いざ街へ
賊と戦闘をし、フィアに説教され、クタクタに疲れてやっと我が家に着く。
二人を起こさぬように静かに扉を開け、入る。鍵も掛けないとは不用心な。……こいつら寝てる間に闇討ちされても負けそうにないな……そう思っているとフィアが小声で話しかけてくる。
「……私はベットで寝るけど君はどこで寝るの?」
えっ、家主なのにこの家で寝ちゃダメなの?もしかして男子禁制なの?確かに女の子三人を意識して……ないな。異世界に来てから数日バタバタしてたし意識してる暇もなかった。美少女相手に意識をしていないとは……成長したな……
「ソファはファスタさんが使ってるし、ベットは私とフリッカが使うし、君が寝る処は硬くて冷たい床か硬い椅子しかないんだよ?」
これから寝る場所にマイナスのイメージを付けて貰うと困ります……そもそも二つ目の街で本読んで時間潰そうとした訳だし考えてもいなかったわ。それじゃフリッカとフィアの間で寝るわ。
「……そんな事したら暖かい土に中で寝る事になるけどいいかな?」
「ごめんなさい嘘です冷たい床でそっと寝ます……」
そう言うと床でうずくまって、寝た。案外疲れが溜まっていたのだろうか、すぐに眠りにつくことが出来た。
普段ふかふか……とは言い難いがそれなりに柔らかい素材で出来ている睡眠安定家具で寝ている者が硬く冷たい床の上で寝て熟睡出来るはずもなく、それ程時間も経たぬうちに目が覚めてしまった。時計を確認すると七時……じゃない五時だ。また微妙な時間帯に起きてしまった。この街じゃ特にやる事ないんだよな……とりあえず軽くこの街を散歩してくるかな。
午前七時、やる事が無くなったらとりあえず散歩の精神で散歩が終わり我が家に帰ると三人ともすでに起きており、何やら何かの準備をしているようだ。その様子を見ているとフィアが近づいて来て話しかけてくる。
「あ、君どこに行ってたの?まさか街の外に出てないよね?大丈夫だよね?」
随分心配してくるんだな。優しくしても無一文だから何も買ってやる事は出来ないぞ。
「君に死なれたら夢見が悪くなりそうだからね」
ああ、そうですか……それよりフリッカ達は何やってるんだ?俺は何も聞いてないんだけど。そもそも昨日何やってたか聞いてないし。
「あれ?聞いてないの?今日は君が言う二つ目の街を通って北に行った処にパルテノって言う街に行くんだって。何でもパルテノにある闘技場で大会が開かれて優勝したら百万Cだとかで結構張り切ってるよ」
へー大変だな。頑張ってこいよ。そういう事は……
「何言ってるの?君も行くんだよ?」
え?
「二人より三人の方が優勝出来る確率高いでしょ?それに準優勝でも五十万C貰えるから君も参加ってファスタさんが」
そうか……俺に拒否権と決定権は無いもんな……と言うかフィアはファスタの事さん付けで呼ぶのに俺の事は君なの?名前ですら呼んでもらったことないや……漢字か?漢字がダメなのか?なんなら心やめてハートに名前変えるよ?
「ファスタさんは何か真面目な感じがしたんで、君は情けないオーラが……」
情けないオーラか……オーラなら仕方ないな……治しようがないや……
気分が滅入っているとファスタとフリッカの準備が終わり、フリッカがこちらに気づき話しかけてくる。
「おはようございます!これからアテネスを通ってパルテノに行くのですが、その前にコレを……」
そう言いながらポーチの中からダガーを渡された。深夜の賊の親玉と闘った時に使った物だった。
「今度はちゃんと使えるはずなので安心してくださいね!」
そう言うとフリッカはファスタの元へ。ちゃんと使えるってどういう事だろう。賊の親玉との闘いのアレは不具合があってのアレなのか?前回のは一撃必殺の伝家の宝刀みたいで良かったけど今回のはどういうのだろう。使うのが楽しみな反面少し怖く感じるな。
「それでは、準備もできた所ですし皆さん行きましょうか」
フリッカがリーダーっぽい所を見せてくれた。このパーティの主権は誰が握っているのだろうか。あっ自分はありえないです。
街を出て一時間後……
「あっ、フリッカさん!心さん!やっと着きましたね!ここがパルテノですよ!」
フリッカがテンション高めに言う。フィアとファスタは涼しげな顔をしている中、俺は満身創痍で倒れ込んでいた。
「何倒れ込んでるのよ雑用。まだ大会に参加もしてないのに倒れてちゃ優勝出来ないわよ」
ファスタさんはいつも厳しいっすね……誰でも十数キロはある道のりを一時間で走り切ったら疲れるだろ……身体強化の魔法使えないし、自動回復のおかげで体力は回復するけど気力までは回復できず、かなり気が滅入ってる。
「雑用も空くらいは飛べる様にならないとこのパーティじゃやっていけなくなるわよ。」
このっ……ズルいだろ!ファスタは浮遊魔法で、フリッカは風纏って移動してるし、フィアは浮かんで移動してたし。途中フリッカとファスタに置いてかれたし、フィアは俺と一緒に行ってくれたし本当感謝しかない。
「君を一人にすると帰りそうだったからね。君も身体強化の魔法くらいは使えればいいんだけどね。ま、お疲れ様」
軽い労いの言葉貰っただけなのにフィアが何か妖精に見えてきた。何か羽も見えるし……
「あ、しまい忘れてたよ。何か身体がふわふわすると思ったら」
そう言いフィアが羽をしまう。
「そろそろ予選が始まるらしいから行こうか。」
体力も完全に回復し立ち上がり闘技場へと向かう。目標は死なない程度に頑張ろう……




