取り憑きましたわ
目を覚まして、時刻を確認すると時計の針が12時35分を指していた。
カーテンから光が漏れているのでお昼だ。
まあ昨日いくら遅くまでゲームをやっていたとはいえ、そんな長時間ねむれないから当然だ。
「そういえば今日から夏休みかー
私には関係ないけど」
スマートフォンの画面に映る日付を見て、今日から夏休みだということを思い出す。
でも引きこもりのわたしには関係ない、
何故なら学校に行かなくなったからだ。
私が行っている学校は中高一貫校でエスカレーター式に進学でき、
高校に行かなくても高校を卒業できる特殊な学校だ。
何故ならお金持ちしか入れない学校。
学校に莫大な学費を支払うので、卒業できないとなると生徒が学校に入ってくれないからだ。
その莫大な学費と献金を使い、学校の設備やサービスが充実されているので
生徒は有名企業の息子や娘、自ら会社を立ち上げて社長をやっている人、海外からこの学校に来る人もいる。
私は中学までは普通に通っていた。
でもうちの親がやっている会社の、ライバル企業に関係する人たちにいじめを受けたからだ。
母様と父様は仕事が忙しくて相談することができず、他の家族も海外などに行ってるため助けを求められなかった。
私はいじめられたストレスで暴飲暴食を繰り返すようになってしまい、気がつくと体が太っていた。
だから余計に高校には行けず、家に引きこもっている。
家にはわたしに優しい人しかいないから。
「お腹も空いてきたし、食堂にいこうかなー
ん?なんか人の聞こえる」
どこからか人の声が聞こえたので、音楽を聴く機械の電源を切り忘れたかなと思い、
テレビの近くに置いてある機械のところへ行き、
電源ボタンを見ると後ろからまた聞こえた。
『この屋敷はなかなかいいですわね、不思議と落ち着きますわ。
しばらくここにいることにいたしましょう』
確実に後ろから女の人の声が聞こえたので、振り向くと。
半透明の金色っぽい髪と薄い緑の眼をした西洋人風の顔をした女の人がいた。
その女の人と目が合った私はすぐにベッド行き、布団を被り目を瞑りった。
恐怖で体がガタガタと震える。
しばらくした後もしかして見間違いかなって思ったので、布団を被りながら私は片目を開ける。
するとマットレスから生えるようにさっきの女の人の顔が目の前にあった。
「いやーー!」
私はベッドにから降りて入り口に向かうが、部屋が広いため遠く、入り口にたどり着く前に先回りされ尻餅をついてしまった。
『あなた、わたくしが見えていますの?
ちょっと、そんな怯えなくても何もしませんわよ。
はぁーこれじゃお話もできませんわ』
尻餅ついた私はすぐにうずくまっって目を瞑り耳を手で塞ぐ。
塞いだはずなのに声が聞こえるので余計に恐怖を感じる。
けっこうな時間が経ち、女の人がいた場所を見るとそこに姿はなかった。
今がチャンスと思い、
走って入り口に向かい部屋から出ることができた。
1人は怖いので私専属のメイドである飛鳥さんの所に全力疾走で向かった。
「はーはー、飛鳥さん、はーはー」
「そんなに息を切らしてどうしたんですかお嬢様。
全身汗でびっしょりですよ、まずはお風呂で汗を流しましょう」
冷や汗と久しぶりの運動でたくさん汗をかいたので飛鳥さんはお風呂を勧めてきた。
「飛鳥さん!それどころじゃないのよ、幽霊がでたの!」
「お嬢様、もう16歳におなりになったのですよ。ゲームと現実の区別はしっかりなさってください」
「げ・ん・じ・つ!現実にいたの私の部屋に!
金髪で緑の眼をした西洋人風の半透明な女の人が!
私に喋りかけてきたのよ!しかも耳を塞いでも何故か声がはっきり聞こえるのよ!
怖くない?」
飛鳥さんに幽霊と恐怖体験を伝えた。
「はぁ、わかりましたお風呂の前に、
お嬢様の部屋の中を確認いたしましょう」
「えっ?飛鳥さん危ないよ、幽霊に何かされたどうするの」
「大丈夫です。幽霊なら退治した経験がありますから」
「さすが私のスーパーメイド!
