表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

放課後奇 一 階段

「一、二、三……」

 一段。

 また一段。

 足を上げて階段を上る。

「六、七……」

 放課後で人の少ない階段。

 少し不気味にもその声は廊下に響く。

「十一、十二……」

 とん、と両足が揃う。

 これ以上先に階段はない。

 全部で十二段。

「十二」

 私はくるっと振り返る。

 まだ階段を上っていない玲奈を見下ろした。

 放課後の窓から差し込む赤い光が玲奈を彩る。

「十二だった」

「じゃあ、私」

 玲奈はゆっくりと足を上げる。

「一、二……」

 私と同じように、丁寧にゆっくり階段を上る。

「四、五……」

 上るごとに玲奈が近づいてくる。

 長い髪がさあっと零れた。

「十一、十二……」

 とん、と両足が揃う。

 十二。

「十二だよ」

「十二だねえ」

 やっぱり十二だ。

「十三あると異世界に行けるらしいけど」

「でもないものは仕方ないじゃん」

 玲奈はふうっと息を吐く。

「それにさ、私思うんだよね」

「何が?」

「異世界なのに何で階段があるんだろうって」

「階段がある異世界だって変じゃないでしょ」

「どうせだったら階段がない異世界に通じたほうが楽しいよ」

「楽しいのかなぁ」

「楽しい」

 玲奈はゆっくりと階段を下る。

 私もその後に続いて階段を下る。

 三、二、一。

 とん、と両足が揃う。

「ね、知ってる?」

「何が?」

 玲奈がくるっと振り返ると長い髪がさぁっと流れる。

「この階段って十二段あるんだけど、十三段ある時があるんだって」

 放課後の窓から赤い光が差し込む。

「十三段あると、どうなるの?」

「異世界に行けるんだって」

 私は薄く笑う。

「ね、数えてみない?」

「……」

 玲奈はふうっと息を吐く。

 私はくるっと振り返り、ゆっくり足を上げた。

「一、二、三……」

 一段。

 また一段。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