ノキと屋上とディズニーランド②
ノキの持論w まぁ千葉県ってこんな感じですよねw
「んなわけねーよ!」
話を1988年に戻す。ノキとワタシ。今二人は学校の屋上にいます。
- - -
当時ワタシはひとりになりたい時は、階段の一番上、屋上の入り口前の一畳ぐらいの小さいスペースで、ぼーっと座って天井眺めるのが好きだったんだ。
誰も来ないし、静かだし。
校内の端の校舎。その中の更に階段登った一番上にあるこの薄暗い場所は、生徒はみんな不気味がってあまり近づかなかった。屋上前の扉。普段は鍵がかかってて、屋上へは行けない。
この先の屋上で自殺した生徒が昔いたとかいないとか。
ま、ワタシ、そーいう話最初から信じないんだけどねw ありきたりな噂。どこの学校にもそーいう話あるし(そしてたいていはガセ)
ワタシ的にはこのホコリっぽい場所がすごく好きだった。薄暗い場所。何故か横に古いイーゼル(絵を描く時に使う木の三脚)が大量に置いてあって、(昔美術部で使ってたやつか?)黄色く変質したビニールで包まれたデッサン用の石膏像(これはボルゲーゼのマルスとニオベの胸像だ!※注意:ワタシは美術部)とかが置いてある。
打ち棄てられたモノ達。
ここにいると、ワタシもその "モノ達" の仲間に加わったみたいで、なんか落ち着く。モノになった感覚とゆーか。なんか打ち棄てられたものには、心が宿ってるよーに思う時がある。その心は決して積極的に言葉を発したりはしないんだけど、ゆっくり座って、コロコロ笑って。
そんなモノ達に囲まれてると、なんか落ち着くんだな。
ワタシだけかな?こういう感覚。
- - -
そこでワタシはぼんやり座って、上の方にある小さい小さい窓を見上げて。窓からは細く直線的な光が、スーッと差し込んでいる。何か手を差し伸べるように。音もなく、そして静かに。
その光の手の中を、小さい塵達が楽しげに踊る。
ふわふわと、気まぐれに。
その気まぐれは、光の手の中を出たり戻って、上や左や下や右。意識あるよーで無いよーで。
それをぼんやり眺めて、ぼんやり考える。
ふわふわな塵たち。意識ある自分。この中で無機的に動く塵たちと自分の体温だけが、その存在を伝える。生きてる、動いてると。
いや、塵は生きてないけどw
- - -
意思を持ち行動する筈の自分。そうしてる筈の自分。
ただ、無機的に動く塵たちと、ワタシ達の行動、なんか違いはあるのかな?なんて考えてしまう。
辿り着く場所は、結局自分の意識とは無関係なところにあったりもする。意思とは無関係に。ふわふわ無機的に。
見えない力の上に乗る、脆弱な存在な自分。弱々しい塵たちが右や左に気まぐれに翻弄される。風に踊らされるように。
そしてその気まぐれが突然やって来た。
- - -
「あれ、タムなんでこんなトコいんの?」と、ノキ。
ビクン!、体が揺れる。完全油断しとったよ!あまりにもぼーっとしてたワタシは、ノキが階段登る音に全く気がつかず、そのまま天井見上げたまま、だらしなーく口を開けていた。ノキの言葉が突然頭から降って湧いたよーな感じ。
一瞬、顔が赤くなるワタシ。ぼーっとしてるとこノキに見られた事実と、突然ノキの顔が目の前にある事実。油断してた自分にあまりにも突然で、ワタワタして。。
いや、ノキなんだから気にしなくていーんだよ!どーでもいいんだよ!
とにかくびっくりした!突然来るなコンちくしょ!
