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異世界で頑張る  作者: 平田凡太
大会
33/50

二撃必殺

「そう言えば俺いつ出るか知らないんだけど」


「心さんは私と同じ第四試合ですね」


えっ何それ棄権したい。超棄権したい。フリッカに勝つなんて無理だろ。雑用が勇者様に勝てるわけない。


「じゃあ棄権し……」


「私は別に良いと思いますけど、ファスタさんに何言われるか分かりませんよ?」


全部言い切る前に言われた。ファスタか、ファスタは何が何でも出させる気だし。一つ案を出そう。


「それじゃフリッカが手を抜いて闘ってくれ」


「善処しますが、全力で避けてください。多分一瞬で終わらすには風魔法飛ばさないといけませんから」


皆一発KOしちゃうよ。フェイタルKOだよ肉塊が大量にできちゃう。


「いや一瞬で決着つけなくても良いんだよ?何なら身体強化無双でも。むしろ身体強化お勧めする」


「でもあれ調整が風魔法以上に難しいんですよ?前に門砕きましたけど生き物と物質じゃどのくらいの強さが良いか分からないんですよ。下手するとパンチしたらぶつかったところに風穴が空くかもしれません」


「それは怖いな……」


おおっと。あのパンチが飛んでくるのか……風穴が空くどころか破裂しそうだな。


「でも風魔法を飛ばすとなると首をスパッと……」


フリッカが小声で物騒な事を言ったのが聞こえた。しかし周りの騒音から違う言葉に聞こえたのかもしれない。違う言葉である事を願い、聞き直してみる。


「ん?何か言った?」


「風魔法を飛ばすとなると当たった部位がスパッと切り落としてしまうかもしれません……」


聞こえてた……聞こえてたんだ……聞こえていたけど……間違いであって欲しかったんだ……別に言い直さなくても良かったのに……


「それ、実際にやったら阿鼻叫喚の巷と化す未来しか見えないんだけど……」


「大丈夫ですよ。ここにいるのは腕に自慢がある人だけですから!即死する様な事はないと思います。即死しなければ、続行不可能と判断して係の人が転送してくれますよ」


「ファスタが爆破した時周りにも人が倒れてたんだけど……」


「運営の人がまさか一発で終わると思わず気でも抜いてたんでしょう。最悪死んでも加護あれば生き返りますし」


「それでいいのか……」


ため息を吐きたくなる様な気分を抑え、遠い目で明後日の方向を見る。


「あっ!ファスタさんですよ!」


フリッカがファスタに向かって無邪気に手を招きこちらに呼んでいる。こういう無邪気なところを見ると子供なんだが、言ってる事が物騒なんだよな……

というかファスタ呼んだら席足りなくね。ファスタも俺の膝の上乗るのか?


