水路に巣食う巨大蜘蛛
警戒しながら大きな広場に出た。
暗くてよく見えなかったが、近づくと蜘蛛の糸が一面に張られている。襲いかかってくる小さい蜘蛛を剣で片付ける。
「いいかい、あまり大きな音は出さないように処理するんだよ。もう帝都も近い。音で誰かに気づかれてはいけないさ。」
ロミの助言に皆で頷く。魔法を使わずにオレは剣で、ミトが弓で蜘蛛を処理した。
「ほとんどの蜘蛛は倒したし、走り抜けよう! 」
オレが言い、皆で移動を開始する。
真ん中を通り過ぎようとしたときに、上から大きな影が迫ってきた。
「大型の蜘蛛だ! 気をつけろ! 」
音はあまり出さないようにと言っていたが、緊急事態だ。
皆が上を向く。
蜘蛛の魔獣だ。松明の光りで全貌があらわになると、脚を含めると全長5メートルはあるだろうか。色も紫色で気持ちが良いものではない。
ミトが火の矢を放つ。
大型の蜘蛛はギギギと声を上げて苦しんでいる。火が効果的な様だ。
大型の蜘蛛が糸を放つ。
糸は剣で斬れるんだ。脅威にはならない。このまま走り抜けようか。いや、魔法は大きな音がするからミトの火の矢で落とせるはずだ。落としたらオレが斬る。
蜘蛛口から放たれた糸をオレが斬る。
これなら余裕そうだな。
再度ミトが火の矢を放つ。
火の矢が当たった衝撃で大型の蜘蛛から子蜘蛛が雨のように大量に落ちてきた。
「いやあああああああああ! 」
この叫び声はロミか。ロミの悲鳴なんて初めて聞いたぞ。
ロミが無詠唱で杖を振るう。
「ロミ、呪文はだ…」
オレが言い終わる前に、ロミが呪文エクスプロージョンを放ち呪文が蜘蛛達にあたり大きな爆発音がした。
蜘蛛たちは丸焦げになって落ちてきた。
ジッと皆がロミを見る。ロミはしまったと言う顔をしている。
「ごめん。弁解の余地もないさ。本当にごめん。僕が静かに倒そうと言ったのに…」
すごいロミは反省している様だ。
「ああ。驚いたよ。ロミが蜘蛛が苦手だったなんて。」
「蜘蛛は脚がいっぱいあるし、生理的にダメなのさ。」
「そうか。でも蠍や蟹は大丈夫だったじゃないか。なぜ蜘蛛だけダメなんだ。」
「ダメなものはダメなんだ。ああ。今日のことは絶対に夢で出る。憂鬱さ。」
「緊急事態とは言え、水路を進もうと言ったのはロミだ。蜘蛛が出ることくらいは知っていただろう。」
「いや、今まで何回か通ったが、蜘蛛の魔獣なんて出たととはなかったさ。まったく出るなら出ると言ってほしいものだよ。」
ロミは怒っているが起こるポイントがずれている気がする。
「まあ、進む先から足音は聞こえていないから大丈夫だろう。ロミは後衛でオレとミトが前を歩くから、もう爆発がする魔法を使わないでくれ。」
「すまないな。そうしてくれると嬉しいよ。」
ロミが反省した顔で頷いた。
大型蜘蛛の魔石を回収しようとして近づく
こんがり焼かれた巨大な蜘蛛をジーッとみていたライカが言った。
「カノン、これ食べられるかな。」
「たしかに蜘蛛は食べられると聞いたこともあるが。どうだろうな。」
オレがライカに話すと食い気味でロミが言った。
「ライカ、ダメだ。お腹を壊しちゃう。蜘蛛はダメだよ。」
「………」
ライカは少し残念そうな顔をしている。
「でも美味しそうだよ? 」
「うう。ライカにはこの蜘蛛が美味しそうに見えるのかい。この蜘蛛が…。分かったよ。変わりに僕が帝都でおすすめの店でご馳走をしてあげるよ。だから蜘蛛は諦めてくれ。」
「うん。分かった。蜘蛛は諦めるね。」
ライカが嬉しそうに言った。
「急ぎましょう。蜘蛛との戦闘で時間を取られたわ。」
「待ってくれ。時間から考えてもう半分は進んだはずだ。数時間歩きっぱなしなんだ。少し休んで行くのはどうだろう。」
「僕はミトの意見に賛成だ。すぐに進もう。」
有無を言わさずにロミがライカを引っ張って進み始める。どうしてもこの場に居たくないみたいだ。
しょうがなく、オレたちは歩き始めた。
ロミはライカの背中に引っ付くように歩いている。蜘蛛が怖いのは分かるが、ライカを盾にするのはどうかと思うぞ。
賢者と言われるロミに怖いものはなにもないと思っていたが、蜘蛛が怖いとは思わなかった。完璧な人間など居ないということだろう。
「なにを笑っているんだい。カノン。」
無意識に笑っていたみたいだ。
「いや、すまない。ロミが蜘蛛が怖いとは思わなくてな。」
「なっ、失礼な。蜘蛛なんか怖くないさ。ただちょっとだけ苦手なだけなんだよ。」
「そうか。」
先程回収した大型蜘蛛の脚をロミの前に出す。
「ギョエッ! カノン次やったら、呪文を当てるからね。」
「悪い悪い。もうしないよ。」
次にやったら呪文を当てると言われたが、杖で頭を殴られた。
話ながら数時間歩く。
道は複雑になるが、ロミが指示を出す。さっきの蜘蛛があったから一刻も早くここから出たいのだろう。歩く速度も上がる。
松明の火が見える。見張りの兵士が二人ドアの前で立っている。
「やっと着いたさ。さあ中で待っている人に会おう。カノンは驚くはずさ。」
ロミが顔を見せると、兵士がドアを開けた。
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