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第5話 大破壊

 私とロゼとマーガスは慌てて王城に向かった。

 もう王城ではなく、王城跡かもしれないけど。


「陛下!? 殿下!? おい! 誰か!?」


 マーガスは私の監視に復帰していたが、この窮地に身体を震わせながら同僚を探している。


「これはひどいな~。ここまで念入りに壊すなんてさぁ」


 ロゼは相変わらずロゼで適当なチャラい男だった。

 まぁこれが彼の良いところだけど、ちょっと空気は読んでほしい。



 倒壊した王城は壊滅状態で、王都に展開していた騎士団や警備兵たちによって救助活動が始まっていた。

 まだ国王や王子は見つかっていないらしい。


 一方の大魔王は、王城が崩れていく様子を見てから満足したのか帰っていったらしい。

 王都に被害がなくて良かった。


 まぁ、不可視の"紐"を張り巡らせていたから何もないことはわかっていたけど。




「あぁ……マーガスか……?」

「エルド殿下!? ご無事で!? 左側が潰されたのですね? お待ちください。今助けます! 回復はその後で」

「陛下が……」

「今は御身のことだけをお考え下さい!」

 

 どうやら王子が見つかったらしい。

 口調は弱々しいが、意識ははっきりしているようだ。


 すぐに救助されたので、回復魔法をかける。

 騎士団たちはまだ救助活動を続けている。

 代わりに見知った人を助けるくらい、私でもやるわよ?

 可能ならロゼの名前で。



「王子、お加減は?」

「ありがとう、セリナ……」

「無理されませんように。大ケガでしたので」

「ありがとう」


 涙を流す王子。

 それもそうだ。

 なにせ左半身は押しつぶされて酷い状態だった。

 ほぼ瀕死。


 あれでよく声を出せたなと感動するレベルだった。


「陛下は恐らくは無理でしょう。私の左側に立っていましたので」

「やはり……」


 絶句するマーガス。

 助けた時から予想はしていたでしょうけど、実際に聞くとショック……なのかしら?

 あの豚よ?


 まぁ、その辺りは私にはわからないでしょうね。




「大魔王は去りました。でも、また来るでしょう。やつは破壊を楽しんでいる」


 涙を拭いてそのように告げる王子の顔は今まで見た中で一番凛々しいものだった。

 父親をなくし、自分が後を継ぐことを意識しているのかもしれませんね。


「殿下、避難しますか?」


 そこに年配の騎士が声をかける。

 その表情は厳しい。

 これだけの被害だから当然だと思うけども。


「いや、救助を。工兵も導入して可能な限りお願いしたい」

「はい」

 

 その指示は想定と真逆。

 にもかかわらず、老騎士の表情は明るくなった。


 きっと助けたいんだろうな。

 危険があったとしても。


 良い騎士だ。

 素直にそう思う。


 この国の中枢に全く良い思い出はないが、今後はよくなるかもしれないなとは思わせるものだった。


 だが、問題はある。


「大魔王がまた攻めてくるかもしれません」

「マーガス! 貴様、怖気づいたのか? まだ生きているかもしれない仲間を見捨てるのか!?」


 老騎士が怒鳴る。

 が、私もマーガスに同意だ。

 救助していて次で全滅しました、では話にならない。


 彼が言っているのはどう対処するのかという方針なんだろう。

 そして悪い予感しかしない。


 私、もっと早く離れておくべきだったよね?


 

 

「セリナ様……お願いはできないでしょうか……?」

「Oh……」


 予想通りだった。

 しかしここで折れるわけにはいかない。


 私は改めて勇者になんかならない。


 捨てたのはあなたたち。

 私じゃない。


 私はのんびりこの世界なりのシティライフを楽しむと決めたんだから。


「なんでここでエセ勇者に!?」


 そこで声を上げたのは1人の女性……。


 久しぶりに会ったわね……。


「イデア殿。今はそんなことを言ってる場合では!?」

「魔王は私たちが倒したの。こいつは役立たずよ?」

「そうだ、前回は失敗したが、今度こそは!」


 聖女イデアと、その仲間である剣士や戦士たちだった。

 威勢よく言っているが、見るからに満身創痍に見えるけど大丈夫?


 まぁ、こんなこともあろうかと、私には切り札があるから問題ないけどね。



「殿下。お断りします。聖女様が仰るように、私には荷が重いのです」

「……そうですか……」


 がっくりと項垂れる王子。

 でも、我慢してくださいね。


 あなたの責任でもあるのですから。



「ふん。負け犬ね。こんなところで臆病風に吹かれるなんて」


 断っても文句を言っている聖女。

 ただ文句を言いたいだけでしょうね。本当に仕方がない人。


 ふと見るとマーガスが怒り心頭な顔をしているけど、それを目線で抑える。


 大丈夫。


 私は私で考えがある。



 なにせ、大魔王が次にやって来た時。

 その時にはもっと大きな被害が出るかもしれない。

 次は王都も攻撃してくるかもしれない。


 それは避けたい。


 私はこの王都を気に入っているのだから。


 でも、私が身を挺して派手に大魔王と戦うつもりなんてないのよ。

 せっかく"紐"として目立たない生活を手に入れているのだから。



「殿下。私はお断りしますが、勇敢な冒険者であるロゼがお話を受けるでしょう」

「えっ?」

「へっ?」

「誰よそれ!?」


 私の言葉に反応したのは上から順番に王子、ロゼ、聖女だ。

 マーガスは即笑い顔に変わっている。



「なんと。王都で名声を高め称賛を集めているロゼ殿が行ってくれるなら、それは心強いな」

「ちょっ、待てよてめぇっ、って、俺ぇ!?」


 そしてマーガスはすぐに私の意図を理解して乗っかってくれた。

 悪い顔をしている。


 もちろん、私はロゼが行くからこっそり行くわよ?

 こうすれば私は目立たない。

 あとはロゼとして大魔王を倒せばいいだけね。




 こう見えても、私、ちょっと怒ってるのよ。


 私の領域に土足で入って来て好き勝手やっていった大魔王に。


 国王が死んだことにはなんの痛痒も感じないけど、犠牲者は他にもいる。


 だから……お仕置きが必要よね?

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