「おまえこそ何故ここにいる!自殺でもするんか!」とワタシ。照れ隠し的に。
「タムこそ、なんでこんなトコいんだよ?こんなトコいっと脳が腐るぞw」と、ノキ。うっさいな。。。ワタシは哲学的な事考えてたんだよ!おまえと違ってなw
「とーりーあーえーずー、ちょっとタム、そこどきな♪」と、ノキは何か隠し事してる子供のよーな笑顔で、ワタシをドアの前からどけて、鍵をかちゃかちゃいじり始めた。
「3、、、6、、、、7、、、9、、、」
かちゃり。鍵が開く。
「もっといいトコ行こうぜ!」と、ノキ。
うっさいなー。
ドアが、キーィと開く。さっきより強い光がノキの背中越しに伝わる。まぶしい輪郭の光。明確な光。力ある光。迷い無き光。
ノキがこっち見て笑う。
「はい、お姫さま♪」と、ノキ。
眩い日の光。ノキの体の輪郭をはっきりと写す。ワタシはその声に釣られるまま、ノキのあとに続いてしまう。
扉の先、まぶしい。
コンマ何秒だけど、ホントにお姫様になった気分だ。屋根裏のシンデレラ。そしてそのあとの舞踏会。相手がノキってのが納得できんけど。
ドアの先には三段ばかりの短い階段があって、その時ノキは、「ほいっ」と手を差し出してきた。素直に手に触れてしまう自分。
触れてしまった。
その短い階段を降りると、ざりっという砂っぽい屋上の床の感触が足元から伝わってきた。
いつの頃のか分からない、つぶれた錆びた空き缶。何故か釘が数本。それも錆びてる。それとどこかから飛んできたと思われる、空気が少し抜けくしゃりとつぶれたドッチボール。そして軟球がひとつ。
ひゅーっと風がワタシの制服を揺らす。スカートの裾がホンの少しだけ踊る。いやらしくない程度に。
「気持ちいいだろ?ここ?」と風を体で感じたままのノキが、南側を向く。ワタシもその方向を見る。
街だ。
坂の上にあるこの中学校(何しろ名前が坂上中学校!)街が一望出来た。
風がもう一度吹く。
ふたりの髪が同時に揺れる。ふわり、軽やかに、触れるように。
きもちいい。
「ここ、他の校舎から死角でサw」と、ノキ。
確かに職員室や、校庭からちょうど死角になってる。ぐるっと見回す。
「ここならエロ本読んでもバレないかなーと思ってw」と、ノキ。なんだそんな理由か。。w
ワタシはこの時、まだノキの手に触れてる事を改めて思い出した。あ、いかん。。何がいかんのかわからんが、とりあえずいかんと思った。
ワタシはノキに気づかれないように、ゆっくり、慎重に、触れてる指を離した。少しずつ、バレないように。
逆に指先に神経が集中してしまう。
と、その時、ノキの指がぱっと激しく動いた。
へ!?!? ビクンッ、肩が少し動く。
と、その時ノキは上着のポケットから何かを取り出して、ほいっと差し出してきた。
牛乳。
牛乳???
パックの牛乳だ。「飲む?」と、ノキ。「屋上で飲んだら美味いかなーと思って!」と、ノキ。ノキはホント、何も考えてないみたいだ…w
考え過ぎたワタシがちょっとバカみたいだ。バカみたい。ま、どーでもいいけど。
「悪い事したあとのひとくちは格別だろーっ!」とノキ。うん、確かに美味しい。
けど、悪い事してんのはアンタだけであって、ワタシはそれに釣られてやってきただけであって。。ただ、先生にバレたら正座モンだろーなぁと、多少。。
「戦前までストローって、専門の職人がキリで穴開けてたんだぜ!」と、ノキ。んなワケないw
「つかおまえ、カギ抜けすんの趣味だろ?」と、ワタシ。
「うん、カギ見ると燃えるんだw」と、ノキ。
いつか捕まるぞw こいつ、簡単な南京錠ぐらいならハリガネで開けるからな…。。。一種の特技だ。
「拉致監禁された時の予行演習♪」とか、ノキは言ってた。なんだ、今後逮捕でもされる予定でもあるのか?
「ヒーローは絶対一度捕まる!そこから華麗に抜け出してやるの!」と、ノキ。いやおまえ、ヒーローじゃねぇし!ただのスケベだろ?
