第533話 結局のところ上二人が原因
「げぇっ! グレムリン!」
“おっ、面白いことしてる精霊だ!”
“出力めちゃくちゃにしてやろうぜ!”
「こ、こら! やめるっす! 燃やすぞこら!」
「な、なんだ……。おい、テクニティス。お前の関係者か」
「んなわけないっすよね!? 自分が被害に遭ってるの、見えてないっすか!?」
引き続き、グレムリンたちを案内していたら、テクニティスを見つけて、急に絡みに行った。
そういえば、ダスカロスも言ってたっけ。アイテム。特に魔導具関連をいじくって、効果を変えるのが好みだと。
だけど、うちでそんないたずらされたら困るな。
「テクニティスとカールの邪魔をするなら、セルケトにでも倒してもらうか」
“精霊の兄さん。すみませんでした!”
“冗談です! すみません! 宰相様、許してください!”
「グレムリンたちが、大人しく……」
「さ、さすがはレイ様っす!」
平気かな? なんか大人しくなったけど、俺の言葉をやっぱり理解しているのか?
だとしたら、これはうわべだけ反省したふりなのでは?
……とりあえず、ソウルイーターに何匹か食べさせておくか?
「ソウルイーター。何匹か、食べておくか?」
ソウルイーターは、念のため、グレムリンが襲ってきたときのために、俺に巻きついている。
テンユウのときもそうだったが、このとぐろアーマー便利だなあ。
“う~ん。さっきご飯食べたけど、わたしかしこいから、もうちょっと食べられるかも”
そんなソウルイーターが、もそもそとグレムリンに向かうと、ものすごい速度でグレムリンが土下座している。
ついでに、何かをわめいているようだが、どうしたものか。
“心を入れ替えますから、本当に勘弁してください!”
“駄目だ! この方、逆らったら容赦ねえぞ!”
“何か役に立つところをアピールして、死から逃れろ!”
やはり何匹か食べさせておいて、勝手なことをしないように覚えてもらうか。
そう判断したそばから、グレムリンがまた勝手にテクニティスの魔導具を触り始めた。
「あ、またっ!」
テクニティスも、さすがに迷惑だったのか、ずかすかと近づいてグレムリンを掴もうとする。
だけど、なんか今回はやけに必死だな。さっきのようやいたずらとは、集中力が違う。
“出力上げておきました、兄さん!”
“俺たち有用なので、助命を嘆願してください!”
「ん? んん? カール、これ」
「なんだ? ……なるほど、魔力伝導効率が改善されてるな」
“食べていい?”
ソウルイーターが、こちらに顔を向ける。
おそらく、グレムリンを食べていいか、確認しているのだろう。
だけど、もしかしたら、少し確認が必要かもしれない。
「いったん、食べるのはやめておこう。ちょっと、確認が必要かもしれない」
“は~い”
ソウルイーターは、俺の言葉を聞き、再び俺に巻き付き直した。
さて、テクニティスとカールが、驚いているが、いたずらのせい、というわけではなさそうだな。
「何があった?」
「グレムリンが、小型ゴーレムの出力を上げたみたいっすね」
「これまで以上の力を、発揮しているようです」
なるほど……。
というか、またゴーレム作っていたんだな。この二人。
他の仕事もちゃんとしてくれるし、息抜きに趣味で作る分には、まったく問題ないが。
……そう考えると、これだけたくさんの作品の中から、二人の趣味だけにいたずらしたのは、グレムリンなりに、空気を読んだのか?
「どうする? こいつら、使えそうか?」
「う~ん。技術はあるみたいっすねえ」
「ええ、俺たちに足りないものを、持っているかもしれません」
「処分しなくてよさそうか?」
「……どうするっす? カール」
「様子見でいいだろう。手に負えないようなら、レイ様に報告すれば」
二人がそう言うのなら、いったん処分は保留だな。
そのやり取りを、どこか真剣な表情で聞いていたグレムリンたちは、最後は力が抜けたように、その場にへたり込んだ。
“た、助かった~”
“よしっ! 生きた! よしっ!!”
