表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/32

鉛筆のこんな利用法 その⑤

鉛筆のこんな利用法 その⑤

挿絵(By みてみん)



落ち着けワタシ!そんな深く考えなくていいんだ!と自分に強く言い聞かせた上で。言った事に対する後悔が、微妙に押し寄せるのを必死に食い止めようとしながら。



しまったーって気持ちを、必死で抑えながら。




何かを抑えながら。でも、それでいいんだ!って自分に言い聞かせながら。




ところがノキときたら、「あ、オレ、タムの事好きだよ」とサラッと。



ってオイ!オイオイオイオイ!



ワタシの聞きたいのはそんな事じゃねーんだ!そんな軽い返答じゃねぇんだ!!! 幼子が言う「ママ大好き!」みたいな言い方で言うな!



ペラペラに言うな!



メシ食いながら言うな!もぐもぐ食いながら言うな!



軽く言うな!



好きって言うのはだなぁ…、もっとこう、しっとりとした大人の艶とゆーか、ドロドロ感とゆーか、重厚な響きとゆーか…。って、何だかワタシも何が言いたいか分からなくなってきたが、とにかく違うんだ!オマエの言う好き、ナンか違う!絶対に違う!!!


あっさり言うな!軽々しく言うな!


幼子(娘)の言う「パパ大好き!」みたく言うな!


「アレ、タム、豆余ってんじゃん」と、ノキの感心は再び弁当の方に。


ああ、ワタシの4ダース分ぐらいの勇気は、どこへ…


「いい、もう全部やる…。オマエに全部やる…」と言って、ワタシはお弁当箱ごと差し出した。まぁ豆しか残ってないし。


って、お弁当箱と一緒にハシもうっかり渡したモンだから、一瞬、ノキはワタシのハシで食べようとして!「コラ!オマエは鉛筆で食え!それはワタシのハシ!」とワタシ。


「イヤ、鉛筆だと掴みにくいからw」とノキは言ったけど、そのまま自分のハシをふんだくって、ハシ箱にしまった。鉛筆だけでなく、ハシまで犠牲にしてたまるか!


掴みにくいと言ってるワリには器用に鉛筆で豆を食べるノキ。こいつ指先は器用なんだよなぁ…。ガサツな性格のクセに。写真とか上手いし。あ、写真、関係ないけど。ガサツなようで繊細なところもあるんだよな…。何か知ってるよーで知らないのかもなノキの事…。



「髪がふわっと風になびいて、一瞬香る柔らかい感じは好きかな?」とノキ。器用に鉛筆で豆を口に運びながら。



へ?何言ってんのコイツ?



ワタシが不思議そーな顔してると、ノキも不思議そーな顔をして「いや、だからどんなコが好きか?って聞いたじゃん。オレ別にこだわりとか無いけど、なんとなく女の子の髪の香りとか好きだなぁって。なんとなくだけどね。」とノキ。掴みにくい豆と多少格闘しつつ。



髪の香り?におい好き?ま、健全なフェチな方だとは思うが。足とかワキのにおいフェチとかよりはぜんぜんw



「つか、そんな事聞いてどーすんの?リサーチか何か?」とノキ。



「ま、そんなトコ」 とワタシ。



言えない。言えるワケないよ、ホントの事なんか…。



昼休み終了五分前の予鈴が鳴った。初めてノキと過ごしたお昼休みはこうして終わった。終わるも何もニワトリにエサやって、メシ食っただけだけどw



ノキは、「どうも!ごっさん!」と言って、ワタシに弁当箱を戻し、「オレ、日直だからちょっと急いで戻るわ!」と言い、制服の裾の埃をぱんぱんとはたいた。


豆は綺麗に食べられていた。食べるの綺麗なんだよなぁノキは…。



「あ、もう一回言うけど、オレやっぱりタムの事好きだよ!」とノキ。またまたサラッと。なんか、軽いなぁ、やっぱり。。



「どのヘンが?」とワタシ。反論に近いような感じで。ノキにも分かるよう、多少ムッとした表情で。



「ニワトリに似てるから」とノキ。



は?



「なつかなくて、生意気なところw」とノキ。



ま、いいや。なんだかどーでもよくなってきてしまった。



ノキは、じゃ、行くわ!と言って、そのままくるっと背中を向けて走りだしてった。


ノキの姿が校舎の中に吸い込まれてゆく、ワタシの視界から消える直前、ちょうど声が届かなくなってしまう直前、ワタシはノキに向かって叫んだ。




「ノキー・・・・・・・・ィィィィッ!!!!!!!」可能な限り。ハラの底から。出来る限り。




ノキがこっちを向く。オレ急いでんだよ!って感じで。




「たまには一緒にご飯食べよっかーっ!!!!」




ノキは、笑って手を振ってくれた。




「ウソだよ、バァァァァァァァカ!!!」ワタシは叫んだ。力の限り。心の限り。大地を揺るがすが如く(※やや誇張)




ノキはまたニコッって笑って、手を振って、そのまま足早に校舎の中に消えて行った。





ひゅうと風が吹いた。髪がふわっと少しだけ風に踊る。





髪のにおいかぁ…。。とりあえずシャンプーから変えてみっか…。。






<後日談>

翌日教室に入ると、新品の鉛筆が二本置いてあった。そしてメモがあった。ノキの字だ。「ごめんな」って。


ワタシはクスっと笑って、鉛筆をかばんにしまった。


ちなみに課題は出せなかったよ。(当然だ)顧問のゆるか先生には「ま、来週までに二枚書けばいーよ」とサラリと言われた。慌てる必要なかったかもなぁ…。


休み時間、ワタシは二本の鉛筆のウチの一本を取り出し、ゆっくりナイフで削った。削る度、なんかノキの事がぼんやり頭に浮かんで来た。ヒヨコ風呂の事、ニワトリ好きな事、その他、どーでもいい事。


ワタシは真っ白なスケッチブックを広げ、思うまま、指を走らせる。



れんげが、横から顔を近づけて、覗き込んできた。



「何書いてんの?」



ワタシは「ニワトリ好きな、優しい目の人の横顔」って答えた。



れんげはふーんという不思議な顔して、分かったよーな、分からないよーな。分からないよね、普通。




「シャンプー変えた?」とれんげ。




え、まぁ、そうなんだけど…。




(ノキと魚釣り編 に続きます!)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