帰り道
ファスタを背負い、ダンジョンから抜けると辺りに影が落ち始め、辺りは暗くなりつつあった。
それほどの間、ダンジョンに篭っていたことを認識させられる。
ファスタが気を失っている現在、魔物の残骸の換金方法はわからず、今宵は野宿する事になりそうだ。
ダンジョンを出て、しばし進むと多くの足音が聞こえて来た。
足音からするに、十数人は超えている。
声を出さずフリッカを木の陰に誘導し、闇に紛れて潜む。
聞き耳を立て、少しでも多くの会話の内容を掴もうとするが、誰一人喋ることはなく、金属の擦れる音が聞こえ、統率の取れた武装集団だと予想がつく。
木の陰に隠れたまま、集団が通り過ぎるのを待つ。
目の前を通る集団は全身を鉄の鎧で覆っている。おそらく騎士団だろう。
その騎士団の中に目を惹く存在がいた。それは騎士団の中ほどに周りと比べ、一回り小さい騎士がいた。
その小兵士を見ていると、突然に振り向き、剣をこちらに向ける。
「そこにいる輩! 手を挙げここに出て来なさい!」
と言うとその小兵士は剣を構えこちらの方向を見ている。
隠密使ってた筈なんだけど……
フリッカの方を見ると首を振ったので、フリッカと共に、ファスタを背負ったまま出る。手は挙げられない。
木の陰から出ると数人の兵士に取り囲まれる。兵士の武器は様々で剣や槍、斧などで統一性がない。
「貴様ら! ここで何をしようとしていたか答えよ! 答えによっては貴様らを排除する!」
と小兵士は数人の兵士に守られ、強気に出ている。
すると小兵士の前にいた兵士とは違う兵士が前に出てくる。
「姫様達は先に行っててください。後のことはお任せを」
と言うと、渋々武器を収め一行はダンジョンへと向かう。
一度聞いた事がある声だった。兵士の中で知っている人間は一人しかいない……
「ヴァルトか?」
「ああ、よく分かったね。君達はここで何をしているんだい?」
誤魔化すべきか、正直に言うべきか。顔には出さず迷っているとフリッカ答える。
「魔物の残骸がお金に換わると聞いて魔物を狩っていました。今はその帰りの途中です」
いつもは元気発剌なんだけど、こういう一面もあるんだな……と感心しているとヴァルトが不思議そうに呟く。
「魔物の残骸を換金できるのは聞いた事ないな……」
聞き耳を使ってなかったら聞き逃すほどの小声だった。魔物の残骸って金にならないの……?
「ところで守護者を討伐に向かったパーティとすれ違ったかい?」
「はい。すれ違いましたが……何かあったんですか?」
とフリッカが一瞬、顔を少し暗くするがすぐに平然とした顔で尋ねる。
「ある資産家が守護者を倒すと財宝が手に入る迷信に踊らされてね、非公式で色々なパーティに話を持ちかけていたんだよ。それで今日違反として資産家を取り押さえたんだけど、今日一組のパーティに話をしたと言われてね。姫様と仲間でそれを止めようとここまで来たけど……手遅れだった……かな?」
ヴァルトはフリッカの一瞬の顔色の変化を見逃さなかったようだ。しかし何故姫様まで出てくるのだろう。
「さっきの女の事を姫様と言ってたが、何故姫様とあろう方が前線に出る必要があるんだ?」
と少し聞いてみる。ヴァルトは少し迷った表情をしたが話してくれた。
「姫様は人一倍正義感が強くてね……この国の王都から色々な街を転々としててね、王様から姫様の護衛として任されているんだけど、昨日の事件みたいな事があると向かおうとするからいつもは睡眠魔法使ったりして行かせないようにしてるけど、今日はどうしても行きたいと言うから精鋭護衛を連れてダンジョンに来た訳さ」
人一倍の正義感だけで一国の王女が外に出て良いものだろうかと考えたがこの世界で案外大丈夫なのかもしれない。これ以上ヴァルトの足を止める訳には行かないのでヴァルトに別れを告げ帰る。
今は金がない。ついでにヴァルトの口から魔物の残骸は金にならないのとの発言を得た。
野宿しようにもまた賊と間違われたら嫌だし……最初の街に戻って自分の家に帰ろう……
そう心に決め最初の街に向かった。
主人公が空気になりつつある。




