表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
荒廃世界の少年商人〜剣も魔法も使えないので、値付けと信用で世界を立て直す〜  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/12

少年商人、最初の“救助”と“誤解”

男を見つけたところまでは良かった。

問題は――


「……お、重い……!」


私は全力で男を背負いながら、よろよろと数歩だけ進んだ。


足が震え、膝が笑い、息がつまる。


十歳の身体で大剣持ちの大男を背負うなんて、最初から無茶だった。


「……やっぱり……む、無理……!」


すると背中で男が低く言った。


「……もういい。立てる」


「え?」


次の瞬間、男はふらつきながらもゆっくりと立ち上がった。


(動けるんだ……!)


そう思った、その時。


通路の奥で、ぷるん、と何かが揺れた。


「……スライム?」


気付くのが一瞬遅れた。


スライムは地面を這いながら進み、触れた草が――

じゅう、と溶けて消えた。


「ひぇ!!」


(この世界のスライム、怖すぎる!!)


しかし男は迷いなく走り出した。


「下がってろ」


傷だらけの身体なのに、動きは獣のように鋭い。


大剣が一閃。


スライムは一瞬で二つに割れ、霧のように消えた。


残されたのは――青白く輝く、小さな石。


「魔石だ。そこそこの値で売れる」


男はそれを拾い、当然のように私へ放ってきた。


「えっ、ちょっ……!」


慌てて受け止めると、男は低く言った。


「待ってろ。しばらく魔石を狩る」


「えぇ……!?」


(いやいやいやいや、傷だらけで何言ってるの!?)


「だ、ダメです! 取り合えずダンジョンを出ましょうよ!」


私は薬草を片手に、男の腕をぐいぐい引っ張った。


「まだ動ける」


「動けてません!」


「……む」


強い。とても強い。

でも、私は手を離さなかった。


「とにかく今は治療優先です!」


その辺に生えていた薬草を掴み、ダンジョンの出口へ引っ張るように歩く。


男は呆れたように息を吐き、それでもついてきた。


(……素直な人なのかな?)


崩れた神殿に戻ると、私は拾ってきた布を床に敷き、男を寝かせた。


「しばらくは要安静ですからね?」


「ガキに安静と言われるとはな……」


「言いますよ。だって傷だらけでしょう?」


男は何も言い返せなかった。

むしろその沈黙が正直だった。


―――


一息ついて、私は薬草を並べた。


・品質のいいもの

・効き目が薄いもの

・ただの草



薬師さん直伝の仕分けだ。


(この世界の人たち……多分、質とか知らないまま取引してる)


良品は男の治療用に。

雑な薬草だけを袋に詰める。


「じゃあちょっと行ってきます!」


「……お前、そんなに働く年齢か?」


「働きたいんです!」


村に戻り、質の悪い薬草をそっと渡した。


「これ……よかったら使ってください」


「う、うぅ……! あ、ありが……とう……!」


村人は泣いた。


いや、泣かなくても……雑草レベルですよ……?


「こ、こんな高級品を……タダで……!」


(高級じゃ……ないんだけど……!)


「これで……助かる……助かるよぉ……!」


泣き崩れる村人たちを見て、私は固まる。


(どれだけ世界が荒れてるの……? せめて“本物の薬草の値段”くらい、何とかしなきゃ)


その瞬間、私の胸の奥に“商人としての火”が静かに灯った。


「……よし。まずはこの世界の“物価と供給”を調べなきゃ」


金貨一枚と、少しの薬草と、輝く魔石。

そして傷だらけの謎の大剣使い。


(情報、仲間、資本……全部そろえていけばいい)


十歳でも、商人は商人だ。


私はゆっくりと拳を握った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