だからキスしてよ。
今回は、タムはノキの、どー・・・・・・・・でもいい相談に付き合います。なんとなくノキの一面が見えてくるよーな気がしますw
「という事で、オレは失恋したってワケ。」
「深刻な話なんだ」って前置きしてたワリには、めちゃくちゃ中身薄くないか?ダイジェストで言えば一瞬で終わるよーな感じ。
それをイチイチもったいぶって言うんだ。
なんて事はない、自分の事を好きだと思ってた子が、実は自分以外の子が好きだったという、それだけの話。
いつもの河原、いつもの帰り道、「おーい」の声に振り向いたら、ノキが自転車で走ってきた。「聞いて欲しい話があるんだ」って言われたからちょっとだけつきあってあげる事にした。河原に腰かけて。
まぁやる事ないし、ひまだったし。
ワタシを追ってきたのか、偶然会っただけなのかは知らない。
「部活は?」と聞いたら、
「体調不良で休んだ。」
とノキ。見た目ぜんぜん元気そうに見えるけどw
そんな理由で休めるノキは、部内であんまり期待されてないのだろーか?バスケ部来週試合じゃなかったっけ?
「心の病でサ…。」とノキ。聞いてないけど。
どうせ好きな子がいて、それがどーとかという話。聞かなくてもだいたい分かるし、聞く前から分かるよ。
読めるんだ、ノキの事なんて。
実際はまさに大当たりとゆーか、まるで予想通りだったとゆーか。まぁ、ノキの言ってる内容を箇条書きにすると↓こんな感じ。
・部活中、自分の事をいつも見つめてる子がいた。
・↑いや、正しくは "自分の事をいつも見つめている"…と勝手に思いこんでいただけ。
・勘違いしちゃったんだ、ノキは。"自分の事を好きに違いない" って。
・その子が見つめていたのは別の人だったんだな。今日それが分かって落ち込んで、体調不良で部活まで休んでるって感じ。
サッカー部の練習をいつも見てる女の子達。その子達の誰が誰を目当てなのかなんて、みんな知ってる事だと思ってたよ。普通なら分かるよ。ニブいノキでもそのくらい気づいているかと思ってた。
「いや、ノキね、あの子前々からあの人の事ずっと好きだったんだよ」
ワタシは忠告がてら言った。
ここで言う『あの子』とは、練習を見てる子らの中で一番かわいかった子。
『あの人』とは、あの子が好きな人の事。
二人は既につきあっていて、それは誰でも知ってる事で、もはや知らないのはノキぐらいの話で。
ただ、別に誰かにそう言われなくても、雰囲気とゆーか、何となくとゆーか、見ていれば、あの子が好きな人は誰なのかなんて、誰でも気づくと思う。気づかないのはノキ(=バカ)だけ。
それをノキは、どこをどのよーに間違ったのか、"自分を好きに違いない" と強く勘違いしてしまった。
どこでどう、情報が屈折したんだ?
でもって、今日、二人がつき合ってると知らされたノキ。
普通ならそれであきらめればいいところを、それでもノキはまだ解釈を曲げない。
こんな状況にも関わらず、ノキはこの期に及んで「最初はオレの事が好きだった筈なんだよ」と力強く言い切っている。
謎だ。
どこでどのよーにそんな感じに脳の中で解釈できるのか、すごくすごく謎だ。
いやいや最初からあの子はノキの事なんて、どーでもよかったワケだから。
とりあえず、根拠が不明。自分の好きだと信じ切った、ノキのその根拠が不明。
見つめられてると思っただけで、勘違いしたのか?それだけなのか?
ノキに聞いたら。
一回、一緒に帰った。
…と答えた。それは偶然、一緒になっただけなのではないか?w
別に向こうも本意ではなかったのではないか?w
しかしノキは、自分が帰る時間を見計らって帰ったんだと強く信じていた。
ホントヤツの頭はおめでたい。常に自分の都合の良いよーにしか考えが及ばない。
だいたい、帰る時間を見計らっていたのなら、一回だけって事は無いんじゃないだろーか?
