ノキが殴られてもうた!
ノキが殴られてもうた!
千葉県の松戸市。
たぶん、「この街に住みたい!」って言って住んでる人は少数なんじゃないかと思うw 地代が安いみたいなんだな、こっちはw
ここがワタシの生まれ育った場所。川沿いの街、特徴の無い街。
江戸川を挟み、あっちが東京、こっちが千葉県。
風景も違うのだ。
江戸川区である向こうには、やっぱり建物が多い。古い工場とか、綺麗なマンションとか。
対してこっちはネギ畑!
雨降ると、ネギのにおいがぷーんと街中に拡がる。ついで時々、堆肥のにおいw 堆肥って分かるか都会人!牛のうんこ発酵させたモンなんだけど、それがまー、肥料になるんだよ、畑のw
都会と田舎、コンクリと畑。住宅地。
美しい田園風景もなく、都会の洗練も無い。
そんな中途半端な街で私は育った。右でも左でもない、都会でも田舎でも無い、半端なバランスのこの街。
中学二年。1988年。
携帯電話がまだ登場する前の時代、ネットも無くて、音楽聞くにはCDかカセットかって時代。
そして昭和最後の一年。
雨が降ったら街中にネギのにおいが拡がる。せわしなく走る電車の音が聞こえる。夕方になると、それぞれの家々から届く晩ご飯の香りが、私におかえりと語りかけてくる。
ワタシはその中を、トコトコ制服で家路へと急ぐ。今日これから勉強をするか、それともテレビを見ちゃおーかとか、そんなどーでもいい事、ゆるやかに思い浮かべながら。
事件なんて何もない。語る事なんて、何もない。
あの頃の私の全てであった、ふんわりとした日常。背伸びすれば空まで浮かんで行けそうな、ゆるやかな日常。私はこの緩い輪郭の輪に包まれ、少女時代の大切なフレームの一部をそこで過ごした。
この物語は、「大田乃樹」という、当時まだ少年だった男の子と過ごした、ワタシの単なる写像だ。
どこにでもある、ごくごく平凡な写像だ。
- - -
「タム聞きな!ノキのヤツ先生に殴られたんだって!!!!」
みーたが駆けこんできた。さも、重大事件が起きたよーな顔して。いや、まぁ、重大っちゃー、重大なんだけどw
ただ、ノキが先生に殴られてるのなんて、別に珍しくないからなぁ。。。
みーたは小学校から一緒。ノキの事は、小学校から一緒だったヤツは「ノキ」と呼ぶ。それ以外は「オータくん」
ま、みーたの表情見てると、驚いた顔しながらも、微妙に "速報を聞きつけて単に喜んでる女子" 的な表情してるから、まぁノキのヤラれ度の危険レベルも低いのではないかと。
「こないだも教員用女子更衣室に忍びこんで、ボコボコにされてたからなw」
と、みーた。みーたはたいてい聞いてない事まで教えてくれる。ま、情報通とゆーか。○×の誰と誰がつきあってるとか、○×はこないだ学校でチューしてるところ見つかって、不純異性交遊の罪(←罪?)で、親まで呼び出されて、始末書書かされたとか。
隣のクラスにいるノキの話も、時々耳に入ってくる。まぁ、ノキの話なんて、浮いた話はまるでと言っていいぐらい皆無で、どれもこれも、百葉箱にエロ本隠してるの先生に見つかったとか、美術室のミロのビーナス像に乳首書き込んで怒られたとか、そんなレベルだけど。
「タバコだってサ!」とみーた。多少、上気気味に。
「トイレに吸殻落ちてて、先生に問い詰められて白状したんだって!」とみーた。
…タバコなのか。。。
…へ。。。??? タバコなのか。。????
(続きます!)