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荒廃世界の少年商人〜剣も魔法も使えないので、値付けと信用で世界を立て直す〜  作者:


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16/43

荒れた商業都市と、ギルドの闇

国境を越えて十数日。

緑はいくらか広がったけれど、

遠くに見える灰色の街並みは、

どこか沈んだ空気をまとっていた。


「……ここが、一番近い“商業都市”だな」

「うーん……なんだか元気がないですね」


馬車を進めていくと、街の入り口に大きな看板があった。


“税金を滞納した者は処罰する”


思わず私は目を丸くした。


(……こんなに大きく書く必要ある?)


街に入ると、その意味がすぐにわかった。


通りには──


痩せこけた大人が転がり、力なく座り込む子どもたち。


その周辺には税金徴収の兵が睨みを利かせている。


そんな光景が広がっていた。


「……この街、食べ物がないんだな」


リオの声は低かった。


「税金が高すぎるんですよね?」

「多分な。町を見ればわかる」


商店も半分以上が閉まっている。

開いている店も、値段は法外。

売る側も買う側も滅びかけている。


(これじゃあ商業都市じゃなくて……“餓えの街”だよ……)


―――


「取りあえず、ギルドカード……作りましょう!」


「そうだな。支払いシステムが使えないと、土地ファンドが動かない」


ギルドの建物は外観こそ立派だが、人の出入りはやけに少ない。


扉を押すと、受付の女性がこちらを見て小さく会釈した。


「あの、ギルドカードを作りたいんですが……」


「……はい。申請ですね。では、こちらの用紙に──」


その時。


奥の部屋から怒声が響いた。


「おい受付!あの新人のマイレージ、今月も全部“徴収”しとけ!」


「!?!?」


私は思わずペンを落としそうになった。


受付の女性は一瞬だけ震え、すぐに顔を伏せた。


「……申し訳ありません。続けてください……」


(え、今なんかすごくヤバいこと言わなかった!?)


リオが眉をひそめ、受付に問うた。


「今のは……どういう意味だ?」


「……気にしないでください。申請を続けますので──」


「気にするなと言われてもな」


私も黙っていられなかった。


「あの、“新人のマイレージを徴収”って……どういう?」


受付は困ったように俯いた。


「……本来、マイレージは“本人の許可”がなければ動かせません。ですが……ここでは新人のマイレージを“ギルド上層部”が勝手に……」


「勝手に!?」


(ギルドカードって……そんな悪用の仕方できるの!?)


「皆さんは抗議しないんですか?」


「できません。抗議した者は……仕事を回されなくなるので……」


街の荒れ方。

ギルドの雰囲気。

謎の徴収。


(これ、完全に“内部の腐敗”だ……)


「受付さん、教えてください。新人さんの“誓約書”ってありますか?」


「……あります。皆さん、入会時に強制的に……」


「内容は?」


「“ギルドの管理のもとマイレージの調整を任せる”……という一文が入っています」


「それ、完全にブラック契約じゃないですか!!」


リオも険しい顔で頷いた。


「その内容なら……好き放題“搾取”できてしまうな」


「……はい」


(まずい……この街、想像以上に深刻だ)


「おい受付ぇぇ!! さっきの子どもどこに行った!?」


ギルドの奥から怒鳴り声がして、先ほどの男がこちらへ走ってきた。


「そいつだな!? カード申請なんてさせるな! うちの利益が減るだろうが!!」


(うわ……来た……)


私はゆっくり前に出た。


「あなたたち、新人のマイレージを勝手に徴収してますよね?」


「なんだガキィ!! 外の人間がでしゃばるんじゃねぇ!!」


「不正ですよ? 犯罪ですよ?」


「うるせぇ!!」


男が殴りかかろうとした瞬間、


「はっ!」


リオの足払いが閃き、男は地面に叩きつけられた。


「ぐべっ!!」


受付も通行人も固まった。


「……カイ。こいつ、どうする?」


「証拠を出してもらいましょう」


私は受付の女性へ微笑んだ。


「誓約書、見せてもらえますか?」


「……はい!」


契約書にはしっかり、

“ギルドはマイレージを調整する権利を持つ”

などと書かれていた。


(こんなの……完全に詐欺だよ)


そして、受付が涙を流しながら言った。


「ずっと……おかしいと思っていたんです。でも……誰も何も言えなくて……新人たちがどんどん搾り取られていって……」


「大丈夫です。仕組みを変えましょう」


「え……?」


「ギルドカードを作ったら、“正しいファンドの仕組み”を広めます。誰にも搾取されない仕組みです」


受付は微かに笑った。


「……お願いします……!」


―――


不正の責任者はリオににらまれるだけで青ざめ、一切反抗しなかった。


受付の女性は震える手で、新品のギルドカードを差し出してくる。


「こちらが……ギルドカードです。本来の“正しい機能”でお使いください」


「もちろんです!」


カードを受け取った瞬間、私は心の中でガッツポーズをした。


(これでファンドの完全自動化ができる! そして──この街の搾取構造も、変えられる!)


リオが隣で笑った。


「カイ、また一つ世界を変えたな」


「えへへ。まだまだこれからですよ!」


そして私たちはギルドを後にした。


灰色の街に、少しだけ希望の風が吹いた気がした。

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