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猟犬と転移者  作者: タンナファクルー
第三章 指揮者は命を動かす
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第26話 遷移

第26話 遷移


宇野啓介が飛ばなくなったのは、日が落ちてからだった。


開けた場所に出ても、すぐには跳ばない。

足を止める。

地面を見る。


「次、あっち」


宇野が顔を向ける。


「そこじゃない。もう少し奥。木の根、出てるから」


宇野が進路を変える。


飛べそうな場所まで歩く。

少し逸れる。

痕の残りにくい地面を踏む。

それから跳ぶ。


最短ではない。


佐伯真帆が決めていた。


宇野が跳ぶ。


着地。

膝が沈む。

次が遅い。


「こっちだよ」


佐伯が先に歩く。

宇野が続く。


森はもう完全に暗かった。


根。

低い枝。

ぬかるみ。


佐伯には分かる。

それでも速くはならない。


宇野が歩くたび、遅れる。

飛ぶ前に止まる。

飛んだ後にも止まる。


息が荒い。


「ごめん、ちょっとだけ、待って」


佐伯も止まった。

何も言わない。

後ろを見る。


対象:宇野


夜間移動:低速

継続:非効率


「うん。じゃあ、少しだけ。でもあまり余裕はないよ」


宇野がまた歩く。

佐伯が前に出る。


少しだけ木が切れた。


「ここから。斜め左」


宇野が頷く。


跳ぶ。


闇を短く越えて、また森に落ちる。


着地が重い。

次が遅い。


「こっち。足元気をつけてね」


宇野が来る。


枝が肩を打つ。

足がもつれる。

踏み直す。



佐伯が急に足を止めた。


宇野も止まる。


「どうした」


佐伯は答えない。

首だけが少し動く。


「……また殺されちゃった」


宇野が顔を上げる。


「は」


声が掠れた。


「誰」


「石井君と伊東さん」


宇野の足が止まる。


呼吸が一度、浅くなった。


「距離は、ここから歩きで二時間くらい」


宇野が後ろを見る。


暗闇。


「このままだと、夜のうちに追いつかれちゃう」


佐伯の声は変わらなかった。


対象:石井 伊東


状態:死亡。

遅延効果:あり。

判定:不足。


宇野は黙ったままだった。


佐伯は前を向いたまま、少しだけ間を置く。


「こっちに同級生が二人来てる」


宇野が佐伯を見る。


「橋本君と吉岡君。合流する?」


「間に合う?」


「まだ間に合うよ」


間。


「グレッグさんから離れるルートだし」


宇野の息が少し変わる。


宇野は短く息を吸った。


「……合流しよう」


佐伯は頷いた。


「うん。じゃあ、こっち」


すぐに歩き出す。

宇野が追う。


森は、もう底まで暗かった。

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