幽霊退治を頼みます!」
「はい任されました」
飛鳥さんと共に私の部屋に向かう。
「飛鳥さんどう?気配みたいなものある?」
「んーたしかに何かいた形跡はありますが、悪霊のたぐいではありませんね。
お嬢様ご安心ください」
「いや安心できないよ!いたってことはまた来るかもしれないってことだよね?」
部屋の中を確認した飛鳥さんに、幽霊がいたことが本当であったことを聞き、いっさい安心出来なかった。
「飛鳥さん、お札とか使って幽霊がこの部屋に来れないようにできないの?」
「悪霊のたぐいならできるのですが、一般霊となると不可能ですね。
お嬢様には見えないと思いますが至る所に霊はいます、それを全部排除しようとするのはわたしの力では足りません。
ご要望にお応えできず申し訳ありません」
飛鳥さんは自分の力不足に落ち込んでいる。
「気にしないで飛鳥さん、無茶なこと頼んだ私が悪いよ。ごめんね。
飛鳥さん、とうぶんこの部屋にいるのは怖いから、部屋の準備とその部屋に荷物を運ぶのを手伝ってくれない」
「いえ、部屋の準備と荷物運びはわたしにお任せください。
お嬢様は先程言ったとおり、入浴なさってきてください。
着替えは他のメイドに運ばせますので」
「いや流石に量が多いから手伝うよ」
「いえ、お嬢様のスーパーメイドにお任せください」
「うわ、飛鳥さんそれ絶対に自分の意見を曲げないパターンのやつじゃん。
わかった任せるよ。
あとお風呂からあがったあと食堂に行くから」
「かしこまりました、シェフに伝えておきます」
任せると言った時とても素晴らしい笑顔を向けてくれた飛鳥さんにこの部屋の荷物を託し、私は入浴するため浴室に向かった。
この屋敷の部屋数は多い、ぶっちゃけていうと使ってない部屋がありすぎる。
飛鳥さんの手腕により、この部屋の内部は前にいた部屋と全く同じ配置になっている。
「ゲームもいいところまでやったし、そろそろ寝ようかな」
時計を見ると2時28分を示していた。
明日も特に用事はないが、
いつもより早い時間に寝ることにした。
【なに?なんか体うごかないんだけど?
金縛りってやつ?こわいんだけど!
もしかして昼にきた幽霊のせい?】
眠ってたはずだったのに意識だけ覚醒し、体が動かない、目も開けられず声も出せない。
『幽霊?確かこの世界のレイスことでしたわね。
あなたが言う通り、幽霊であるわたくしがあなたを動けなくしていますわ】
今日聞いた女の人の声が聞こえた。
【お願い殺さないでー】
『殺したりしませんわよ、ただお話がしたいだけですわ」
【本当に殺さない?】
『あなたを殺してわたくしになんの得があるというのかしら?何もありませんことよ。
今から拘束を解きますのでお話につきあってください、逃げようとしたらまた拘束いたしますからね」
【わかりました】
私を殺す気はないようだけど、怖いので従っておこう。
指を鳴らす音が聞こえると体が自由に動けるようになり、
目を開けると昼に見た女の人がベッドの横に立っていた。
「こっこんばんは」
『寝ながら挨拶するなんて面白い礼儀作法ですわね』
「あっすいません。
こんばんは幽霊さん」
体を拘束をして置いて礼儀作法とはどの口が言ってるだと思ったけど、怖いからベッド上に正座して謝っておいた。
『ごきげんようお嬢さん、まずは自己紹介をいたしましょう。
わたくしはハーデル国の貴族、誇り高き侯爵家の嫡女マリア・アンジェッタと申します。
この国では、アンジェッタ・マリアといえばいいのでしょうか』
「ご丁寧にありがとうございます。
私の名前は伊集院 麗華といいます。
麗華と気軽に呼んでください」
『すこし呼びずらいのでレイカと呼ばせていただきますわ。
少し強引な手段をとってしまい申し訳ないと思っていますの、
ただこの世界にきて、初めてわたくしを認識し、声を聞き取れる人に会いましたの!
嬉しくてついやってしまいました。
申し訳ありません』
嬉しそうにマリアさんは喋ったあと頭を下げて謝罪をしてくれた。
「いやこちらこそ怖がってしまってごめんなさい、幽霊なんて初めてみたものですから」
今もものすごく怖い。
『そうなんですの?
じゃあわたくしだけ見えるというのは不思議ですわね。
まあそんなことは置いといて、
お互い自己紹介も終わったことですし、
もうお友達ですわね。
なのでお願いを聞いてもらいたいのですわ』
「お願いですか?」
『さっきも言った通り、
わたくしの姿を見たり、声を聞いたり出来た人はレイカだけなのですの。
なので時々でいいですから今みたいに、お話につきあってほしいのですわ。
だめでしょうか?』
うるうるした目で私を見ている。
「えーとお話くらいならつきあいますけど、
本当にそれだけですか?」
『はい!お話につきあっていただくだけですわ!
よろしいのですね!
やりましたわ!』
おそらく嬉しいのだろう部屋の中を飛び回っている。
そして私の前に降り立った。
『レイカ、今日はもう夜遅くなので、
また明日のお昼に来ることにしますわ。
ではごきげんよう』
「あっはい、ごきげんようマリアさん」
マリアさんは律儀に部屋の入り口から出ようとするが扉の前で動きが止まった。
そしてまた部屋の中を飛びまわったり壁を出たり入ったりしていた。
そしてまた私の前に降り立った。
『レイカおそらくなんですけど、レイカから一定の距離しか離れられないみたいなんですの』
「え?」
『つまり、レイカに取り憑いてしまったようなのです』
「、、、、、えーー!」
『今日からよろしくお願いいたしますわ!
レイカ!』
それを聞いた私の頭は許容範囲を超え、意識を失った。
見てくれてあざっす!