「その時向こう、照れてて、なんだか上手くオレと話せなかったみたいなんだよね。あの時オレが、もっとフォローしてあげれれば、こんな事にならなかったと思うんだ…。」とノキは続ける。
ホントおめでたい。
ノキは常に『自分思考』なので、話が弾まないと『向こうは照れてた』、冷たくされると『おれの事を意識し過ぎてる結果だな』と、常に例外なく、自分に都合よく解釈してしまう。
つまりノキにかかれば、ノキの好きなコは全員ノキの事が好きって解釈をされてしまうってコトだ。
だからノキの脳では、ノキってヤツは常にモテモテ。←ある意味幸せな人間だと思う。
ワタシもそうなりたい。無理だけど。
「とりあえず話をまとめると、悪いのはおれなんだ。オレがもっと彼女の気持ちに適切に答えてやる事ができれば、あのコも不本意な相手とつき合う必要がなかったんだ。すべてオレが悪いんだ…」
どう話をまとめるとそうなる????
こういうヤツがタチの悪いストーカーになるのではないか?と一瞬不安に思ったが、ノキはノキで『別れの美学』というのがあるようで、叶わぬと思った相手は追わないという哲学があるみたい。
「僕は潔く手を引く事にするよ」とノキ。遠くを見つめながら。
手を引くも何も、最初から戦力外だから!
最初から戦いに参加してないから!!!!
「ある意味、オレは彼女の事を傷つけてしまったよーな気もする。」
ノキの勘違いは、まだまだ加速中だ。
「大丈夫、女の子って強いから」
ワタシはいちおう、言ってあげた。
ノキは遠くをしみじみと見つめている。まるで何かを悟ったように。
いやいや、ノキ!あんたまだ何も悟ってないから!!!!
その目よせ!遠くを見つめるな!自分に陶酔するのはヤメてくれ!!!!
「という事で、オレの恋は終わったというワケ。」
…うーん、そういう事ね。。
そもそもあの子のどこが良かったのだろう?
あの子の二面性、すごいよ。女の前じゃ絶対に笑わないもん。あれは営業用。
ワタシが男だったら絶対選ばない。
ただ男って、たいていああいう子が好き。
ああいう子こそ、人生の幸せをカッさらって行くんだろうなぁと思う。ワタシはダメだ。別にかわいくないし。
「失恋の乗り越え方を教えてくれよ。」とノキ。
「ワタシに聞くな!」
その前にコレって失恋?
笑顔だけで恋が始まるおめでたい季節、一緒に帰っただけで恋が始まる柔らかい季節。勝手に始まり、勝手に終わり、それでまた新しい恋を見つけてしまうこの季節。何年かした時、今のこの時期をどのように思い出すんだろう。
今はまだ分からないや。
ぜんぜん分からないや。
分かる時が来るのか?
それは老人になった時だったりして。
遅すぎ。いくらなんでも。
「だからキスしてよ」とノキ。
は?
なんでそーなる?????
「おれ今、失恋で傷ついている。だからオレを落とすなら絶対に今がチャンス!もったいないよ」
そもそも圧倒的に何か勘違いしている。いつからワタシはノキの事好き扱いになってるんだ!?!?
「あんた落としてナンかいい事でもあんの?」
ワタシは聞く。
「練習の成果がここで発揮される。」とノキ真顔。
「練習?」
「キスの練習の成果だよ!」
こいつ本当にアイスで練習してたのか…。好きなコの唇を想像されつつ、舌使いの練習台にされるアイス。アイスも災難だ。
なんだかすごく気持ち悪いものを想像してしまった。ワタシがアイスなら、普通に食われたい。
「ワタシ練習台?」
「いやいや、本番への足がけ」
「それを練習って言うんだよ、バカ」
「大丈夫!おれもっとすごい事も練習してんだよ!」
うわー、聞きたくない!絶対詳しく聞きたくない!!!!
「そーゆうことはお互いが好きな状態になってからしろ!ワタシは却下!」
「好きになればいーじゃんオレの事」
「軽く言うな!」
帰り道ノキは「アイスおごってやるよ」と言った。
「キスの練習?」とワタシ。
「いや、単純に食いたくなった。それと今日のお礼。」
ワタシはノキのほっぺたをぺちんと叩いた。
「蚊がいたから」とワタシ。
ノキの顔にちょっとだけ触れたかったんだ。
今はまだ、ちょっとだけでいいんだ。
(続きます!)