逃走
会場前に着くと、武装している者、本を読みながらブツブツ言っている者、女に囲まれている者、一人で意味ありげに雰囲気を出している者、緊張からか深呼吸をしている者、余裕かの様にヘラヘラ話している者、これから起こる悲劇を前に逃げ出したくなる者、様々な者がいる。最後の逃げ出したくなっている奴は自分だ。
フリッカを探していると後ろから肩を叩かれる。叩かれた方に振り返ると先程女に囲まれていた男が笑顔で手を振り、話しかけて来た。
「やあ、初めましてだね。僕の名前はシアン。君は勇者ちゃんと一緒にいた人だよね?君も第四試合に出るのかい?」
何でこいつ初対面なのにこんなに話せるんだよ。コミュ力高過ぎるだろ。あと何か心眼使ってないのにキラキラしてるオーラが見えるような気がする。こいつそういうアビリティ取ったのかよ。
ああ、と軽く返事を返す。
「お互い頑張ろうね!」
シアンは手を出し握手を求める。
握手を交わしとシアンは女達がいる方向に戻っていった。
勝手に話して、勝手に帰っていった。何がしたかったんだ?
シアンが離れていくと第四試合の参加者確認及び入場が始まった。人が流れていく方向に流れて着いていく。会場の入り口では、名前の確認と何かが配られているのが見える。順番が回り、名前を言う。
「はい。シンさんですね。こちらをどうぞ」
「こちらは身に危険が降りかかった時に医療室に転送される転送石です」
なるほど便利な石だ。恐らくファスタが一発で終わらせた事から、こういう措置が取られる様になったんだろう。大体一発でも喰らったら医療室に転送と思いながら闘えばいいな。
闘技場内には既に数十人程の人がいる。フリッカを探すがまだいない様だ。とりあえずフリッカからの攻撃を全力で避けたいから心眼と隠密スキル使うか。
闘技場内は直径百五十M程度の円形。立ち位置は人が少ない方がいいか?とりあえず中央より少し離れた所の方が良いだろう。
「さあ!長らくお待たせ致しました!これより第四試合を始めます!」
「第四試合……開始!」
開始と同時にゴングが鳴る。周りの奴らは近くの手頃な奴らと闘っている。ある所では剣と剣、ある所では剣と魔法、ある所では剣と拳、とそれぞれ交戦している。
隠密スキルのお陰か、誰も近寄ってこない。フリッカを探すと闘技場の中央で何やら唱えている。周りを見渡し、上空を見上げると、空には大量の風の剣がその場に制止し、次第に増えていく。
これ……避ける場所ないだろ……
フリッカは詠唱が終わり、手を上にかざし、振り下ろす。フリッカの手が振り下ろされると上から無数の風の剣が降り注ぐ。
落ちてくる風の剣は垂直に落ちず、狙い澄ましたかの様に闘っている者たちの肩に、腕に、足元に剣が突き刺さる。
転送石の効果で次々と転送されていき、闘技場内の人数が減っていく。
「第四試合終了勝者フリッカ──」
あっという間にフリッカ以外全員の参加者が脱落となった。無論、自分も含めてだ。
無理無理、あんなの避けられる訳ないだろ。
フリッカの一撃を受け転送石で飛ばされ、今は六人部屋の医療室のベッドの上で横たわっている。フリッカの放った剣が左横腹のあたりに突き刺さったが、今はもう既に完治している。一般的には重傷のうちに入るのかも知れないが、鋭い痛みが身体中に走ったが、すぐに治った為、攻撃を貰ったという実感がない。 一応ベッドで安静にしているように言われたがもう帰りたい。ダッシュで、ファスタに見つかる前に。
考え事をしていると隣のカーテンが開き、こちらに話しかけてくる輩がいる。
「や、やぁさっき振りだね」
試合前までは女からチヤホヤされていたシアンだ。服装はボロボロで、先のようなオーラは出ておらず、棚の上には武器であろう剣も折れた状態置いてあった。
「いやー勇者ちゃん凄いね。どういう仕組みか分からないけどなす術なくやられちゃったよ」
「君もあんな凄い娘が近くにいて大変だね……パーティ内で雑用とかやってる?」
なんでわかったんだよ。ファスタには雑用と思われてるけど、フリッカには雑用と思われてない……はず。
シアンの話を軽く流しながら聞いていると、廊下から騒ぎ声が聞こえる。よくよく聞いてみると爆発やら何やら聞こえてくる。
マズイ、爆破される。ファスタは怪我人にも容赦なさそうだし、この医療室から抜け出すしかない。窓を開け足をかけ飛び出す前に振り向く。
「それじゃ、ヤバイのが来そうだから俺は逃げるわ。またなシアン」
シアンにそう言い、窓から飛び降りた。
「き、君っ!ここ4階……」
シアンが慌てて言うが心は既に飛び降り、それと同時か少し遅いくらいにファスタが入ってきた。
体調が悪い時か気が向いた時に投稿してます。ちょくちょく昔の話は修正されています。




