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ゆるか先生

子供がタバコ吸っちゃイケナイ理由。

挿絵(By みてみん)




今になって思うと、あの頃の学校は、全体的に "どうかしていた" ように思う。



1988年。



先生が生徒を殴りつけても、誰にも文句は言われない時代。前の時代の反動。前の時代ってのは、自分の5年ぐらい前までの時代。


学校が荒れてたんだな。暴走族(今では死滅に近いが)が全盛だった頃で、本気で窓ガラス全部割ったりして。


そこで学校も何とかしなきゃと思ったらしい。生徒を締め付けないとって。


その反動とゆーか、世代的しわ寄せが自分らの所に来てしまって、先生が生徒を殴っても、誰からも文句が言われないよーな風潮が出来上がってしまったとゆーか。



今だったら、絶対問題になってるよねw



あの頃は、ちょっとした校則違反で、ボコボコに殴られてたんだな。(靴下の色が違うとか、そんな理由) ノキもその一人。つまり、殴られの常連。


「何かあったらまずノキを疑え!」って言われてたもんな。。





今そんな事言ったら、人権問題だよw





この日、ワタシは図書館にいたんだ。






  -  -  -





「おい、タム、ちょっと来いや」 と、ゆるか先生。




美術部の部活の時間。ゆるか先生はその顧問。本名「三佳ゆるか」。

相当の美人。長い髪に、くっきりとした深く黒い瞳。目が大きいくせに黒目の部分が多いから、一層不思議な表情を作り出している。何考えてるか分からないよーな感じがするとゆーかw


しつけの良い黒猫はたぶんこんな感じ。


小柄で線の細いゆるか先生。頼りなげな細い肩に似合わず、男言葉で、超喫煙者!(ヘビースモーカー)ワタシの事も、本名の「田無たなし」じゃなくて、「タム」と呼ぶ。


「えーと、タム、命令!オマエしばらく部活休んで家で勉強な!」 と、ゆるか先生。


足を組み椅子に座るゆるか先生。好んで着用するロングワンピースの裾から、少しだけ繊細な足首が覗く。細く、そして透き通るように白い。今日着てる黒のワンピースのコントラストと相まり、このままでも本当に絵になる。ただ、そこだけ見れば、美しい姿そのものなんだけど、口にはタバコなんだなぁ。。。w


外見は女 (それも相当の)、性格は男 (それも相当の)



そんなゆるか先生は、めんどくさそうにタバコをぷかーっとふかして、トントンって灰皿の上に灰を落として。


ちなみに、今灰皿として使っているのは、ワタシが以前、茶碗として作ったもの。ところどころ厚さが均一じゃなかったせいか、火に入れて焼いてみたら、形がぐにゅぐにゅになって。


「タム!これは素晴らしい灰皿じゃないか!」 と、言われて、茶碗として生まれた筈のワタシの作品は、ゆるか先生お気に入りの灰皿として、第二の人生を突き進む事になった。


この時、ゆるか先生から1000円もらいました。(作品代として)


そーゆう先生だw




話を戻します!




ちなみにゆるか先生は実際若いのですが、それより更に若く見える為、タバコ吸ってるとそのまま補導されそーな雰囲気。下手すっと高校生ぐらいにしか見えない。



「え?ナンでですか?」 と、ワタシ。勉強の理由だ!



「持ってきてやろーか、中間の結果w」 と、ゆるか先生、タバコを口にしたまま、にーっと頬杖ついて。



「教育者としては、生徒の成績低下は見過ごせないんだよなー」 と、ゆるか先生。



教育者としてってのは、ゆるか先生の口癖。ぜんぜん教育者っぽくないんだけどw



「教育者として、美術室でタバコ吸ってるのは、どーかと思いますがw」 と、ワタシちょっとだけ反論。


「いや、教師にバレないよーに吸ってるからw」 と、ゆるか先生。先生、貴方が先生ですw



「家じゃ勉強出来ないんです、先生」 と、ワタシ。


「何だ?シロクマでも飼ってるのか?」


「家だと誘惑が多くて集中出来ないんです。テレビとか漫画とか」


「つか、女みてーな事言ってんじゃねぇよw」 と、ゆるか先生。


先生、ワタシは女ですw それ以前の問題で、家で誘惑多くて集中出来ないってのは、男も女も関係ないと思いますがw



「じゃ、こうしようか。部活の時間中、オマエは図書館で勉強!でもって、その勉強した内容をワタシに報告!図書館ならテレビも漫画もないから集中出来るだろ!」 と、ゆるか先生。先生はタバコの火を消して、口元がにーっと笑って。



「返事は?」



「はい」



先生はそう言って、ワタシの頭をくしゅくしゅって撫でた。ゆるか先生のこういうところが好きだ。他の先生みたいに虚勢を張ることもしない。威張る事もしない。自然体で生徒に接してくれる。


他の教師は、生徒を黙らせようと、威嚇し、ある意味で怯え、高圧によって生徒を抑えつけようとしている。ヒステリーになる先生、竹刀で威嚇する先生。



いろんな先生がいるが、その中で共通に感じるのは、"抑えよう" という歪んだ発想だ。生徒は未熟な生き物で、ほっとくとバカな事するから、力でねじ伏せようって。


それはそれで間違ってはない。ワタシ達は確かに未熟だ。ほっといたら、バカな事するってのも事実。



ただ、一方的な圧力から生まれるのは無駄な反発だけだ。反発が余計にその発想を歪ませてしまう事もある。



尊敬出来ない先生の発言には従う気にはなれない。ワタシ達だってバカじゃないよ。



「ほい、それじゃー、これから図書館行って、タムだけ勉強な!」 と、ゆるか先生。



ちなみにゆるか先生、こう見えて少林寺拳法の有段者らしい。あの細い腕でどうして。。。



「ところでゆるか先生…」 と、ワタシ。



「ナンで子供はタバコ吸っちゃいけないんですか???」 と、ワタシ。



「最初のキスぐらい、お互いヤニくさくない方がいいからだろ??」 と、ゆるか先生。



はははっw じゃ、先生、図書館に行ってきます!




(続きます!)

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