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アルス決着

Side;カノン


 どこからか声が聞こえる。オレは闇の中で倒れている。死んだのだろう。


 『………カノン。』


 名前を呼ばれている気がする。誰だ。


 『カノン。起きて。』


 分からない。起きれない。オレはもうダメだ。


 『カノンなら勝てるよ。』


 無理だ。オレは負けたんだ。アルスは強かった。人間や魔獣なら負けるとは思わない。

 だけど、魔人は別だ。レベルが違う。悔しいが桁が違うんだ。オレが今起きたところでどうなる。


 『………みんなはどうなるの? カノンを信じて必死に戦っているんだよ。』


 ………そうだ。城で戦っているみんなもロミやミト、ライカもオレを信じてくれている。

 だが、このままでは勝てない。どうすればいいんだ。


 『私の名前を呼んで』


 この声はライカか。ずっとオレに声をかけ続けてくれたのか。

 

 「名前はライカだろ。」


 『違う。私のフルネームを呼んで。』

 

 ライカのフルネーム。分からない。


 『もう頭の中に浮かんでいるはずだよ。』


 知らないはずなのに単語が頭の中で浮かんでいる。


 「ライカの名は、ライカ=アセナ=フェンリル」


 『やっと名前を呼んでくれたね。』


 まばゆい光がオレを包み込んだ。




 目を覚ますと、ボロボロのライカがオレの前に立ち、アルスと対峙している。

 身を挺して守ってくれていたのか。


 「カノン、ライカと一体化するんだ! 」


 ロミとミトもボロボロだ。ライカがオレを助けに来たことで前衛が居ないのだ。どれだけ強くても傷だらけになるのもしょうがない。迷惑をかけたな。


 「ライカ来てくれ! 」


 ライカが後に下がりオレの横に移動する。


 「カノン、まだ死んでいなかったか。俺との決着が着いていない。本気を出せ! 止めは俺が刺してやる。」


 「ああ。アルス、決着をつけよう。」


 目を閉じて、ライカの真名を呼ぶ。


 「ライカ=アセナ=フェンリル、力を貸してくれ! 」


 ライカが光だし、剣に変化した。これがロミが言っていたおとぎ話と同じだ。本当だったのか。


 剣を掴む。 


 「なんだ。それは。」


 「この剣は『狼神剣』だ。行くぞアルス! 」


 狼神剣と草薙の剣二本を構えてアルスに突っ込む。


 狼神剣は持つだけで力が湧き出てくる。軽くて、狼神剣を持っているだけで強くなれる気がする。


 アルスは必死に防御するが、草薙の剣で弾き、狼神剣で突き刺す。


 「バカな。魔人化した俺より上だと…」


 アルスが膝をつく。

 オレはライカの力を借りて強くなっているのか。


 「そうみたいだな。オレ一人の力じゃない。ライカと二人分の力だ! 受けてみろ。」


 両剣を構える。必ずアルスを斬る。気絶もしてたんだ時間がない。


 「クソガアァァァァァァ!」


 アルスが直線的に突っ込んでくる。

 アルスもこの狼神剣に嫌な予感を感じているのだろう。

 


 「くらえっ! 叢雲斬り<むらくもぎり>! 狼神斬り! 」


 十字に斬る。オレの最大火力だ。

 剣が光り出し、アルスの体を四分割に引き裂いた。


 アルスが崩れ落ちた。


 「終わりだ。アルス。」


 狼神剣と草薙の剣の威力は恐ろしいが、メリットだけではなさそうだ。

 何発も撃てる訳ではなさそうだ。力を放出する。体の中の力がほとんどなくなる感覚が襲う。

 撃てて後一発というところだ。


 オレはよろめいて膝をついた。やった。やったぞ。

 アルスには負けたと思っていたが、倒すことが出来た。

 喜びを爆発させて、オレは咆哮を上げた。


 「クソッ。まさか俺まで負けるとは…カノン楽しかったぜ。」


 「ああ。アルスは今まで戦った男で一番強かった。」


 「そうか。だが、まだ終わりじゃない。せいぜいお前のために教皇を止めてみろ。」


 「そうするつもりだ。」


 「俺が最強のままでいさせてくれ。誰にも負けるんじゃねえぞ! 」


 最後にアルスが叫ぶと、体が爆発した。

 最後に見たアルスの顔は笑っていた様に見えた。


 結界が壊れた様で、残り二体の黒龍はロミとミトに任せてオレは立ち上がり、教皇に駆ける。

 力がうまく入らずに走るとよろめくが一刻も早く止めないといけない。

 ずっと教皇は呪文を唱えているんだ、いつ魔王が復活してもおかしくはない。

 

 「チャーチル教皇、覚悟! 」


 隣では聖女ルーンがうつろな目で床に座っている。操られているのだろうが、今は教皇が優先だ。

 チャーチル教皇に斬りかかる。


 「愚かな人間よ。死んでいればよかったものを。」


 チャーチル教皇が金色の杖を振るうと草薙の剣が弾かれる。


 バカな。杖で剣を弾くだと。

 なにか特殊な力を持った杖なのだろう。


 教皇が呪文の詠唱を止めて、話しかけてきた。


 「お前たちがここに来ることは分かっていた。どうだ、教会に付かぬか。悪い様にはせぬぞ。」


 「お断りだ。お前たちはやりすぎた。到底、賛同できない。滅ぼさせてもらう。」


 「所詮、お前たち愚民には到底理解できまい。なんと愚かな。」


 「アルス達もそうだしなぜ人を殺す。なぜここまでやる必要がある。」


 「洗濯だよ。愚かな人間が増えすぎた。一度、世界を洗濯をする必要があるのだ。」


 「バカな。お前如きが決めることではない。」


 「そうかな。帝国は共和国と数年に渡り戦争をしていた。それに奴隷制度に貴族制度。これが人間として正しい姿なのか。お前も貴族制度によって苦しめられてきただろう? カノンよ。」


 「たしかにオレはリシャール家を追い出された。だが、今の帝国の全てが間違いだとは思わない。将軍や王様たち、騎士もより良くしようと願い行動している。」


 「そうか。残念だ。カノンを殺してから魔王復活の儀を再開しよう。」


 チャーチル教皇が杖で床を二度叩いた。

 暗黒が部屋を埋め尽くす。闇が俺たちを包み込んだ。


 「教皇は聖魔法しか使えないはずだ。お前は誰だ。」


 チャーチル教皇はニタっと笑った。

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