賢者ロミの大脱走
ルーンがフフンと笑って言った。
「策と言えるほどではありませんが、捕まえた彼らの服を来て教会関係者のフリをして進みます。バレたらそこからは武力行使で、妹のユーリを一気に助けます。」
「なるほど。考えたね。それでユーリを助けたらどうするんだい。」
「その後に、地下3階の一番奥にある部屋には地下水路に繋がる穴があります。そこまで進みましょう。地下水路には私の関係者が待機しておりますので、そこまで来れば安全に逃げられます。」
「確かにシンプルな策だね。教会内の状況が僕には分からないから、ルーンの策に乗るしかなさそうさ。」
「ロミ様は昔言っていましたよ。作戦はざっくりでその場その場で対応できるのが一流の魔道士だって。」
確かにそんな事を言ったかもしれない。
「そうだね。早速行こうか。ルーンが部屋を出てから時間もだいぶ経っている。怪しまれる頃合いかもしれないさ。ユーリを助けて教会を出てから思い出話に花を咲かせようよ。」
男たちの服を脱がせて着る。少し臭いが我慢するしかなさそうだね。教会のローブがあるから顔を隠すのには都合が良い。念のため短剣も拝借するよ。使うことがないことを祈るけど。
「準備はいいかい、ルーン。」
「ええ。ロミ様。行きましょう。私が先に歩きます。横についてきてください。」
牢屋の扉を開けて階段を目指す。この階には人は見当たらない。
階段を上がる。妹のユーリがいるのは一番奥の部屋だったか。部屋の前には見張りが二人いた。
「おい、どうしたお前たち、こんな時間に。酔っ払っているとお偉方に怒られるぞ。」
僕らが変装していることには気がついていないみたいだね。
ルーンが低い声で返事をする。
「ああ。少しのみすぎてな。お前たち、見張りを変わってやろうか。」
「良いのか。助かるぜ。俺たちは下の階で賢者を痛めつけているらしいから、それに参加してくるよ。」
見張りの二人は下品な笑い声を上げながら去っていった。
ドアノブを開けようとするが鍵がかかっている。鍵を剣で壊そうか。いや大きな音が響いてしまうね。
「精霊よ鍵を開けよ! 」
ルーンが聖魔法で鍵を開ける。
「だれっ。もしかしてお姉ちゃん? 」
「ユーリ! 」
「会いたかったわ。お姉ちゃん。数カ月ぶりね。」
ルーンとユーリが抱き合う。久しぶりの再会なのだろうね。
「感動の再会は後だ。すぐにここを出よう。」
「ええ。ユーリに説明している暇はないわ。ロミ様についていって。」
「お姉ちゃんはどうするの。」
「私も一緒よ。さあ速く。走りましょう。」
私たちが部屋を出て走り出すと警報音が鳴り響いた。
『賢者ロミが逃げた。地下2階を中心に探し出せ。生死は問わぬ。必ず捕まえろ。』
階段から大勢の兵士が剣を持って現れた。
「いたぞ! ユーリ様も一緒だ。」「くそっこれだから帝国の人間は卑怯だ。」「お前たち一気にやるぞ。」
男たちが口々に言いながら突っ込んでくる。一人ひとりを相手にする余裕はない。一刻も速く逃げないと。
「邪魔はしないでもらいたいね。ダイアモンドダスト!」
全員を凍らせて足止めする。走り抜けて地下3階まで階段をかけ降りる。
「ユーリ、危ない! 」
ルーンの声に反応する。前から弓矢を放ってきたようだ。暗くて魔法では撃ちもらす可能性もある。
こういう時はこれだ。ユーリに飛んできた弓矢をギリギリまで引き付けて短剣で弾く。短剣の修行をカノンと旅の中でしていたのさ。訓練をしていて本当によかった。
目の前の敵をダイアモンドダストで凍らせる。一番奥の部屋に入れば、後は水路に出るだけさ。ここまで順調に進むとは思わなかった。扉を閉めて栓をする。これで時間は稼げるだろう。
床にある扉を開けると人が一人通れるくらいの穴があった。
「ルーンから先に行ってくれ。僕が追手を食い止める。」
「ロミ様から先に降りてください。水路に伏兵がいるかもしれませんから私じゃ人質に取られます。速く! 追手がきます。長くは持ちません。」
木の扉を体当りする音が聞こえてくる。たしかに長くは持ちそうにないね。言い争っている時間はない。
「わかったよ。僕が指示を出してユーリが降りたらすぐにくるんだよ、ルーン! 」
僕は穴を飛び降りた。
少し前に明かりを持った教会の制服を着た男がいた。どうやらルーンが言っていた仲間みたいだけど信用はしないほうがよさそうだね。
「キミは誰だい。」
「お前こそ誰だ。なぜこの道を知っている。」
「ルーンから聞いた。」
「それでルーン様はどこにいる。」
「上で兵を引き止めてくれている。」
「そうか。すぐに呼んでくれ。オレはルーン様側近の騎士アルベルトだ。」
男の表情を見るとどうやら嘘はついてなさそうだね。
「ユーリ、下は大丈夫だ。すぐに降りてきてくれ! 」
僕が叫ぶと、ユーリが穴から落ちてきた。
風の魔法でユーリをゆっくりと降ろす。
「ユーリ、上はどうなっている。」
「もう突破されると思いますが、姉もすぐに降りてくると思います。」
すぐにルーンも降りてきた。
「急ぎましょう。もう数秒もせずに追手が来ると思います。アルベルトありがとう。案内してちょうだい。」
「分かった。急ごう。」
三人でルーンの騎士アルベルトの後を追う。
穴から大勢の男が追いかけてきたみたいだ。
「待て。逃げられると思っているのか。」
教会の男が矢を放つ。こんな暗くて当たるわけがないさ。
後からドサッと音がして振り返るとルーンが地面に倒れていた。脚に矢が刺さっている様で立ち上がれないみたいだ。
「私は大丈夫。先に行って。」
「いやっ、お姉ちゃんを見捨ててはいけないよ。」
ユーリが立ち止まりルーンの元へ戻ろうとしている。
「走リ続けて、追いつかれます! 」
アルベルトが叫ぶが魔法でルーンは助けられない。
「私は魔法具が全部揃わないかぎり殺されることはないから! 速く逃げて!」
僕はユーリの手を引っ張り走り出す。
「ユーリ大丈夫だ。ルーンは助けに行くさ。今はキミの身が第一優先だよ。」
「でもでもっ。お姉ちゃんは見捨てられないよ。」
「それは後で説明する。お姉ちゃんは殺されることは絶対にない。僕を信じて。」
ユーリが頷いて、僕の横を走り出した。ユーリも強い子だ。
走り出すと目の前に光が見える。広場だ。ここから細い道が何本にも別れているから、どこかに入ってしまえば簡単に捕まることはない。
細い道をひたすらに走る。もう何分も走っている。さすがに疲れてきた。
「ここの部屋です。部屋の天井から建物に入ってください。僕は囮になってわざと見つかります。ご武運を! 」
お礼を聞くまでもなく、アルベルトは走って戻っていった。
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