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狐の村の不思議③

 アルスは咆哮する。


 オレは笑みが溢れる。これだこの生命のやり取り。たまらなく興奮する。


 魔人化の影響だろうか。先程斬った左腕が生えてきている。


 「化物かよ。」オレは呟く。


 アルスが「殺す。殺す。殺す。」と言いながら、魔法を放つ。


 サンダーボルトだ。


 三発飛んで来るが、横っ飛びで躱す。


 躱したところをアルスが斬りかかる。


 体勢は崩れているが、寸前のところで剣で弾き、アルスを蹴飛ばして距離を取る。


 速い。


 こちらも本気を出す必要があるようだ。


 「どうした。カノン。お前のほうが弱いみたいだな。」


 「ふん。そう言うのは一撃でも当ててから言ってくれ。お前が教会の三銃士で良かった。お前みたいな雑魚が三銃士なら、教会の人間でオレより強いやつはいないだろうからな。」


 「うるせえ。ぶっ殺してやるっ。」


 再び、アルスがサンダーボルトを三発放つ。


 三発がアルスが無詠唱で使える限界なのだろう。


 「たしかにお前は魔人化して強く、そして速くなった。でも無詠唱が使えるのはお前だけではない。」


 オレは無詠唱でサンダーボルトを五発放つ。


 「なにっ。」


 サンダーボルトが三発相殺されて、二発がアルスに当たる。


 「どうした。こんなものか。もう少しやると思っていたが残念だ。残念だよアルス。」


 「うるせえ。殺す。ぶっ殺してやる。」


 アルスが咆哮して、サンダーボルトを放つが。先程と同じことだ。


 無詠唱で相殺する。


 「どうしたもう手詰まりか。魔法でも剣でも負けるってどんな気分だ。」


 アルスは再び、顔を真っ赤にして突っ込んでくる。


 愚かだ。感情的になって戦闘が勝てるならオレだって感情的になるさ。


 スキル<ツバメ返し>で斬る。


 二撃。目にも留まらぬ速さで二回斬る。


 今度こそ、手応えありだ。


 アルスの胸にバツ印が付き、血が流れ出し。アルスが膝をつく。


 顔も死を意識したのだろうか、先程より覇気がない。


 「くそっ。こんなところでオレが負けるわけない。負けるわけないんだ。」


 「もういい。時間の無駄だ。お前はオレには勝てない。」


 「ふざけんな。俺様が負ける訳がない。殺す。殺してやる。」


 とどめを刺そうと、近寄ると、北の方から大きな咆哮が聞こえてきた。


 「ふん、時間だカノン。計画が終わった。今日はここまでにしておいてやる。お前はオレが殺す。必ず生き残れよ。」


 そう言うと、アルスは空高く飛んだ。


 「待て、逃げるのか。アルス。」


 「今日のところは、ここまでにしておいてやる。教会の計画どおりだ。決着は後日つけよう。ふさわしい場を用意してやる。せいぜい死ぬんじゃねえぞ。」


 アルスは西に飛んで去っていった。空を飛ばれると追いかけられない。ここで終わりか。


 先程、咆哮が聞こえた北を見ると、でかい白狐が見えた。


 でかすぎる。建物よりでかいぞ。


 北に向かいながら、ライカを笛で呼ぶ。


 北の祠に到着する前にライカと合流する。ライカは人型のままだ。


 「ライカ。狐の頭領たちは何か言っていたか。」


 「うん。あれが封印されていた伝説の白狐みたい。」


 伝説の白狐はおとぎ話でみたことがある。100年前に帝国内で暴れて帝国を滅ぼしかけたとかなんとか。勇者が最終的に伝説の剣で倒したと聞いたが。まさか目の前に現れるとは。


 「そうか。わかった。ライカは人型だ。戦える状況じゃない。頭領に対策を聞いてくれ。オレは白狐を食い止める。」


 ライカが頷く。


 ライカと分かれて、北に向かう。




 目の前には白狐が咆哮している。


 目の前に立つとでかすぎる。全長8メートルはあるんじゃないか。尻尾も三本見える。これが伝説の白狐か。


 唾を飲み込む。


 これだけ大きければオレが本気を出せるな。楽しみだ。


 最初から全力で行こう。


 無詠唱でバフを重ねがけして、斬りかかる


 傷はつけられるようだ。


 だが、これは時間がいくらあっても倒せない。


 白狐が尻尾を払う。


 うぉっ。


 思わず声が出る。


 剣で受けたが一メートルはノックバックしたぞ。


 尻尾での攻撃も三発別々の角度で飛んでくるんだ。これは厄介だ。


 チマチマ攻撃していても埒が明かない。


 距離を取りながら、詠唱を開始する。


 「聖魔法ホーリーチェイン」


 光の鎖が五本、白狐に突き刺さる。


 これで動きが少しでも制限できればしめたものだが…どうも無理そうだな。


 白狐は意に介さず、噛みついてくる


 バックステップで躱しながら、顔を斬る。


 白狐が嫌がる素振りをして尻尾を振る。


 どうやら、顔への攻撃は効果があるみたいだな。でもオレの攻撃では止めを刺すことはできそうにない。


 白狐が暴れて村を破壊されても困る。こんな攻撃を一撃でもくらったら即死だ。


 ゾクゾクする。


 「ご主人様! 」


 後から、ライカの叫び声が聞こえた。


 振り返る余裕はない。視線を外せば屠られる。


 「これ受け取って! 」


 ライカが何かを渡したいみたいだ、白狐の顔にライトニングを当てて、時間を作る。


 「ライカ、これはなんだ。」


 ライカがほおった物を受け取る。


 細長い木箱だ。


 「旅人よ、その剣を使え! 」


 狐の頭領が叫ぶ。


 「なるほど。ありがたい。」


 木箱を開けて、剣を掴む。剣の刃が黒い。禍々しいオーラを感じる。


 両剣を構える。


 「来いよ。白狐。お前も苛ついているだろう。」


 白狐が腕で薙ぎ払うのを左手の以前から使っている剣で受ける。


 新しい剣でスキが出来たところを斬る。


 切れ味抜群。


 白狐の腕から血が吹き出す。


 白狐がバックステップで距離を取り、咆哮を上げた。

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