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旅立ち ~いざ帝都へ~

 ミトには申し訳ないが、カルスの研究が気になる。ミトが寝たところを見計らって宿に戻った。


 ロミはまだ起きているようだ。こちらを向いて、深刻な顔で言った。


 「カノン、マズイことになった。リスクはあるが次は帝都に向かおう。」


 「なにが起こったんだ。クロスケから連絡でも来たのか。」


 「いや、まだクロスケは帰ってきていない。カルスの報告書だ。教会の目的が分かった。教会は魔王を封印から解こうとしているらしい。」


 「魔王…数百年前に勇者が倒したと言われているあの魔王か。」


 「多分その魔王だろう。僕でも魔王なんて、おとぎ話でしか知らないよ。」


 規模が大きすぎる話だ。オレやロミ、ライカだけでなんとか出来る問題ではなさそうだ。


 「状況は分かった。帝都に行き、指輪を調べよう。そして信用に足る、ルノガー将軍に報告するのが良いだろう。すぐにでもサンドタウンを出ようか。」


 「ああ。カノンが焦る気持ちもわかるが、夜の砂漠は危険さ。明日の朝一で出ようよ。」


 オレは頷く。焦りは禁物だ。数時間早く着いたとしても、すぐに解決できる問題ではない。


 「ロミ、他に分かったことはあるか。」


 「さっきのことくらいさ。カルスが歴史に詳しかったのは魔王の復活の研究をしていたからみたいだね。この資料を見るかぎり、各地に教会の三銃士を派遣しているということは、既に復活させる方法が分かっていると思ったほうがいいだろう。」


 「フェンリルや白狐の村、ノース鉱山には魔法具はなかった。つまりあれは陽動ということか。」


 「そう見るのが良さそうだね。」


 ロミが地図を広げる。


 「帝国の北側で教会は問題を起こそうとしていたんだ。そっちに帝国の目を向けさせたいのだと思う。西側の今いるサンドタウンで指輪が手に入った。恐らく、南か東に魔王を復活させるための魔法具があるのだろうね。既に教会が手に入れている可能性もあるけど。」


 さすがロミだ。賢者の名は伊達じゃない。


 「そうだな。帝都でそこら辺も調べようか。」


 「ああ。そうしよう。帝都の仲間には先にクロスケから伝達しておくよ。時間が惜しいからね。」


 「頼む。ルノガー将軍にも誰にも聞かれず見つからない場所で密会したい。と伝えておいてくれ。」


 「もちろんさ。カノン…こんな時に聞くのも何だけど、キミはこの街に残らなくていいのかい。」


 唐突な質問に戸惑う。


 「今は帝国を揺るがす一大事だ。そんなこと言っている余裕はないだろう。」


 「たしかにそうだね。野暮な事を言った。今日はここらへんにして速く寝よう。明日はすぐに出ないといけない。」


 そう言うとロミはベッドに入った。オレも横のベッドに入る。


 教会は帝国を乗っ取ることが目的だと思っていたが、魔王が復活すれば世界の半分は滅んだとおとぎ話には書いてあった。


 教会は何がしたいんだ。世界を牛耳ることが目的。いや、世界を滅ぼすことが目的なのかもしれないな。滅ぼして何をするのかは分からないが。




 翌朝、起きてすぐに街を出る準備を始める。


 「カノン、僕とライカがカルスの研究資料をまとめておくから、ミトに報告してきてくれ。できれば砂漠の走り屋たちに送って欲しいと伝えてくれ。」


 オレは返事をしてミトのもとに向かった。状況を説明すると想定外の答えが帰ってきた。


 「待って。私も行くわ。同盟だもの。そんな事態なら街で指をくわえて待ってなどいられないわ。」


 「いいのか。」


 「ええ。もう既に了承は取っているわ。昨日カノンがすぐにいなくなったから今日にでも出ていくんじゃないかと思っていたの。」


 驚いた。この若さで首長を務めているだけはある。仕事が速い。


 「助かる。ミト、力を貸してくれ。」


 「もちろんよ。」


 そう言うとミトが笑った。


 「ロミたちの手伝いをしてくるから、ミトも準備が終わったら門に集合してくれ。砂漠の走り屋たちに送ってもらえると嬉しいのだが。」


 「もう走り屋たちには依頼しているわ。安心して。」


 仕事が速くて助かる。


 「わかった。じゃあまた後で。」


 膨大の量の書類がカルスの部屋には置かれていた。関連すると思われる資料は袋に入れて帝都に持っていく必要がある。ライカが一生懸命袋に詰めている。


 「カノン、話はできたかい。」


 「ああ。事態を説明したらミトも付いてこれるみたいだ。砂漠の走り屋たちも準備してくれている。」


 「そうかい。それは嬉しい誤算だね。」

 

 「ミトと一緒に冒険出来るの楽しみ! 」


 悪い事態だが、ライカの笑顔に癒やされる。


 「カノン、ぼさっとしていないで手伝ってくれよ。」


 「ああ。すまない。オレがこっちの机を担当するよ。」



 書類を仕分けて袋に入れるだけで一時間はかかった。急いで門に向かうとミトと砂漠の走り屋たち、街の住民が大勢集まっていた。


 「オレたちがカノンたちを責任持ってマジクトまで連れてってやるぜ。」


 「ボス、ありがとうございます。」


 「いいんだ。お前はオレたちの街を救ってくれたんだから。礼を言うのはこっちの方だ。急ぐんだろう。乗ってくれ、ダチ公! 」


 手短に街の皆と別れを済ませて荷台に乗る。書類が袋いっぱいだから荷台じゃないと落としてしまう。


 街の皆に手を振る。ミトは少しだけ寂しそうな顔をして手を振っていた。


 「飛ばすぜ。捕まってな。」


 蠍が砂漠を駆ける。この速さなら昼までにはマジクトに着くことができそうだ。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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