勝鬨をあげる
教会の外に急いで出る。
どうも城の方から音は聞こえてこない。戦闘は終わったのだろうか。
街中を駆けると、教会の紋章を付けた教徒たちは倒れている。
操られていたのが教皇を倒したことで解けたのかもしれない。
「カノン、地下道から戻ろう。地上には人が多すぎる。」
地下に入る。一度通ってきた道だ迷わず進める。
扉を開けてルノガー将軍の部屋に入ると、剣を構えたエマが立っていた。傷だらけでの姿からは戦闘の激しさを物語っている。
「エマ、オレだ。斬るんじゃない。」
「カノン! 」
エマがオレに抱きついてくる。
エマはこんなに甘えん坊だったっけ。
「エマ、大丈夫だったか。」
「ええ。平気。教徒たちが倒れたから、将軍からカノンたちの援護に行くように命令された。」
「そうか。オレたちは教皇を倒せた。」
「無事でよかった。」
ロミとミトがジーッと見てくる。いつまで抱きついているんだと言わんばかりだ。
「ゴホン。まあでもエマも無事で良かった。ルノガー将軍のところに案内してくれ。」
「わかった。」
エマが頬を膨らます。
「そうふてくされないでくれ。後でゆっくり話そう。」
エマが先導してルノガー将軍のところに向かう。
城の中まで戦闘が行われていたみたいだ。
謁見の間にノックして入る。
「ルノガー将軍、カノンたちが戻りました。」
ルノガー将軍とガリレア王が話をしている最中だった。
「よく戻ったな。カノン。そして皆よ。面をあげよ。お主たちは帝国の依頼者。良き隣人じゃ。かしこまらなくて良い。」
「ありがとうございます。チャーチル教皇を倒すことが出来ました。」
「そうか。よくやった。褒美は後日渡させてもらおう」
「いつでも大丈夫です。それで聖女ルーンを保護しました。できれば…罪がないように取り計らってもらえれば…。」
チャーチル教皇の暴走。教皇が浸かっていた杖。そしてエドガーたちとのことを事細かに話した。
「ふむ。よくわかった。聖女ルーン、よくやった。チャーチル教の存続させるのは難しいが、ルーンの身分は確保しよう。」
「ありがとうございます。」
ルーンがホッとした顔をしてお礼を言った。
「これがその杖です。持っているだけで意識が持っていかれそうになります。封印するのが最適かと思います。」
ルノガー将軍に手渡す。
「ふむ。そうだな。こいつは帝国の最下層に封印するのが良いだろう。」
「分かりました。よろしくお願いします。」
オレたちからの報告はこれで全てだ。
「今週は騒動の後処理に時間が取られるだろう。カノンたちは来週の頭に城に来てくれ。招待させてほしい。そこで褒美と勲章を与えよう。」
「ありがとうございます。」
「二階から皆に顔を見せてやってくれ。」
謁見の間の二階に上がり、広場を見渡す。広場一面に騎士と兵士が手当をしたり、休んでいる。
「ほれ、カノン、なにか言わぬか。」
ガリレア王に背中をポンと押される。
ザワザワしながら騎士や城を守ってくれていた兵士がこちらを見ている。
「勝鬨を上げろ! 教皇は倒した! オレたちは教会に勝った! 帝国を守ったんだ! 」
下にいる兵士たちが叫ぶ。大音量で鳥肌が立つ。
自分たちより数十倍多い敵の数だったんだ。希望が見いだせず辛い戦いだっただろう。
それでもオレたちは勝った。劣勢を覆したんだ。
兵士たちの喜びの叫び声は永遠に感じるくらい響き渡っていた。
護衛がガリレア王に耳打ちする。ガリレア王も多忙を極めるだろう。
挨拶をして謁見の間を出た。
ルノガー将軍が自室に案内してくれた。
出される飲み物は当然酒だ。勝利の後の酒は格別だ。ライカだけはジュースにしてもらったが。
そう言えば、城を襲ってきた教徒たちはどうなったのか気になった。
「教徒たちの処分はどうなるのですか。」
「ワシは処刑必要はないと思っておる。先程、急に倒れてな。カノンたちが教皇を倒したタイミングと同じだろう。起きたやつに話を聞いても、この数日のことは何も覚えていないみたいなんだ。」
やはり教皇の魔法によって操られていたのか。
元々仕組んでいたのかもしれないが、それでも数万を超える人数を従わせ操るのは人智を超えている。
「教皇の裏になにか蠢いているのかもしれませんね。」
「そうだな。それは落ち着いてからまた考えよう。」
オレは頷いた。
「先程報告が来ての、各地の暴動も落ち着いたみたいだ。」
「そうですか。皆無事だと良いですが。」
「うむ。それでカノン、エドガーはどうだった。」
「残念ですが…首を撥ねました。魔人化していて最後の方は意識もなく止められませんでした。」
取り繕うことも出来るが、素直に話すのが一番だろう。
「そうか。ありがとう。これも全てワシの責任じゃ。」
深々とルノガー将軍が頭を下げる。
「やめてください。将軍も辛いと思います。誰の責任でもないですよ。」
「そうか…そうだな。」
ルノガー将軍の目は寂しそうな目をしていた。
どんなにダメな息子でもかわいいのだろう。
部屋が沈黙に包まれる。こんな話を出されたら皆、黙り込むしかないだろう。
「将軍、杖は早めに封印してほしいさ。僕も協力するよ。」
ロミが酒を呑みながら発言した。ロミのマイペースなところに救われたな。
「そうだな。いつまで落ち込んでも居られぬな。明日にでも封印しよう。ロミ力を貸してくれ。」
「もちろんさ。僕一人では無理だ。ルーンとエマ、宮廷魔術師何人かいれば十分だろうね。」
ルノガー将軍が頷く。
「わかった。手配しておこう。明日の昼にでも来ていてくれ。それまではワシが管理する。」
「将軍が杖に乗っ取られて闇落ちする展開は辞めてほしいのさ。」
ロミが笑った。
「ワシもまだまだ現役じゃ。大丈夫だ。カノンたちは週明けまでは帝都に居てほしい。それまで帝国で宿と食事を用意する。帝国を救った英雄だからな。」
すぐにでも旅立とうと思っていたが、ロミも手伝うことがあるだろうし、週明けまでは帝都にとどまる必要がありそうだ。
「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます。」
「カノン、お前はもうどこかに行こうとしておったな。まあ良い。今日は祝杯をあげよう帝国でご馳走と酒を用意しておる! 落ち着いたら広場へ向かおう。」
ルノガー将軍は鋭いな。数日留まるくらいはいいだろう。オレはスローライフがしたいんだ。
「週明けまではいますから大丈夫ですよ。後処理をお手伝いさせてください。」
「カノン、考えてることみんなにバレバレなんだね。いつも顔に出てるもん。」
ライカがオレを茶化す。
ライカの発言に皆が顔を合わせて笑った。
「そうかもしれないな。無表情になることを練習しないと。」
「よし、広場に行こう。皆、カノンたちと話したがっているぞ。」
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