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知っているよ。

作者: 小雨川蛙

戦地で兵士達が神に祈った。

どうか明日も生きていられるように、と。


野戦病院で医者が神に祈った。

一人でも命を救えるように、と。


戦場と化した町の中、逃げ惑う市民が神に祈った。

せめて子供だけでも助けてくれ、と。


戦争が起きた国々で人々が神に祈った。

この戦争を早く終えてくれ、と。



遥か遠い場所で神は答えた。


「聞こえているよ」


神はそう言って人間に荒らされた世界を見つめて呟いた。


「知っているよ。助けてほしいんだろ。だけど、助けてやらない。誰一人」



既に神は人間を見限っていることなど知りもせず、今日も祈りは続いている。

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