放課後奇 一 階段
「一、二、三……」
一段。
また一段。
足を上げて階段を上る。
「六、七……」
放課後で人の少ない階段。
少し不気味にもその声は廊下に響く。
「十一、十二……」
とん、と両足が揃う。
これ以上先に階段はない。
全部で十二段。
「十二」
私はくるっと振り返る。
まだ階段を上っていない玲奈を見下ろした。
放課後の窓から差し込む赤い光が玲奈を彩る。
「十二だった」
「じゃあ、私」
玲奈はゆっくりと足を上げる。
「一、二……」
私と同じように、丁寧にゆっくり階段を上る。
「四、五……」
上るごとに玲奈が近づいてくる。
長い髪がさあっと零れた。
「十一、十二……」
とん、と両足が揃う。
十二。
「十二だよ」
「十二だねえ」
やっぱり十二だ。
「十三あると異世界に行けるらしいけど」
「でもないものは仕方ないじゃん」
玲奈はふうっと息を吐く。
「それにさ、私思うんだよね」
「何が?」
「異世界なのに何で階段があるんだろうって」
「階段がある異世界だって変じゃないでしょ」
「どうせだったら階段がない異世界に通じたほうが楽しいよ」
「楽しいのかなぁ」
「楽しい」
玲奈はゆっくりと階段を下る。
私もその後に続いて階段を下る。
三、二、一。
とん、と両足が揃う。
「ね、知ってる?」
「何が?」
玲奈がくるっと振り返ると長い髪がさぁっと流れる。
「この階段って十二段あるんだけど、十三段ある時があるんだって」
放課後の窓から赤い光が差し込む。
「十三段あると、どうなるの?」
「異世界に行けるんだって」
私は薄く笑う。
「ね、数えてみない?」
「……」
玲奈はふうっと息を吐く。
私はくるっと振り返り、ゆっくり足を上げた。
「一、二、三……」
一段。
また一段。