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3話 コンビニに現れた王女

ピンクな高そうなドレスに節々のアクセサリーが握りこぶしレベルで大きい現実世界なら逆に興味本位でコンビニを利用しそうな部類の生き物だった。


そんな見るからに縁のなさそうな存在が本当に縁がなさ過ぎて人間と認識できていないのかこの真逆に位置するであろう婆は無視してタバコ片手にネットサーフィンをしている。


「あの、この人は?」

「あん?こいつは客じゃないよ。ただの依頼人さ。物を買いたいんじゃなくて相談したいって言いだすからそんなもん行政に行きなって言ったら話が通じないもんでさ。仕方ねえからお前が来るのを待ってたのだ。お前、こういうめんどいの好きだろ?」


それはお前がいつも癇癪起こして俺が対応しなきゃいけないからだろ。

という喧嘩もしてられないので、とりあえずこのお姫様の要望とやらを聞くことにする。


「どうかされましたか?というかそもそもこの街自体あまり来られないですよね」

「え、なんでわかるんですか?」

「その、この街って見るからにあなたみたいな生活水準高そうな人暮らしていないですし」

「それはその……すみませんでした」


頭を急に下げだす姫。思わずそれを制してしまう。


「いきなりどうしたんですか!」

「申し遅れましたね。私はこの国マルボーロの第三王女ネオネオと申します、その身分として今一度こうして頭を下げさせてください」


再度頭を下げ始める王女様。それをさらにレシーブでやさしく頭を上げさせる。


「なにしてるんですか、じゃあ尚のことやめてください、誰かに見られたらそれこそ不敬だなんだってなるじゃないですか」

「きっとならないですよ。この国の国民は私たちの今の王政に不満を持っているはずですから」

「もしかして」

「はい、昔はここも治安はとても良かったんです。でも今の父の代になってからだんだん悪くなっていってしまって最近では暴徒の数もかなり増えてきてしまっているのです。そんあ状況も見ているといてもたってもいられなくて私だけでも国民の声をより深く知らなければと」


姫は泣きそうな声でそう語る。なんだかとんでもないとこに転移してきてしまったものである。


「ふん、なんだよ。お前自身が行政なのかよ。ってかさ、あんた何もわかっちゃいないね」

「ば、紫さん」


いきなり割って入ってきた紫は椅子から腰を上げるとネオネオの目をじっと見た。婆は腰が曲がり切っているのもあるが、姫も170はありそうな高身長なため、結構な身長差が生まれてしまう。


「そ、それはどういう意味でしょう。なにか国民の声として聞かせて頂けますか」

「はん、あたしゃ国民でもなんでもないから知ったこっちゃないけどさ。まずあんた何国民を見下ろしてんだい。目線を合わせるところからだろうがよ」

「は、はい!すみません!」


ネオネオは即座に屈み、紫と同じ目線に合わせる。


「それとよ、分かりたいって言っときながらなんだいその装飾品たちは。育ちの環境で気付けないもんはあるかも知れないけどね。そんな大層なダイヤぶら下げてる人間に腹のうち話そうってなるかね。わしならいくら話しかけてきても宝石が喋ってるくらいにしか思えないね」


その言葉にネオネオは返す言葉がないといった感じだった。婆の論調は基本自分勝手で相手のことを尊重しないけど今回に関しては半分くらいは正しい部分もあったように感じた。


「だからよ、まずはその宝石を外してみるとっから始めてみたらどうだい。なんならわしが預かってやろうかい」

「ちょっと待った」


俺は慌てて婆と王女の間に割って入った、少しでも感心した俺が馬鹿だった。


「なに王族から金品巻き上げようとしてんですか」

「いや、これで渡したら少しは国民のこと信じてる証明になんだろうがよ」

「本音は?」

「金品巻き上げて今までいい思いした報いを受けさせたい」

「ほらみろ」

「なんだよ!わしゃ今月スロで負けてお金ピンチなんだよ!つべこべ言ってられねえんだ!」


全く。暫定今最も信用できるのがこの人間しかいないことがとても心細い。

とにもかくにも。せっかく天上人が下々のことを分かりたいと降りてきてくださったんだ。そろそろ助けてあげないとな。


「まあ俺も国民じゃないんで謝罪は別日に時間かけて回ってったらいいんじゃないですか。で、本筋はなんです?なんでここへ?」

「実はこの街に来てすぐに心優しいゴブリンに会いまして、ここならある程度人も集まるし、いろいろ解決してもらえると聞いたんです」

「はあ……」


よりにもよってあのゴブリンに当たるとは。俺たちも厄介ごとに絡まれやすい星のもとに生まれてるらしい。


「でもここって見た感じ見たことないものがたくさん並んでいるし、変わった明るさのランプを使っておられて。ここにあるものをあなた達は使いこなせるということですよね」

「まあある程度は」

「あなた達は国民ではないみたいですが、この街のことをよくわかっているようですし、この国をなんとかできそうな気がするんです!」

「そりゃまたえらい安直なことを言いますね……もう少し時間をかけて今回は査察だけして上で煮詰めるとかした方が」


姫の安直さはもちろんだがこれ以上厄介ごとに巻き込まれたくないし、なんなら事がでかすぎる。こちとらどちらかといえば社会的な責任がない側のフリーターなんだぞ。

なんとしてもこの話を差し戻そうとしたかったがこれまた奴によってあらぬ方向に話が向いてしまう。


「……なんですかそのサインは」


婆は手で金のサインをしてにやっと笑った。どうやら悪知恵を思いついてしまったらしい。


「あんた、一国の王女だろ?そんな人がしかも国の行政改革を依頼するんだ。それなりの金額の覚悟はできてんだろうね。あとね、コンビニってのは基本24時間経営なんだよ、わしとこいつがいない間は閉めないといけない。その分の損失分も補填してもらわなきゃねえ」

「いいですわ、いくらでもお払い致します」

「ふふん、言ったね。決まりだ。じゃあさっそくだがお前さんの根城に案内してもらおうか。実際にトップと話した方が早い」


婆の目が見たことないほどきらりと光った。人生の大逆転が見えたものの貪欲さは計り知れない。

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