「や、フリッカちゃん……と雑用。どうだった?凄かったでしょ!」


「はい!凄かったですよ!」


「雑用は?感想ないの?」


語彙力の無さそうな感想を言ってもいいが、ファスタは感想が短いとか文句言いそうだな。感想は言わないでいいか。無視はまずいから適当に……


「……誰も死んでないよな?」


「感想って言ったのに……まあ一応誰も死んではいないわ。武器とか、防具の一部だけ爆発させて、あとは空中に撃ったから見た目程の威力はない……はず」


最後の方に小さく、はずと言ったが気にしないことにしよう。一々気にしてはいけない。


「席は……空いてなさそうね。雑用、席代わって。私がフリッカちゃんを膝の上に座らせるから」


ファスタはそう言うとフリッカを持ち上げ、退くように促されるがまま椅子から降りる。このまま立っていると邪魔になりそうだな。そう思い会場の外まで向かう。


会場の外に出ると先程の熱気は何処へやら声も遠のき、普通の街のようだ。普通の街なんて二番目の街……アテネスだっけか。それしか知らんけどな。


第四試合までまだ時間があるだろうし、街を散策するか。


街をふらついていると、遠くの方から声が聞こえてくる。こちらの方を見て手を大きく振っているように見える。


声の聞こえた方にふらっと近づくと声を掛けられる。


「兄ちゃん!ちょっくらオレん所の武器でも見ていかないか?見る限り腰に携えたダガーくらいしか無いんだろう?」


武器の商売だったか。しかし、今の手持ちはゼロ。見て見たいがただの冷やかしになりかねない。折角声掛けてもらったのに申し訳ないけど……


「今ちょっと手持ちが無くて……」


「まぁ一回見ていきなって!なぁに!何なら代金は出世払いでもいいから!」


このおじさん気前が良すぎる……


────────────────────


色々あり武器屋を後にし、先に進むと飯屋の多い通りに変わっていく。飯屋から流れてくる匂いと共にある一つの思考が思う浮かぶ。一昨日の夜から何も食べてない気がする……そう、一昨日の夜から何も食べてないことに気がついてしまった。無一文の身でありながら、この通りを練り歩くのは本能的に危険と感じ足早に去る。


飯屋通りを抜けると、六階建ての大きい病院が見える。こう見ると異世界なのに大きい建物に違和感があるけど、この街だと怪我人も多そうだし、そりゃ医療施設も大きくなるわな。そう思い病院を後にする。


大体一周し終わり、会場に戻る途中、突如背後から聞いたことのあるような声が聞こえた。


「久しぶりだな……昨日の嬢ちゃんはこの街にいるのか?」


振り返ると一昨日フリッカが殺したはずの男が立っていた。何でこいつ生きて……!っていやまあ異世界だしあり得るか。さっきフリッカも加護で死なないとか言ってたし。あと一日くらいじゃ久しぶりとは言わないし……


「何の用だ?」


男から距離を置き、質問する。


「ククク……俺は俺を殺した嬢ちゃんを探してんだ。あの殺気の無い攻撃で俺がやられちまったからな……」


……?ああ、冷静になって考えたら分かったわ。多分、殺気がないって言うか魔力の調整を間違えて、ナイフを落とすつもりが首を切り落とした感じだと思うんだけど……これは言うべきなのだろうか……


「言わなくていいと思うよ」


振り返るとフィアが立っていた。ネコ耳を付けて。

えっ何、コスプレしてんの?一回天界に帰るって言って……コスプレしに一回天界に帰ったの?


「そんなわけないよ。これは女神様の趣味で……」


そんな話をしていると男が何やら唱えている。魔法か!戦闘する気漫々じゃねえか!


「先手必勝!」


素早くダガーを抜き空を斬り、風の衝撃波を放つ。前回のダガー程の威力は無さそうだ。男は慢心し衝撃波を躱さない。


風の衝撃波は男にぶつかると、風が体を包み斬り刻む。血を周りに飛び散らかせ、男は倒れ伏す。


「ぐ……うぅ……うぉ…」


男は呻き声をあげ、這いずりながらこちらへ向かってくる。動くって事は生きているって事だ。一度死んでいる奴を殺しても殺した事にはならないだろう。


「慈悲はない」


もう一度ダガーを空振り、風を放つ。風は男を斬り刻み、跡形もなく消えた。


「うわぁ……惨たらしいな」


あれ、これはかなりまずいのでは誰か見ているんじゃ……


「その辺は大丈夫だよ。この近くにいる人達は電撃で気絶させておいたから」


フィアが親指を立てている。

それで本当に大丈夫なのだろうか……

ふと視界の端に影が見える。その影は住宅の上に立ち、こちらを見ているようだ。そちらを見ずにダガーを振る。


影の方向に向き直ると、影は風を避けきれずに住宅の上から落ちてきた。


「ほらやっぱり。大丈夫じゃなかっただろ?」


「うん……そうだね」


落ちてきた奴は大きな怪我を負っていないように見える。やっぱり使う度に威力は落ちていくんだな……


落ちてきた奴に向かってフィアが電撃を放つ。


「これで大丈夫だよね?」


いや……別に電撃でトドメささなくても……


「トドメじゃないよ……」



「只今、第三試合が終了しました。第四試合の参加者は会場前まで集合してください。」


会場から呼び出しが街全体に伝わる。


「そんじゃ第四試合に出るから向かうわ」


「ん。それじゃ頑張ってね」


さて……死なないように頑張りますかね!

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