表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~  作者: パンダプリン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

554/590

第554話 弱者の戦い方

「……見つからないわね」


「ええ、やはりこれまでのモンスターたちと違い、身を隠す能力が格段に高いようです」


 それよりも、危機察知能力のほうかしら。

 こちらが近づく前に逃げる力が、あまりにも高すぎる。

 へーロスが、遠距離から広範囲をいっせいに攻撃したがる気持ちもわかるもの。


「アタシも、街一つくらいの範囲の魔力攻撃しようかしら……」


「テ、テンユウ様! おやめください!」


 やらないわよ。冗談じゃないの、失礼ね。

 でも、本気でやると思われているくらいには、アタシもうんざりしているってことね。


「ったく、どうせここにもモンスターなんかいやしない……」


 街の周辺を歩いていると、そこにはいくつもの死体があった。

 住民が犠牲者になったのかと思い、すぐに従者たちよりも先に死体に駆け寄る。

 あの子たちに、犠牲者の姿を見せたくない。

 ……でも、とんだ勘違いみたいね。


「……コボルトね」


「テンユウ様。それって……」


「ええ。アタシたちが追っているモンスターと、特徴が一致するわね」


「つまり、特殊個体モンスターですよね。……なんで、こんなところで死んでいるのでしょうか?」


「……何かに襲われている?」


 体の傷を見る限り、戦闘の末に息絶えたような死体ね。

 もしかして、アタシたち以外の誰かが戦ってくれたのかしら?


「とりあえず、街の人たちに話を聞きましょ。何か目撃しているかもしれないわ」


    ◇


 そうして行った聞き込みの結果、残念ながら目撃者は見つからなかった。


「残念ですね……。まさか、ここで暮らす人たちも何も見ていないなんて」


「情報はゼロかあ……。なんか、釈然としないわね」


 レンシャがごちるけれど、その気持ちも理解できる。

 ここまで追っていたモンスターが、急に死体で発見されたのだもの。

 消化不良というか、なんだか気持ち悪い結末よね。


「情報ならあるわよ」


 でも、完全に情報がないというわけでもない。

 アタシの言葉に、レンシャだけでなくレイライもスイリョウも耳を傾けた。


「街の人たちが知らないということは、少なくとも街の自警団じゃない。それに、派遣された騎士や兵士や導師でもない。当然、雇った冒険者でもないわね」


「ということは、誰にも知られずにひょっこりと現れた強者が、コボルトたちを全滅させたってことですか?」


「そう考えるしかないわね。誰かしら……。勇者なら街の者に話は通す。兵士たちも冒険者も同じ。ふらっと現れてモンスターを倒して説明もなく去っていく……」


 リズワンあたりならやりそうだけど、さすがに住民たちに話くらい通すでしょうし……。

 ルフみたいな武芸者かしら? それともダンテみたいな荒くれ者? あの手の連中なら、ふらっと立ち寄ってモンスターを倒して、そのまま去っていくこともしそうだし。


「そうなると、今回はたまたまモンスターが倒されただけで、これで問題が解決するなんて考えるべきじゃないですね」


「ええ。今回は運が良かったくらいに考えておくのがいいわ。それでもここの問題は解決した。次のモンスターを探すわよ。まだまだ、被害にあっている村も街も多いんだから」


 腑に落ちないけれどそうするしかない。

 願わくば、この現場を作った者が、他のモンスターも倒してほしいものだけど。

 さすがにそれは、虫が良すぎるからね。


    ◇


「へーロス様」


「ええ。わかっているわ」


 仲間に言われるまでもなく、血の匂いは鼻腔に届いている。

 それも、人類の血の匂いじゃなくて、モンスターの血の匂い……。


「私たちが探していたモンスター。ってことなんでしょうね」


「戦闘の痕跡もあります。返り討ちにでもあったのでしょうか?」


「さあ、どうかしら」


 それで返り討ちにされるようなモンスターだったというの?

 このモンスターたちの厄介なところは、自分と相手の力量差を見極めて、勝てる相手を襲って、勝てない相手からは逃げるところよね?

 そうやすやすとやられるとは思えない。

 でも、現実はこれ。いったい誰が……。


「考えてもしょうがないわ。ここは解決した。次に行くわよ」


「はい!」


 疑問は残るけれど、そんなことを考えている余裕もない。

 私たちは、まだまだ相手にしないといけないモンスターがいるのだから、そういう謎解きはテンユウにでも任せればいい。


    ◇


「さすがは勇者様です!」


「おかげで村は救われました!」


「や、やめてよ。アタシたちの手柄じゃないわ」


 そう言っても謙虚だなんだとさらに持て囃される。

 ……勘弁してほしいわねえ。謙虚だなんてとんでもない。単なる事実を述べているだけなのに。


「各地で次々とモンスターが倒されていますね」


「ええ、どうやら流浪の強者は、モンスターを狩ってくれているみたい」


 誰? うちだけじゃなくて、リックもイドもオルナスもへーロスも、みんな同じような状況だと報告してくれた。

 じゃあ、誰がそんなことしているっていうの?


