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ロミVSアドルフ

Side:ロミ

 魔人化したアドルフの魔力は上がっていた。


 僕がアドルフを倒すしかない。アドルフに引導を渡すんだ。


 無詠唱で絶対零度<アブソリュートゼロ>を無詠唱で放つが、アドルフも無詠唱でインフェルノを放ち相殺される。


 魔法のランクも相性も絶対零度が相殺されるわけがない。それだけアドルフの魔力は上がっているんだ。


 「どうした、ロミ。今までのように澄ました顔をしろよ! 」


 アドルフが睨む。


 「まだまだこんな魔法で僕に勝ったと思わないでほしいね。裁きの天光<セレスティアル・レイ>」


 魔人なら光魔法が効果的なはずだ。


 天から光の雨がアドルフに降り注ぐ。


 アドルフはファイアウォールを展開するが、セレスティアル・レイが貫く。


 「くそっ痛え。魔人化してもロミのほうが強いのかよ。」


 アドルフは魔人化しているとはいえどダメージが入っている。やはり光魔法でやるしかない。


 「もう良いだろアドルフ。キミは間違えている。」


 「間違えている? 違うね。ロミ、俺が正義だ! 」


 アドルフが無詠唱でインフェルノを何発も放つ。


 これは防ぎきれないかもしれないね。でも僕が負けたら皆殺しされるだろ。僕は負けるわけにはいかないんだよっ!


 ウォーターウォールで水の壁を張る。一枚じゃダメだ。何枚も貼るが壁が破壊され、業火が直撃した。


 熱い。熱で息がうまくできない。魔道士のローブを着ていなければ丸焦げだった。


 衝撃に負けて、膝をつく。


 「どうだ、ロミ。格下に負ける気持ちは。わからないだろうな。天才には他人に脅かされる怖さが。」



 「ふざけるんじゃないよ。何かと天才、天才と持ち上げて、面倒事も嫌な顔せず全部やってきたんだ。僕のなにが分かる。キミに僕のなにが分かるんだよ! 」


 杖を使い詠唱を開始する。僕の全てをぶつける。


 「詠唱か。これだから人間は弱くて困る。俺が勝ったらロミも魔人にしてやるよ。魔人はいいぞ。魔力が体中に満ち溢れている。」


 アドルフは笑っている。勝利を確信しているのだろう。余裕の表情だ。


 「絶対零度<アブソリュートゼロ>!」


 「クックック。また同じ魔法か。俺は天才を上回ってしまったようだな。」


 アドルフがインフェルノを放つ。


 魔法がぶつかり相殺される。


 アドルフが笑った。


 ここまでは想定通りさ。


 僕は二重で詠唱をしていたんだ。


 「貫け! 」


 絶対零度<アブソリュートゼロ>の後に光の光線<シャイニングレイ>を放っていたんだ。アドルフキミは気がつかなかっただろ。


 「なにぃぃい。魔法を同時に放つだと。そんなのできるなんて人間じゃねえぇぇぇ! 」


 油断をしていたアドルフを光の光線が包む。


 黒焦げになったアドルフが崩れ落ちた。魔人化して強くなったとは言えど、黒焦げになれば生きてはいないだろう。


 アドルフは動かなくなった。これで終わりだ。念のため、倒れているアドルフに近づいて生死の確認する。息はしていない。


 僕はポツリと呟いた。


 「残念だよ。キミは才能があった。キミは火の魔法が得意だった。努力すれば賢者にも慣れたのに、嫉妬の炎に焼かれたんだ。馬鹿者。」




 カノンとライカは大丈夫だろうか。


 後を振り返ると、デュラハンロードが真っ二つになっている。どうやらカノンとライカが勝ったようだ。


 カノンの咆哮が聞こえる。ギリギリの勝負だったのだろうな。


 カノンに近寄り肩を叩く。


 「カノン、ライカ。よくやってくれた。ありがとう。魔法学校の校長として感謝を述べるよ。」


 お礼を言い、頭を深々と下げた。


 「礼なら要らない。明日からの旅で助けてもらうからな。デュラハンロードはやばかった。もう戦いたくない敵だ。」


 カノンもライカも外傷はほとんどないが、クタクタに疲れているようだ。


 「カノンもライカもゆっくり休ませたいが、すぐにここを出ないと直に憲兵が集まる。すぐにここを出てほしいのさ。」


 「そうだな。こんなところで捕まりたくはない。」


 カノンが頷く。


 「僕は後処理があるから先に家に帰っていてくれ。帝都の憲兵に事の顛末を報告する必要があるし、教師たちの回復や後処理をする必要があるのさ。」


 「ああ。そうだな。先に家に戻らせてもらうよ。これだけの騒ぎだ。ロミもやることがあるだろうし、明日の出発は無理だろう。申し訳ないが、疲れた。先に休ませてもらうよ。」


 「もちろんだとも。カノン本当に強くなったね。僕は賢者だからデュラハンに勝ったと言っても信用されないと思う。カノンの名前は出さないけど、帝国議会に疑われる可能性は高いだろうね。」


 「それはしょうがないだろう。デュラハンロードを倒せるやつなんて帝国に数十人といないんだから。ロミの後処理が終わったらすぐに街を出よう。」


 僕が頷くとライカとともにカノンが出ていった。


 僕は倒れていた教師たちに回復魔法をかけて回る。


 皆、気絶はしているが誰も死んでいない。同僚たちを殺さなかったのは、アドルフの最後の優しさだったのかもしれない。今ではもう確かめようがないのだけどね。


 憲兵と先生たちがカノンたちが出てから数分後に到着した。事の顛末を話す。彼らの目は誤魔化せたが、帝国議会にはうまくはいかないだろうな。彼らはバカではない。いずれカノンが居たとバレる可能性が高いだろう。


 カノンを巻き込んでしまった。申し訳ないことをしたな。でもカノンがいなければ魔法学校だけでなく、魔法都市マジクトが滅ぼされていた。


 デュラハンを魔法で従わせると決定したのは僕だ。魔法都市が戦争に巻き込まれた時に、物理攻撃で押されて鎮圧される事を恐れたんだ。だから防御力が高いデュラハンを導入したんだけど、裏目に出た。アドルフが裏切るとは思わなかった。


 怪我した先生たちを保健室に運んでもらい、憲兵たちは帰っていった。


 一人研究室に残る。


 僕は座り込んだ。さすがに疲れた。


 アドルフの暴走は僕が全部悪い。


 どこで間違えたのだろう。僕はアドルフをかわいがっていたはずだ…いや、そんなことはないか。僕はコミュニケーションが下手くそだ。アドルフの好意は気がついていたが興味がなかったんだ。アドルフの好意には答えられなかったし、彼を追い詰めていったのは僕だろうな。


 天才と持て囃されていても、アドルフを殺すことしかできなかった。なにが賢者だ。僕なんてちっぽけな存在だ。


 一方で、死者を出さずに生徒や街の住民を救えたのは事実だ。カノンとライカの力があってからだけどね。


 決めた。


 僕は強くなる。他人とコミュニケーションを取れるようにもなる。それに、魔法だけじゃダメだ。僕も物理攻撃の練習をしよう。剣は重いから他の武器でカノンに教えてもらおう。


 次のアドルフを出さないために、出したとしても力になれるように。


 やれることをやるんだ。


 まずは自分のできることに集中しよう。帝国議会への報告書も書かないといけないしね。


 答えを出すのはそれからだ。

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