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砂漠の街サンドタウンへ

 オレはエドガーを痛い目に遭わせた後、ロミと作戦を立てた。


 西門の憲兵にロミが報告する。


 「キミ、僕は魔法学校の校長ロミだ。今、僕の家の前で帝国騎士が倒れていた。助けに行ってくれ。」


 慌てて憲兵が武装して駆け出す。


 憲兵全員を門から引き離す事はできなかったか。憲兵が一人だけ残っている。


 「ロミ様は行かれないんですか。」


 どうもロミを怪しんでいるようだ。


 「そうだね。行きたいんだが…今日、魔法学校での暴走があっただろ。後処理で時間が押しているんだ。すぐに出ないと調査に間に合わない。キミ、この手紙をルノガー将軍に届けてくれないか。急を要する。頼んだよ。」


 「ええ。分かりました。お気をつけて! 」


 ロミとライカは門から出ていった。


 オレは西門から少し離れたところから、闇に乗じて、壁をよじ登った。


 作戦通りだ。




 作戦はシンプルだ。オレからルノガー将軍に伝言しても説得力はないだろう。ただ、これが帝国の賢者であるロミからであれば話は別だ。いい加減、逃げ回るのも面倒になってきたし、牽制の意味も兼ねてルノガー将軍に手紙を出す。


 オレは西門に向かいながらロミにお願いした。


 「ロミ、お願いがあるのだが、ルノガー将軍宛に手紙を書いてくれないか。」


 ロミは驚いた顔でこちらを見ている。 


 「手紙の内容はこうだ。カノンがエドガーに襲われた。帝国の意図は分かるが、私が共に旅をしてカノンを監視する。教会の怪しい動きがあり、研究がてら教会の動きを探ると。」


 「それは名案かもしれないね。わかった。僕に任せておけばいいさ。」


 ロミが自分の胸をドンと叩いた。


 「ああ。これで帝国は一旦は手を出してこないはずだ。教会の動きは逐一報告していたんだ。整合性は取れている。」


 「カノン、言っていることは分かる。でも…なぜ手紙なのさ。僕のクロスケならすぐに将軍にも伝えることができるじゃないか。」


 「いやこの手紙は誰かに盗み見してほしいんだ。そうすれば教会も表立って計画を進めずらいだろう。オレと言う犬が計画を嗅ぎ付けるかもしれない。教会の動きが遅くなれば万々歳だ。それに教会の手が帝都ではなくオレに向けば返り討ちにできる。」


 「なるほど。なるほど。カノンは賢くなったさ。」


 「まあ悪知恵は働くようになったな。」


 オレがそう言うと、ロミは笑った。


 「その作戦で行こう。」




 作戦は全て計画通りに進んだ。無事に魔法都市マジクトを出れたし、手紙も出せた。





 歩き始めて数時間は経っただろうか。


 砂漠を歩くのは疲れる。足が砂に取られるからだ。それに、夜の砂漠はすごく寒い。


 ライカは毛がモフモフだから良い。人間には少し寒い。


 ロミが魔法で火を灯しているが、満月に近い夜だ。月明かりだけでも歩ける。


 「カノン、僕は疲れたよ。冒険者と違って普段から歩かないからね。」


 ロミの足取りが重い。フラフラと歩いている。


 「大丈夫か、ロミ。ライカ、ロミを乗せてやってくれ。」


 ライカが吠える。優しい子だ。


 「ごめんよ。鍛錬不足だ。」


 そう言ってロミがライカに跨がろうとした時、ロミがよろめいて倒れた。


 「大丈夫か。」


 ロミを起こそうと手を差し伸べると手が熱い。


 慌てて額に手を当てると高熱が出ている。


 「すまないね。初日から足を引っ張ってしまった。」


 「良いんだ。オレたちは仲間だ。そんなときもある。」


 「ライカちゃんの上で休ませてもらうよ。」


 「ああ。毒ってわけでもない。環境が変わって疲れたんだろう。今日は昼からいろいろなことがあった。」


 ロミが力なく頷いて目を閉じだ。


 砂漠の街サンドタウンまでは、歩いて数時間はかかる。ライカに乗せて走ってもいいがロミの体に負担がかかるだろう。


 ロミがただの体調不良であればいいが、地域病と言われる疫病にかかっていれば命に関わる。


 「ライカ少しだけ急ごう。ロミに負担がないギリギリの速さで進もう。」


 ライカがワオンと吠えた。


 どんどん進むが、一面広がるのは漆黒の砂漠。本当にたどり着くのだろうか。迷ったらどうしようかと、不安になってくる。



 目の前から火が何個も動いているのが見える。こちらに向かってきているようだ。


 警戒していつでも剣を抜けるように準備する。



 いかつい男たちが現れた。十数名はいるだろうか。皆、奇抜な髪型をしている。それにサソリに乗っている。


 ライカが吠えないし、悪い奴らではなさそうだ。


 「おい、お前たちこんなところでなにをしている。」


 男がオレに言った。


 「オレたちは冒険者だ。砂漠の街サンドタウンに向かっているんだが、彼女が熱を出してしまってな。」


 「本当か。」


 男の一人が駆け寄り、ロミの額に手を当てる。


 「兄貴、本当だ。彼女すごく熱いぜ。」


 「そうか。砂漠に来た奴がよくなる症状だ。その女を攫っているわけじゃないんだな。」


 男がオレを睨む。


 ロミが力なく言葉を発する。


 「僕は攫われてなんていないさ。彼は仲間だ。むしろ足を引っ張ていて罪悪感で死にそうだよ。」


 男が頷く。


 「よしわかった。オレたちが砂漠の街サンドタウンまで送ってやるよ。」


 サソリに紐をつけて引っ張っている男は正直怪しい。怪しいが、ロミの体調を考えると助けてもらうべきだろう。


 「すまない。オレはカノン。そっちはロミで、この子はライカだ。」


 「オレたちは砂漠の走り屋。サソリの暴走族と言えばオレたちのことよ。オレは皆からボスと呼ばれている。サソリの暴走族の頭だ。」


 ボスはえーちゃんと言うらしいが、皆ボスと呼んでいる。ボスと呼んだ方が良さそうだ。


 「ボス。ありがとう。助かった。」


 荷台を付けているサソリにロミを寝かせる。


 オレはボスのサソリの後ろに乗った。サソリは砂漠を駆ける。すごいスピードで進むが、ほとんど揺れない。サソリにこんな使い方があるなんて知らなかった。普通は馬じゃないのか。


 「ボスは普段、何してるんだ。」


 「まあ一応、冒険者だ。砂漠で魔獣が暴れ回ってるんだ。砂漠を走る趣味も兼ねて魔獣を狩っている。最近、悪さするやつも多くて警戒させてもらった。不快な思いをさせたな。」


 外見はいかついが、すごい良い人なんだろう。


 「いや、それが正しい反応だろう。ボス、感謝する。ロミを助けてくれてありがとう。」


 「困った時はお互い様だろ。さあ飛ばすぜ。舌を噛まないように捕まってな! 」


 サソリに乗ったオレたちは爆速で進んだ。

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