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0.失墜の庭園
――楽園は堕とされた
愚かな人々の争いにより、精霊たちが愛した地上の楽園は奈落へと堕とされてしまった。
果て無き空は蠢く灰の雲に鎖され、豊穣なる大地は腐敗していき、深緑の木々は朽ち果て、清澄なる川は血に染められ、精霊たちの灯した歌声は愚かなる人々の嘆きに掻き消されていく。
――楽園は堕とされた
精霊たちは人の醜さに諦め、楽園を捨てた。楽園を支える彼らの存在がなくなり、人の自我の愚かさに楽園は崩壊し堕ちていく。
数多の愚者の魂を幽閉した監獄となって――
――楽園は堕とされた
それより幾星霜……月日は流れ、かつての楽園の面影は世界より消え去り、人々は精霊と共存していたという過去さえも忘れ去り、世界の支配者として君臨していた。
喪失の忘却の果て、人は束の間の栄華を手にし、世界を創り上げている。
今もこの世界に住まう精霊の存在も忘れて――