ノキはちょいちょいっと指を曲げて、ワタシの飲む牛乳を指差し、 "おれも飲むから返して!" ってジェスチャーをした。
ほいっとノキにそれを手渡す。
自然にノキはストローに口を付け、くるり南側を向いて、美味しそうに飲み始めた。
ノキってホント、なにも考えてないんだろうなぁ。。。ワタシが口をつけたもんじゃないかよー。。。ちょっとは気にしろよー。。。
とりあえず今回のノキの鍵抜け。ただ単に放課後毎日部活終わったあと、ひたすらそのダイヤル式の鍵を「0001」から始めて、答えにたどり着いたとゆう。つまり3679番目に答えにたどり着いたって事だ。ヒマとゆーか、アホとゆーか。。。
その後、どこで話がどーなって、ディズニーランドの話になったのかは、あまり記憶には無い。
だけどなんとなく「将来どうすんの?」って話になって、「適当に学校行って適当に会社入る」って言ったあと、そんな話になったよーな気がする。
「適当にやってりゃ、とりあえず安泰でしょ?」と、ワタシ。そんな言葉にノキが反応したような気がする。
「こんな状態、長続きしないよ」、ノキは言った。
この時のノキが、ちゃんと未来を見据えた上でそういった発言をしたのか、それとも単にかっこいい言葉を言いたかっただけなのかは、不明。
ただ、ノキのこの時の発言は、あながち間違ってなかった。
常に何かに神経を尖らせないといけない現状。昔のように安定はしてない。日本全体が。
そうなると、その次のノキの発言も、あながち間違いではなかったように思う。
「いずれミッキーが千葉の県長になると思うんだよね!」
当時はつまらない冗談だと思ってた。いや、冗談としては今でもつまらないと思うけどw
ノキの理屈は、日本全体が不況から抜けれずいろんなことが起きて、日本はガタガタ。結果、ディズニーだけが生き残り、ミッキーが華々しく県長の座に鎮座すると!
「でもって、千葉県制覇に成功したミッキーは秘密の隠れ家で、葉巻口にしてひとりほくそ微笑むのw」と、ノキ。満足そうな笑顔で。
ノキのつまらない冗談は続く。
「電車がすべてアトラクション化。やたら陽気な駅員が『やぁみんな!この電車の終点は京成津田沼駅だよ!何が起きるかなーっ!あははっ!』みたいに言って、何故か稲毛あたりに着いたりすんの!」
「途中、滝壺入ったり、象に水かけたれたり!」(ジャングルクルーズ?)
「校章はぜんぶミッキーマーク」
「飲み物はシェークのみ」(何故?)
「自炊禁止、弁当禁止」
「ただし、電車の待ち時間二時間とかで、チケット代とかが法外なのw」
うーん、つまらんw
ノキとワタシは、ふたりで南側の屋上の縁のところに肘を付き、そんなこと話していた。適当な会話。
「んなわけねーよ!」とワタシ、とりあえずノキのつまらない冗談に付き合う。
つまらない冗談。だけど、そのつまらない冗談を言うノキのうれしそうな表情がワタシは嫌いじゃないんだ。嫌いなワケないじゃん。
「ホーンテッドマンションとかを、浅草花やしきにも移植して欲しいなぁ…」とノキ。確かに。あそこ待ち時間長いし。あ、花やしき千葉県じゃなかった!
この時の会話を、あとになってこうして思い出すとは思いもしなかった。想像もしなかった。
予鈴が鳴る。教室に戻らなきゃ。
「ワタシ、先行くね」と。だってノキと一緒に屋上居たなんて言われたら、どんな噂立てられるか知らんし。
「タムっ!」とキレのある言葉をかけられ後ろ振り向くと、小さい箱が飛んできた。わわっ
ワタシはワタッとしながら、その飛んできた箱を受け取る。
チョコボールの箱。カラカラっと音が。「残ってるから全部やるよっ!」とノキ。
…ちょっとうれしい。。もしディズニーに占領された暁にゃ、キョロちゃんマークも全部ミッキーに変わるのだーか?…と、なんとなくその時思った。
幸い現時点ではミッキーに全占領されてない千葉県。ま、占領されたらそれはそれで面白いとは思うけどw
ただ、問題はこのあと、この数日後に起きるんだなぁ。。。。全く別の話。。。
予想もしていない現実。認めたくない現実。
ノキが連れてきてくれた二人だけの場所で、事件が起こったんだ。
(続きます!)




