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エンゲブラ的短編集

シナリオ破りのエルフリーデ

作者: エルフリーデ

「―― そのご決断で、いったい誰が救われるのでしょうか?」


よくある婚約破棄の風景。

王太子から公爵令嬢に向けられた。



異世界転生である。それも「小説の中」の世界への。

前世で妹に無理やり勧められて読んだ「支離滅裂なラノベ」小説。そんな物語の中に、なぜか転生……いったいどんな冗談なの?


この世界が、あの作品の中だと気づくのに、かなりの時間がかかった。第一王子との婚約の話と、その時初めて聞かされた「この国の現状」。それでようやく思い出した。


そして、予定どおり<魅了>のスキルを持った男爵令嬢からのアプローチに、まんまと転ぶ第一王子。その女が<帝国のスパイ>とも知らずに……。


―― この後、私は婚約破棄の代替として「小国の王子」の元へと、嫁に出される。その後、私が「聖女」であることが判明し、小国は繁栄。代わりにこの国は、男爵令嬢の手引きで、まんまと帝国に蹂躙され、「滅亡」というシナリオ。


シナリオ?

ふざけるのも、いい加減にして!


転生して十八年。

私にも大事な、かけがえのない仲間たちが、たくさんできた。この王国内で! 私の数々の発明や改革に本気で喜び、感謝を伝えてくれた領民たちも、たくさんいる。そんな彼らを棄てて、私だけ暢気(のんき)に小国でハッピーエンド? バカも休み休みに言いなさい、このおバカ原作者!


私は毎日、学園の裏庭で<未来>のむなしさを嘆いて、泣いた。そんな時、現れたのが、彼<オスカー>だった。



「―― エルフリーデよ、お前には私の代わりに小国の王子ア……」


「お待ちください、兄上!であれば、この(わたくし)オスカーめに、エルフリーデ嬢をお譲りいただけませぬか」―― 第二王子オスカーによる名乗り。


「いや、まぁ、それは……かまわぬが……エルフリーデは、その……少々面倒くさい女だぞ?」―― 王太子は、学業優秀、品行方正()な私に対し、強いコンプレックスを抱いていた。そこを男爵令嬢に付け込まれ、魅了もほぼ必要とせず、あっさりと篭絡(ろうらく)されたのであった(怒)。


「兄上のお気持ち、ご理解いたします。しかし、公爵家との繋がりは我が王家としても非常に重要。小国の王子の元へなどは、さすがに……」


「……あい分かった。お前の好きにするが良い。たしかに取るに足りぬ小国へ送るより、王家との繋がりを強化した方が良いに決まっておる。だが、私はお前のことを思い、その話を提案出来なかったのだが……そうだな、国を思ってのお前の判断。褒めてつかわす」


ニコリと(うなず)く、現王と王妃。

歯ぎしりしながら、その光景を見つめる帝国の女スパイ。


―― ここからは、シナリオにない「本当の第二の人生」の始まりだ。


私とオスカーはこの後、王太子を(おとしい)れ、廃嫡(はいちゃく)へと導くための準備を裏で着々と進めている。勝つか負けるか、勝敗は蓋を開けるまで分からない。だけど、これから私は「頭がお花畑な原作者」が産み落とした「記号としてしか扱われない人々」を救うため、絶対に負けられない戦いに挑むんだ。


幸いにもオスカーは兄に似ず、「非常に優秀な」モブの王子だった。原作では「名前すら付けられなかった」記号としての第二王子だった彼。そんな彼と共に、これからこの世界を描き直す。しかも、オスカーは超イケメン。かけがえのない人々のためとはいえ、こんなにワクワクすることも他にないよね♪


挿絵(By みてみん)


エルフリーデ先生とオスカーによる今後の作品の展開に、乞うご期待だからね!


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― 新着の感想 ―
帝国のスパイとは言え、高々男爵令嬢に良いように引っ掻き回され結局亡国を止められなかった『非常に優秀』な王子()とはいったい…… 原作では魅了に負けたのか?
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