第6話 討伐したわよ? 『ロゼ』が
嫌がるロゼを紐で操り人形にして派手に旅立たせたのは楽しかった。
見た目は良いものね。お口はチャックならぬ透明な"紐"で閉じてたけど。
王都を出てからはいつも通り2人で旅をして大魔王の城にやって来た。
かつて召喚されたときはこの場所に辿り着くこともなく終わってしまったのだけど、あの時もここを目指して旅することになっていたのかもしれないと思うと、少しだけ感慨深い。
もしそうなっていたら、私は勇者として祭り上げられ、今みたいな気楽な生活はできなかっただろうと思うので、今の方が良いのは間違いないが。
道中には町や村がありそこでの出会いを楽しみながらも一直線に進んできた。
いつ大魔王がまた王都を襲うかわからないからね。
あとは、小さな集落だと思って入り込んだらオークが占拠していて人間たちを捕らえていたりした。
もちろんオークは殲滅して焼肉にして、人間たちは『ロゼ』が助けた。
そう伝えた。
「なぁ……」
「ん?」
いよいよ大魔王の城を目前にして、ロゼが話しかけてきた。
何か話したいの?
って、まさか……。
「やめてよそういうの。全部フラグって言って、あなたが死ぬことになるじゃない」
「何の話だよ?」
この概念を異世界の人にどう伝えたらいいのかはわからない。
とりあえず王子のことを見てって言っても何も伝わらなかった。
「どうして俺に功績をなすりつけるんだ?」
「……気付いていたの?」
「当たり前だ!」
まさか気付かれていたとは。
話してもフラグにならないけどちょっと恥ずかしい。異世界で1人寂しく生きる私を楽しませてくれたお礼なんだけど……って、喋らないわよ?
「そんなのどうでもいいじゃない」
「えぇ?」
「行くわよ!」
「おぃ、ちょっと!」
私は複数の金属化した"紐"を城の入り口に向かって発射する。
ドッカーーーーン!!!!!
それらは扉を突き破って、城壁を突き崩す。
ドッカーーーーン!!!!!
人の城にやったんだから、自分の城がやられても仕方ないわよね?
ドッカーーーーン!!!!!
『ナッ、ナンダ!?』
『マサカ!? 大魔王サマノオ城ガ崩レタダト!?』
『誰ダ!?』
慌てるモンスターたち。
こいつらは"紐"を鞭のように振り回して殴り飛ばしたら即全滅した。
それからは一方的な破壊が実現する。
鋼の巨大な"紐"がまるで攻城兵器のように城を破壊。
驚いて出てきたモンスターは鞭のような"紐"で殴りつけ、槍や針のように大小様々なサイズに調整した"紐"で突き殺し続けた。
さながらモンスターにとっての地獄。
でも覚悟してね?
因果応報だから。
『貴様!? 何ヲシテイルノダ!』
ようやく表れた大魔王。
その姿は……とかどうでもいいわよね。
思い知りなさい。
禁呪によって呼び出された勇者の力を。
『グアァァァァァアアァァァァアアアアア』
数億本の"紐"で……これ以上はお食事中の方がいたらいけないので割愛するが、無事大魔王は撃破しました。
ロゼが。
「聞いたかよ」
「あぁ、聞いた。ロゼって凄いんだな」
「俺、見たことあるけど、気さくな人だったよ?」
「私も! 楽しい人だった」
「ちょっと軽いとこもあるけど、かっこいいしね」
「それがこんなに強いだなんて」
「すっげーよな!」
「ほら、こっち見た!」
「ロゼ様ーーーー!!!!」
凱旋したら凄いことになっていた。
やったねロゼ。
本人はその様子を見てピクピクしているが、実際に大量のモンスターと戦ったことでロゼは強くなっているし問題はない。
工兵たちの魔法によって急速に復旧した王城に到着すると、さらなる大観衆に迎えられた。
その観衆の中に聖女やそのパーティもいて悔しそうな顔をしているが、私のロゼは凄いのよ。思い知ったかしら? ってドヤ顔を向けておいた。
「ありがとうございました、ロゼ殿。そしてセリナ様」
これだけ『ロゼ』を強調したのに勘弁してほしいのだけど、一応私は仲間として付き従ったことは既に隠しようがない事実として知られている。
けど、どうせ『ヒモ』だろうと思って貰えてるはず。これまでの私の行いの成果ね。
だから王子にもそう思ってもらいたいんだけど、彼は何やら覚悟を決めたような顔をしている。
自分が大魔王討伐に送り出したとか責任を感じていたんだろうか?
お詫びに魔道具や美味しいものをくれるなら貰うけど?
儀式的な歓待は滞りなく終わり、ロゼには莫大な報酬が与えられた。
ついでに私も。
これで数年はぐだぐだできると思ってわくわくしていると、近寄ってきた王子に話しかけられた。
「本当に感謝しています。それでその……セリナ様」
「はい?」
えっと、なんでまだ話しかけてくるの?
見ない間に表情が凛々しくなったなとは思うけども……。
「過去に王国は禁呪を使ってあなたを呼び出すという酷い悪事を行いました」
「「「「「!?!?」」」」」
それは秘められたこと。
国王……いや、前国王によるもの。
でも、あくまでも噂でしかなくて、真実を知らなかったものにとっては衝撃の事実だったようだ。
「呼び出されたのに、魔王は倒され、帰る術も失った。全て王国の責です」
王子は言葉を続ける。
ようやく儀式が終わったので『疲れちゃった~帰って寝りゅ~』とか言いたいけど、そんな雰囲気じゃなくなってしまった。
それに、まぁ真面目な表情をした王子の顔は眼福ではある。
イデアが狙うだけのことはある。
「にもかかわらず、次いで現れた新たな災厄である大魔王の討伐をなしてくださった」
えっと、それはだから『ロゼ』が……。
「私はここにあなたへの感謝と敬意を表し、改めて求婚する。どうかお受け願いたい」
なに言っちゃってんの、この人?
やめて……そんなことをされたら私が平和に王都ライフを楽しめなくなるじゃない!?
頭を下げるのもやめてほしい。
周囲を見渡すと、固唾を飲んで私たちの様子を見ている。
ちょっ、本当にやめて。
なんでロゼすらにやにやしてるのよ!?
ちょっとは焦りなさいよ!
あなたの"ヒモ"が取られちゃうわよ!?
でも、誰も助けてくれない。
王子も頭をあげてくれない。
こんなの、私の答えは決まっているのに。
イデアが人でも殺しそうな勢いで睨んできている……のには、一瞬ドヤ顔を返しておいたけど。
まぁ、仕方ないわよね。
また追っ手とか付けられたらやだけど、その時はその時。
別の国にでも行けばいっか。
「嫌です」
「「「「「「「「「はっ?」」」」」」」」」
「は?」
なぜそんなに驚くのかわからないけど、王子と結婚なんて無理よ。
そもそも名前も知らないし。
ということで私はドロンした。




