか見ることしかできない。
突如ネロの動きが鈍くなり、頭を抑え始める。
「あ……あぁ……くっ」
「これだけの短期間で膨大な魔力を使ったんだ、相当な疲労感や倦怠感があるだろう。魔族の事情はよく知らないんだけどね」
ネロは頭を抑えながらもシアンを睨みつけ、最後の一振りと言わんばかりに強大な黒光をシアンに向かって放つ。
「くっ……まだそんな魔力が!」
避けられないと悟りシアンが死を覚悟し目を瞑ったその刹那、シアンの目に前で光は止まる。シアンは目を開き、ネロの方を見るとネロの後ろに男が立っているのが見えた。
「おい、帰るぞ」
「まだ……大丈夫……」
「大丈夫とかじゃなくて目的は達成したんだ」
ネロは男に向かって三方向から黒光を突き立てるが、男はネロを軽く小突き耳元で何か囁くとネロは少し唸ってから大人しくなり、男にもたれ掛かる。
その間、シアンはその男を睨み続け、その場から少し後ずさっていた。心がシアンの中にあるフェミニスト精神が女を傷つけたあの男を許すまいと憤っているのかと考察していると、シアンは声を上げる。
「魔王……っ!」
「えっそうなの」
心の腑抜けた小声にシアンは反応する事なく、華麗にスルーし話し続ける。
「魔王……お前の目的は何だ!」
「そうだな……端的に言えば歴史の回収及び破壊だな」
そう言いながら男はネロを小脇に抱え、闇に消え去った。
立ち込めていた暗雲は全て消え去り、雲一つない晴天が見える。




