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終焉の物語

終焉が始まる

作者: トト

これは、神様側の視点です。

ハッピーエンドとは言いがたいので、ご注意下さい。

見渡す限り水に覆われた大地に、天を貫くほどの大樹が一本。

白い天空に覆われた<終焉の始まり>と呼ばれる世界。それが私。


私の役目は大樹に実をつけること。

地中に蒔かれたたねは根を通して大樹に吸収される。

そして大樹に新たな実が成る。

熟した実は欲しがる世界かみが持っていく。代わりの種を埋めて。

私はまた実をつける。


それが私の役目。


変わることのない日々。


私は役目をこなす。生み出す実、自分のこと。何も知らず。



だけど、麻織に出会った。




「麻織?起きたのか」

突然この世界に落ちてきた存在。この世界には持ち得ない黒を纏って。

落ちてきて動かない麻織に呼びかけても、麻織には聞こえないようだった。

麻織は私から生まれた存在ではなく、上位世界から落ちてきたようだ。

上位世界のものに下位世界のものが干渉することは出来ない。

そのことわりの故に声も届かないのだろう。

私は静観することにした。器は死にかけていて、器から離れようとする種が視えたから。

なのに。

麻織は目覚めた。すでにぼろぼろの器を動かして、大樹に生った小ぶりの実を躊躇いながらもとり、口にした。


そしてこの世界は麻織を受け入れた。



「エド」

麻織は呼ぶ。この世界ではない、エドを。

その時の湧き上る衝動は今でも忘れない。

麻織には見えないだろうが、時折やってくる彼らはこの世界として<終焉の始まり>と呼ぶだけ。

下位世界である彼らは資格がないために呼ぶことは出来ず、実を通して私を認識し敬いはするものの、役目をこなし彼らの世界に帰っていく。


でも上位世界が作られた麻織なら、私を呼ぶことができる。

私はエド。

その時から麻織はエドの特別になった。



「……実を食べないか?」

実を食べて、麻織の器と離れかけていた種との繋がりはかろうじて維持されている。

大樹に成す、時を宿す不思議な実。

本来であれば15年分だった時の実も麻織(異世界人)では5年分にしかならなかった。

でも5年もあれば、麻織はまた食べてくれると思っていたんだ。

麻織はいつも笑ってエドを呼ぶから。

ずっと側にいてくれると思っていたんだ。



「……ごめんね」

どうして謝る?麻織は何もしていないのに。

なぜそんなに実を食べてしまったことを悔やんでいるのだ。


でも麻織。

実を口にしたからこそ。

麻織には私の声が聞こえるようになった。


この世界の一部を口にしたからこそ。

麻織は私を見てくれる、私を呼んでくれる。

私にとってこんなに嬉しいことはない。

実がもたらした麻織との時は計り知れない価値があるのに。


それなのに。



「……どうしても?」

麻織は私を置いていこうとしている。私には麻織の意思を止めることができない。

世界そのものである私には実をとることが出来ないから。


嫌だと、叫びだそうとする心を押さえて、麻織に教わった不満顔を作ってみる。麻織にも見て欲しくて。……伝わって欲しくて。

でも、漆黒の瞳は私を素通りする。私と麻織を繋ぐ生命が尽きかけているから。

麻織がちょっとだけ、笑った。

ますますおもしろくない。何故、笑うのか。私の感情に応じて天空そらが灰色雲を立ち込める。



「……またいつか」

会うことができると?再会を望むなら、別れは必要ないじゃないか。

でも特別だから。私はそれを受け入れるしかない。

諦め、妥協、無力感。そして希望。

私が麻織から教わったもの。

嬉しい、楽しい、面白い。

それは私とって、麻織そのもの。

麻織は知らないだろうけど、麻織が元の世界を思い出す時。(この世界)を見ていない時。私は初めて悲しみや虚無を知ったんだ。

だから、麻織が約束してくれるなら。私は希望を持つことが出来る。



「麻織はどこへいくのだ」

実のように私に繋がる世界に行くのであれば、私から会いにいける。

前に言っていたふぁんたじー溢れる世界か、それとも様々な生き物がいる世界か?

