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猟犬と転移者  作者: タンナファクルー
第三章 指揮者は命を動かす
29/30

第25話 鋸歯

陽は、もう落ちていた。


地面にだけ、わずかに色が残っている。


男は足を止めた。


痕があった。


二人分。


深いものと、浅いもの。

歩幅が揃っていない。

枝の折れ方も荒い。


夜の森に慣れていない。


それでも進んだ。

長くは続かない。


男は前を見た。


木の間。

地形。

風の抜け。


休める場所は限られる。


狭い。

少しだけ開けている。

そういう場所で足が止まる。


遠くない。


男は歩いた。


新しい枝が落ちていた。

まだ湿っている。



対象:森本

状態:生存

判定:想定外。


対象:グレッグ

運動出力:維持。

判定:想定外。


対象:石井 伊東

目的:遅延

予測時間:45分



伊東紗奈は立ち止まった。


少しだけ開けた場所だった。

木の根が少ない。

座れそうな石もある。


「ここにいた方がいいと思う」


石井陸は振り返った。


「まだ見えるだろ」


もう暗かった。


「もう少し行こうぜ。誰かいるかもしれないし」


伊東は何も言わなかった。


石井は歩いた。

伊東もついていく。


木が近い。


枝が肩に触れる。

足元はもう見えなかった。


まだ見えると思っていた。

違った。


暗くなるのが早い。


空は少し残っている。

地面はもうない。


足が見えない。

着地点がわからない。

次の一歩が遠かった。


石井の背中まで、ときどき消える。


さっきの場所の方がましだった。


やっぱり戻ろうよ。


そう言いかけた時だった。


後ろで音がした。


伊東は振り返る。


何も見えない。


葉が一枚、遅れて落ちた。


石井に伝えようと前を向く。


「今」


そこまでだった。


石井の首から剣が出ていた。


喉の下から、後ろへ抜けている。


声は出なかった。


剣が抜けた。


石井が崩れた。

膝から落ちた。

遅れて上半身が倒れた。


その向こうに、男がいた。


目が合った。


伊東は走った。


【ギフト:模倣】

身体能力、技術、ギフトを模倣し使用できる。


石井の能力を使う。


【ギフト:質量変換】


体が軽くなる。


一歩が伸びる。


伸びすぎる。


足が浮く。

地面が遠い。


さらに軽くした。


跳んだ。


高すぎた。


枝にぶつかる。

幹に当たる。

体が弾かれる。


落ちる。


息が詰まった。


土の匂いが近い。

湿っている。


だめだ。

逃げきれない。


伊東は立ち上がる。


男は近い。


見えない。

だが近い。


伊東は枝を拾った。


適度な長さだった。

これなら使える。


【ギフト:質量変換】


細い枝が、手の中で鉄のように重くなる。


男の身体を重ねる。


脚。

肩。

重心。

技術。


男のギフトも使おうとした。


何も起きない。


男が来る。


伊東も出る。


同じ踏み込み。


速さも近い。


枝と剣がぶつかる。


そこで止まった。


押し込まれる。


何で押し返せないのか、伊東には分からなかった。


枝が流れた。

手首が開いた。

胸が前に残る。


体勢が崩れた。


同じはずだった。


男が入る。


剣は右から来た。


肋の下に入った。

深かった。


同じはずなのに。


二の太刀が来る。


首だった。


細い音がした。


枝が手から落ちた。


枝は、ただの枝の軽さを取り戻す。

※活動報告に『登場人物イラスト① 鬼塚美鈴』を掲載しました。

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