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荒廃世界の少年商人〜剣も魔法も使えないので、値付けと信用で世界を立て直す〜  作者:


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4/6

少年商人、第一王子を雇う

ポーションを村に届けて神殿へ戻ると、例の大剣の男が、妙にじっとこちらを見ていた。


座ったまま、しかし視線は私を追い続ける。


「……あの。喋りたいなら喋ればいいのに」


「……話がある」


静かに切り出した男の声は、どこか決意を含んでいた。


「俺は……この国の第一王子だ」


「…………へ?」


一瞬、世界が止まった。


「第一……王子……?」


「そうだ」


「だ、第一王子!?」


想像してたより“だいぶ重い身分”が出てきた。


「裏帳簿を見つけた。王城の金が、どこかへ消えていた。それを調べていたところ――“処理”されそうになった」


「あぁ……(納得)」


この世界の荒れ具合からすれば、王子が粛清されるくらい普通にある。


「逃げ出す途中でダンジョンに落ちた。気づいたら、あの有様だ」


(裏帳簿、権力の腐敗、粛清……お手本みたいな腐った国家の図式……)


「えっと……行く場所、もうないんですか?」


「……ない。味方が誰なのかもわからん。城には戻れない」


(働き口が……ないと)


私は金貨一枚を握り、男をまっすぐ見る。


「じゃあ――金貨一枚で雇われません?」


「…………………………は?」


男は目を見開く。


「だって行く場所がないなら、働けばいいじゃないですか。いま、ここに“人手不足”の商人がいますし」


「……お前は……第一王子を金貨一枚で買おうとしているのか……?」


「“買う”じゃありません。“雇う”です!」


大剣の男は、完全に返事を失っていた。


(まぁ、驚くよね……)


「それに、まずはベッドを作らないと。神殿の床じゃ可哀想だし……」


「……ベッド……?」


「はい! じゃあ行ってきます!」


「どこへ!?」


「ダンジョンです!!」


―――


村人はもちろん叫んだ。


「坊やーーーッ!? まだ行くのか!? 今日二回目だぞ!?」


「草取りに行くだけですー!」


走ってダンジョンへ向かう。


今日は薬草は採らない。

むしろ――


(薬草を育てる“畑”を作るために、全部抜かなきゃ)


雑草を刈る。

毒草を刈る。

ただの草を刈る。


薬草以外をきれいに片付けていく。


「これで光と魔力の流れが整って……薬草が育ちやすくなるはず!」


前の世界で学んだ植物知識と、薬師さんの話を合わせて考えた“簡易ダンジョン農法”。


(ダンジョンは魔力が濃い。つまり農地としては最高!)


―――


草を抱えて神殿に戻ると、男は壁にもたれてこちらを見ていた。


「……帰ったか」


「はい! 雑草刈りは順調です!」


「雑草……」


男は自分でも理解できていない顔をしている。


「少しは寝てました? 安静って言いましたよね?」


「……ああ。だいぶ回復している」


本当に傷はほとんど塞がっていた。


「じゃあ――薬草、育てましょう!」


「育てる……?」


「この世界だと、薬草が“採れる場所に依存”していますよね。だから絶対に価格が安定しないんです」


私は雑草を処分した袋を横に置く。


「だから育てます。薬草の安定供給の第一歩です!」


男はしばらく沈黙していたが、やがて――


「……お前、本当に十歳なのか?」


「はい! 十歳の商人です!」


この世界の改革が、また一つ始まった。

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