世界の管理者()は私の子のようなものだから、私の望みを断らない。

麻織の望む人生をあげる。幸せに生きて、最後に<終焉の始まり(ここ)>に帰って来てくれれば。魂の輪廻がこの世界に。ずっと。ずっと。



「………生命が生まれ帰るところに」

絶望した。何処だ、そこは。

私の知る世界かれらではなく、麻織の元の世界のことだろうか。

麻織の世界は私でも行くことが出来ない。私よりも格有る存在(上位世界)

麻織と会えたこと自体が奇跡にも等しいのに。

帰ってしまえば、もう会うことは二度と出来ない。

麻織が、心の底で元の世界に帰りたがっていたのは、知っていたけれど。

私と離れてまで、その者の世界に行きたかったのか。


麻織の器から、種が浮かび上がる。

彼らが持ってくる種とは違い、軽く、様々な光を放つ種はどこか荘厳で綺麗だ。


放っておけば、勝手にどこかへ行ってしまう。

|生命が生まれ帰るところ《麻織の世界》とやらに。

そしたら、もう――――。



―――行かせない。

いつか旅がしたいといって麻織。

どこかに行くことも、恋愛とやらをするのも。

必ず私にまた会いに来てくれるなら、それも良いと思った。

でも還ること(永遠の別れ)だけは、認めない。


手に覆ってしまえるほど、小さくなってしまった麻織の種。逃げないように、何処にもいかないように、自分の全てを使ってこの世界に閉じ込める。

種を扱う次元に存在する世界()では、器を持つ麻織に触れることが出来なかったが、同じ種になった麻織には触れることが出来る。


笑みが浮かぶ。

麻織、麻織。

麻織がエドを呼ぶ時のものとは違って、重く、昏い歪んだ笑いが。

麻織、この思いはなんていうのだろうか。









神々の集いが開かれる。

魂を生み出す大樹の世界が閉じられた。

それを聞いた神々は、黙る者、騒ぎ喚く者など様々。

しかしどの神にも悲しみに染まった顔をしていた。


「この日が、来てしもうたか」

他の神に比べてすこし大きい、老人の姿をした神の呟きは他の神々の騒ぎに掻き消される。

予想していたことだった。初めの異変は神々とっては大切な場所に現れた人形ひとがた


大切な御方の喜びを見て、全てに無関心であったあの方の変化に嬉しく思うのと同時に現れた小さな不安。

ほんの些細な恐れは、時を過ごすうちに大きなものとなっていた。


魂を宿した実は、我々が食することで我等の世界が作った(肉体)に宿る。

死によって魂は回収され、疲弊した魂をあの方の地に埋めることで癒し、再び綺麗な魂として生まれ変わる。


どの神が言い出したのか。


<終焉の始まり>


器に宿り、生命(生き物)が生まれ、そして死んでいく。

その終わりがある生命いのちを統べる我等(神々)をも生み出したあの世界。

敬愛を込めてどの神々もそう呼んだ。



―――だが、違った。


「あの少女こそが、終焉の始まりじゃった」


もう新しい魂は望めまい。あの方は外界との繋がりを断ってしまった。

下位である我等には、声すらも届くことはないだろう。

器を変えても、魂は疲弊し続け、そしていつか壊れる。

我等が修復出来ないほど、粉々に壊れてしまう。

そして多くの世界が死した世界になる。





―――終焉が、始まる。






これにて終焉の物語はお終いです。


何か意味が分からないところとかありましたら、感想でお願いいたします。

もしかしたら、一つにまとめるかもしれませんが。


隠れ(?)設定

エドさんは実がなんなのか、知りませんし興味がないため実をどうなってもいいと思っています。(神様sが使うものぐらいの認識)

なので麻織の罪の意識が理解出来ません。


麻織さんは自分死ぬ運命と知ったため、他の生命を犠牲にしてまで生きようと思っていません。よって奪ってしまった生命は、生命を生み出したエドのために使うと決意。このとき、元の世界の家族や恋人の未練をなくしました。

初めて笑ったエドを見て、感情というものを教えることにしました。


また最後に出てきた神様sはかつて初めのほうに実としてなった存在。実体は伴わないが、魂を生み出すエドの力を受け継いだため、他の魂を扱うことができます。またエドとは違う上位世界の神から世界を与えられ管理者として君臨している。


以上、お読みいただきありがとうございました。

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