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鉛筆のこんな利用法 その④

鉛筆のこんな利用法 その④

挿絵(By みてみん)



「ちょっと待っててね」とノキは言って、堂々と飼育小屋のダイヤル錠を開けて、中に入り、麦みたいなエサがいっぱいに入ったエサ箱を、トンっと下に置いた。一斉にニワトリ達が寄ってきて、ツッ!ツッ!ツッ!ツッ!と、ノキが持ってきたエサを待ってました!と言わんばかりに。


「ナイショにしといてね。ホントは飼育係以外、この中入っちゃダメなんだ。」とノキ。



一匹がバサバサっと翼を広げ、ノキの肩あたりまで舞い上がった。これが友好の印なのか、ノキを攻撃対象として見たのかは、ワタシには謎だが。



ま、何にしてもニワトリ嬉しそう。おなか減ってたんだろなぁ…



それにしてもノキ、なんでダイヤル番号知ってるんだ???



ま、どうでもいいけど。



ノキは小屋の入り口の重たい扉を、くきーっと軋んだ音を立てながら、再び外に出てきた。そして地面に置いてた自分の弁当(米とコブのみ)をヒョイっとつまみあげ、当たり前のよーにワタシの横に腰をおろした。当然のように。そこが定位置のように。


「近寄んなバーカ!」と、いつものよーにワタシ。ああ、もはや反射に近いわ…。なんかノキに何かされると、反射的にこーいう言葉出ちゃうんだなぁ。無意識のウチに。それが当たり前のように。


いやいや、別に大騒ぎする程の距離じゃないんだよ。密着って距離でもないし。拳二個分ぐらいは開いてるし。いかん、何ワタシ、咄嗟に距離とか意識してんだ?そんなん気にしてどーする?どーでもいいじゃん別に。


「いーじゃん、自転車ではいつもチチ当てるぐらい密着してんじゃん!」とノキ。


って、密着してねぇよ!自転車の時は、意識して胸当たんないよーにしてんだよ!


「つってもタム、当てる程のチチねーけどなw」とカラカラっと楽しそうに。楽しくねぇ!ちげーよ!意識して当ててねーんだよ!当ててたまるかボケ!


くーっ、ナンかムカつく…。。


「ワタシだって、多少成長してんだよ、たぶん…」ってワタシ、…って、何言ってんだ一体???


「成長って何!胸!チチ!胸でっかくなってんのタム!」とノキ、すんごく楽しそう。その喜びは、性的な想像による喜びじゃなくて、なんか『からかう要素』を見つけた事による、子供じみた楽しさとゆーか。そうなんだ、ノキってこういうヤツだ。小学生はオマエは…???


「今度測ってやるよ!」とノキ。ニッコココしながら。満面な穢れ無き純真な笑顔で。


ワタシは思いっきり手のひらでヤツの頭をひっぱたいて、「黙って食え!」と。そしてワタシも、もぐもぐとお弁当の残りを口に運んだ。う…、豆が上手く掴めん…。。


まぁ、別に横に座るのはいいか。寒いし。いや、ぜんぜん寒くねぇよ。いや、特に離れる理由もないし。不自然な程の距離でもないし。横に座ってるだけだし。意識するのもヘンだし。


遠くでは相変わらず、サッカーか何かやってる男子の声が、バカみたいに響いて聞こえる。ふだんはその音を意識なんてする事なんて無いのに。今は何故かハッキリ聞こえる。ニワトリは相変わらずせわしなく動き回ってる。その爪が地面を引っ掻く音までも聞こえてきそうだ。


風が葉を揺らす。そんな音までもハッキリと聞こえる。ワタシとノキの間を通り抜けるホンの僅かな風の軌跡までも辿れてしまいそうだ。


あれ、ドキドキしてんのかワタシ?


ンなバカな!相手はノキだぜ!ノキ相手にドキドキする理由なんてあっか?あるわけねーじゃん!


つか、ノキ、なんか喋れ!無言になるな!ホントに黙って食うな!う…、豆がぽろぽろハシから逃げてく…。。


ノキがヒサビサに口を開けたと思ったら、「おかず余ってない?」と。そんな事か。ま、別にいーけど。


「ニワトリとキャベツでも食ってろ!」とワタシ。ああ、また反射的に…。。何だろう?何でこうなんだろう…???かわいいって点から、真逆の事やってるじゃないかワタシ。



いや、別にノキにかわいいと思われなくてもいーんだけどサ。別にいーんだけどサ。



ただ、なんとなく思うんだけど、ノキには何言ってもどこにも行かない、遠くに行ってしまわないって分かってるから、そういう事を平気で言えるのかもしれない。



ワタシ別に誰にでも暴言吐くタイプじゃないし。ノキ限定。ノキ以外にはこんな事言わない。バカとか死ねとか言わないよ普通。ホントに死なれたら困る。遠くに行かれたら困る。たぶん。いや、絶対。



もしかしたら、甘えてるのはワタシの方かな?ワタシの方かもしれない。



風が吹いた。襟元から、ほんのちょっとだけ風が入って、少しだけ気持ちが和らいだような気がした。そしてちょっとだけ冷静になれたような気がする。いや、別に前から冷静だったけどサ!



ただ、やっぱり聞いとこう。ワタシは空気をゆっくりと吸い込み、静かにゆっくりと息をついた。やんわり葉を揺する風と、同じ程度のリズムで。




そして聞いてみた。




「ノキってサ…、どんな女の子好きなの…?」




(続きます!)

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