「ところで、こいつらどうしたんすか? もしかして、レイ様が生成したっすか?」
「いや、野生のモンスターだけど、ダスカロスが捕らえた」
捕らえたというか、交渉して連れてきたというか。
「野生……? それにしては、レイ様が生成したモンスターみたいに、知能が高そうっすね」
「そこが不思議なんだよ。なんか、巷ではそういうモンスターの被害の話もあるし、こいつらが騒動の原因かと、思ったけれど、どうにも違いそうだし」
世間を騒がせているらしいモンスター騒動とは、別か……。
ただ、それはそれで、こいつらがなんなのかって話になる。
モンスターと会話でもできれば、別だけど、こいつらから事情を聞くこともできないしなあ。
「まあ、役立つならうちで雇うか」
“精霊の兄さん。俺たち、もういたずらしないんで、よろしく頼みますよ~!”
「なんか、馴れ馴れしいっすね。お前ら。まあ、邪魔しないなら、別にいいっすけど」
職場は決まった。
だが、こいつらが変異した原因は、やはり調べておきたい。
とりあえず、テラペイアにも見せてみるか。
◇
「それで、結果はどうだったんですか?」
「それが、テラペイアにも全然わからないみたいです。そもそも、俺のモンスターたちも、他と構造が違うとかでもないようですし」
「不思議ですねえ。そうなると、今回のグレムリンたちも、なぜ賢くなったのか、わからないですし」
そうなんだよなあ。
魔力とか肉体とか、一応魂とかも確認した結果、異常なしなのだから、本当に何も変わってない。
それか……こちらで、測定できない何かが変わっているとかかもしれないな。
「まあ、変な噂の原因が私たちでないのなら、良かったじゃないですか」
「そうですね。これでまた、勇者が攻めてきても困りますし」
「ほんとですよ! まったくもう。なんでもかんでも魔王のせいに、しすぎじゃありませんかね!」
この魔王様、むしろ悪巧みも面倒くさいとか言い出すタイプだしなあ。
だけど、そんなことを知らない人類は、怪しい事件はだいたい魔王の仕業と考えるのだろう。
「気象の異常まで、私のせいにされたことありますからね!」
「まあ、フィオナ様なら、天気くらい操りそうですけど」
「外の天気なんて、地底魔界に影響しないのに、そんなことするわけないじゃないですか! そりゃあ、たしかに、快適な地底魔界の中から、大雨や日照りを見て、ざまあみろとは少し思いましたけど……」
思ったんだ。
この魔族、善良っぽいけど、そういう小物っぽさもあるからなあ。
「果ては生贄まで、ここに捨てられましたからね!」
「え、やばくないですか?」
「やばいですよ。人類」
「ちなみにその生贄は、その後どうしたんです?」
「イピレティスたちに頼んで、人類の元へ返しました」
必要ない苦労を背負い込んでるなあ。
今のところそういうのは見ないけど、今後発生されると困る。
……いや、生贄ではないけど、クララたちが謎の儀式でピルカヤ呼ぼうとしたし、わりと現実的なのかもしれない。
「……そのときは、タイラーや風間やロペスあたりに、任せましょうか」
「そうですねえ。今なら、前より簡単に返せそうです」
思わぬ苦労話を聞くことになったが、それだけ色々と経験しているんだろうな。この魔王様は。
「今回のモンスター騒動、うちが疑われないようにするためにも、ダンジョンはしばらく大人しめにしておきますか?」
配置するモンスター減らそうかな。
「むむ……。レイがそれで自重するのは、私としては望ましくないですね。まあ、疑われても今さらですし、好きにやってもいいと思いますよ」
「だから、フィオナ様って好きです」
「ふふっ、私もあなたのこと好きですよ」
よし、トップの許可が降りたし、今後も自重なくモンスターを配置してしまえ。
何かあったら、アナンタが何とかするだろう。
◇
「ア……アナンタ様……。邪魔しちゃ……駄目……」
「止めるなプネヴマ! せっかく、レイが止まりそうだったのに、魔王様が甘やかすから、あんなふうに!」
「なるほどな。レイのダンジョンへの熱意も、魔王様以上に優先することではない。であれば、魔王様ならば、止められるということか」
「止めてくれなかったけどね!」
「お二人は、それで良いのです。私たち三人で、今後も頑張りましょう」
本日18時頃に、今後の展開に関わるお知らせがあります。お手数ですが、活動報告をご覧いただけると助かります。