「……人類のために動いてくれている誰かがいる。それにこれだけの功績と実力。ぜひとも、仲間になってほしいわねえ」


 でもそれも無理ということはわかっている。

 ここまで完璧に姿を隠しているのだから、きっとアタシたちの前に姿を現すこともないでしょう。


「せめて、お礼くらいは言いたいんだけどねえ……」


 この騒動の終息を予感し、アタシはそんなことを呟くことしかできなかった。


    ◇


「よし、ここも終わった」


「先輩次行きましょう」


「大丈夫か? お前たち、張り切ってずっと戦ってるだろ? 少しは休んだらどうだ?」


「まだやれます。というか、遭遇までが長いだけで、戦闘はすぐ終わりますし」


 頼もしいことだ。

 無理しているようでもないので、次の獲物を狩りに行く。

 今日の外出時間を考えると、次で終わりだな。

 遠方は長期の休暇と外出許可を得ればいいので、ここいらが終わったら次はそっちだ。


「さて、そろそろか」


 目標に向かって進み続け、人間たちにばれないように隠れたり迂回したりすることで、なんとか無事にたどり着く。


「なんだ。ゴブリンか」


「そういうお前らもゴブリンだろ」


「……え!? なんで、俺たち以外に会話できるゴブリンがいるんだ」


 まあ、驚くよな。

 俺たちが連れている野生のゴブリンなんて、いまだに何言ってるかわからないし。


「うわっ……なんだそいつ。普通のゴブリンか。正気じゃない下品なやつだな」


 だがこいつのおかげで、お前らを見つけられた。

 野生のモンスターというのは、必ずしも俺たちに劣るわけではないらしく、嗅覚やら勘が優れているみたいだ。

 そのおかげで、こうして連れ歩いていると次々と変異種と呼ばれているモンスターを発見してくれる。


「それで、お前らもなんか知恵がついた仲間なんだろ? これから人間どもの村を襲うつもりだが、一緒に行くか?」


「いや、俺たちはそれをやめてくれと言いにきた」


「は……?」


 空気が変わる。

 こちらの意見にいかにも嫌そうな表情を浮かべたそいつは、ため息をつきながらこちらを諭す。


「馬鹿だなお前ら。人間なんかの味方をしてもいいことないぞ。ああ、もしかして強い人間が怖いのか? 安心しろ。あんなのが来たらすぐに逃げればいいだけだ」


「というより、魔族の味方をしているんだ。その魔族に迷惑がかかるから、人間どもを襲うのはやめてくれ」


「駄目だなこいつら。仲間じゃねえよ。こんな飼いならされた連中」


 飼いならされているというのはたしかに合っている。

 だから、こいつらが馬鹿にしたように笑っても気にならない。


「野生のモンスターどもは馬鹿だけど、お前らみたいな臆病なやつらも駄目だな。誰かを襲うことも忘れちまってるようなら、牙も抜けてる腑抜けってことだ」


「もういいだろ。邪魔するなら殺せばいい。こいつら、俺たちより弱いからな」


 それも合っている。

 こいつら、頭だけでなく力も魔力も強くなっているみたいだ。

 知能だけでなく、全てが強化されている。そんな印象を受ける。

 だからこそ、俺たちと目の前で話なんかしているんだろう。

 もしも俺たちのほうが強ければ、きっと遭遇する前に逃げていたはずだから。


「しょうがない。じゃあ戦うか」


「やっぱり頭悪いだろお前ら。俺たちが囮にした連中と同じで、半端に知恵がついただけのやつらか」


「お前らごときが俺たちに勝てるとでも思っているのか」


 まあ、俺たちじゃ無理だろうな。

 敵はすでにこちらを殺すと決めたらしく、集団で一斉に襲いかかってきた。

 このままならばこちらの全滅だろう。


「戦闘だ。気を抜くなよ」


「了解です!」


 俺たちと違う黒いゴブリンたち、こいつらの強さは普段は俺たちと同じくらいだ。

 だから、目の前の敵には敵わない。

 だが、本気で戦った場合は話が別だ。


「な、なんだこいつら! 急に強くなっている!」


「実力を隠していたのか!?」


「いや、その程度じゃ俺たちの鼻はごまかせない! 本当に、急激に強くなって、ぎゃ!」


 さすがに知能が高いと言われるだけあって、ブラックゴブリンの相手はまずいと悟ったらしい。

 ならばとばかりに、俺たちへと襲いかかるが、落ち着いて対処する。それだけだ。

 ブラックゴブリンたちと共に生活し学ぶことで、なんとなくわかってきた。

 他の仲間たちに教えても、俺たちゴブリン以外には扱えなかったが、そろそろものにできたと思う。


「な、なんでお前らまで急に強くなって……」


 ただ、ブラックゴブリンと違って体への負担はでかいのか、俺たちじゃあそこまでの時間は戦えない。

 だから、さっさと終わらせよう。

 なに、あとは簡単だ。圧倒的な力の差となっているため、ただ倒すだけ。


 そうして、敵のゴブリンたちは全滅した。

 なるほど、嗅覚か。

 それで遠方の敵の接近を知り、実力すらも嗅ぎ取り、敵わない相手なら逃げていたのか。

 だが、このブラックゴブリンたちの力までは見抜けなかったようだな。


 さあ、今日はこれで終わりだ。

 そろそろ、遠方のモンスターを狩らないとな。

 ご主人様のためにも、しっかりとおかしなモンスターたちは全滅させよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『転生宰相のダンジョン魔改造録』第1巻 発売中!
▶シリーズページはこちら

6j3di8xzcku315svenm7h9h1dqae_1312_12f_1kw_b0ma.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