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団長エドガーの災難Ⅷダンジョンで苦戦する

 翌日、馬小屋で寝たことで全身が痛いが、ダンジョンにカノンを探しに向かう。


 ギルドに向かうと冒険者たちは俺様に目すら合わせない。


 「ニーナ。約束だ。この街の冒険者たちは腰抜けだ。お前が案内しろ。」


 ニーナが怪訝そうな顔をする


 「私はそんな約束していません。」


 「お前ごときが口答えするのか。ギルド本部に報告するぞ。」


 ニーナは可愛い女だが生意気だ。


 「どうぞ勝手にして下さい。冒険者ギルドに依頼を出して冒険者を探すのが、依頼するルールです。何も間違えたことはしていません。」


 「ほう。生意気だな。今、帝国騎士の権限で逮捕しても良いんだぞ。」


 ニーナの顔がむっとする。


 従わざるを得ないだろう。俺様に媚びへつらっていればいいんだ。


 「分かりました。ダンジョン案内しますが、私は戦闘に参加しません。あくまで案内だけであればさせていただきます。」


 最初から素直にそう言えばいいんだ。


 「よしっそれでいい。帝国騎士の付き人ができるんだ。誇りに思え。お前たち地下40階までのダンジョンなら回復なんて要らないだろう。カノンを捕まえに行くぞ。」


 ニーナを先頭歩かせて鉱山に入る。


 街中では住民からすごく睨まれたが、俺様だってこんな田舎今すぐ去りたいさ。金貨500枚のためだ。終ればすぐに帝都に帰ってやる。




 二十階までは順調に進んだ。十階のゴブリンロードも連携で倒した。傷は負ったがフラメルの回復すれば大丈夫だ。


 問題は二十階のボス、ウルフロードだ。


 扉を開けた瞬間から、敵意丸出しで唸っている。


 先日、森で俺様たちが戦ったウルフよりは小さいが、それでも十分に大きい。俺様たちで勝てるだろうか。


 前衛はクロスナーと俺様が務める。


 後衛にフラメルで補助魔法と魔法で攻撃して、シイナにバランスを取ってもらう作戦だ。


 ウルフロードの攻撃は重くて速い


 クロスナーと俺様は防戦一方になる。


 「フラメル! ちゃんとバフかけろ! 体が重いぞ! 」


 「もうかけてますよ! 」


 「重ねてかけろ! 全然効いていない! 」


 どうなってんだ。意味がわからん。


 戦場ではフラメルがバフをかけたら、体がすごく軽くなっていた。空だって飛べる感覚。敵の攻撃が止まって見えた。今はその感覚がない。バフが効きにくくなっているのか。


 ウルフロードの尻尾が俺様に飛んでくる。


 チッしまった。戦闘中に余計なことを考えていた。


 避けきれない。


 もろにお腹に尻尾がめり込む。


 鎧が欠けて俺様は吹っ飛んだ。


 「クロスナーしっかりと踏ん張ってくれ!シイナ、回復薬をくれっ! 」


 「団長。やってるけど攻撃が当たらないんだ。」


 クロスナーの大剣での連続攻撃を楽々とウルフロードが躱している。


 どうなってるんだ。クロスナーの攻撃も戦場にいた頃と比べると、速度が二分の一くらいに見える。


 「エドガー、ポーションはないわ。あなたが要らないって言ったじゃない。」


 シイナが叫ぶ。


 くそっ。俺様たち騎士団がこんなところで苦戦するなんて。


 ポーションがないのもまずい。


 どうする。撤退するか。いやもう失敗は許させない。


 「エドガーさん苦戦していますね。回復薬売りましょうか。」


 後で戦闘を見守っていたニーナが俺様に叫んだ。


 「気が利くじゃねえか。よこせ! 」


 「お代が先です。」


 がめつい女だ。これだから冒険者ギルドは嫌いなんだ。


 「いくらだっ! 」


 「そうですね。金貨10枚と言ったところでしょうか。」


 「ふざけるな。ポーションの相場の100倍だなんて払えるわけねえだろっ! 」


 「要らないなら結構です。頑張ってくださいね。ウルフロードに負けることなんてあれば冒険者に笑われますよ。」


 煽りやがって。クソアマが。


 本来であればカノンに回復薬を持たせていた、アイツの役目だったんだ。


 背に腹は代えられない。


 「払うからよこせっ! 」


 入り口まで下がり、ニーナの手から奪う。


 一気に飲み干す。これで万全だ。


 「シイナも前線に加わってくれ、三人で押し切るぞっ! 」


 俺様、クロスナー、シイナの三人で全身傷だらけになりながら、なんとかとどめを刺した。


 フラメルに回復をさせたが、魔力切れらしい。へたり込んでいる。


 根性がないやつめ。クロスナーが不安そうな顔で言う。


 「団長、このままではまずい。まだ二十階だぞ。」


 「たしかに。まずいな。回復アイテムもないし、これから魔獣も強くなっていくだろう。」


 不穏な空気が流れる。ニーナが口を開いた。


 「そう言えば、誰かがカノンさんを最下層あたりで見たとか言っていたかも。」


 「なにっ本当か。だったら撤退することは出来ないな。」


 カノンに会える喜びで皆も元気になる。金貨カノンが目の前にあるんだこんなところで引けるか。


 「エドガー待ってよ、このまま進むのはまずいわ。フラメルの魔力も尽きかけてるし、私たちだってボロボロじゃない。」


 シイナが冷静に分析して進言する。


 一理ある。


 「そうだな。難しいところだが…」


 「私が地下40階まで連れて行ってもいいですよ。」


 ニーナが笑って言った。


 「本当か。」


 「ええ。その代わり、ギルドへの緊急依頼としてお金はしっかりといただきますが。」


 「お前、戦えるのか。」


 「一応、ギルドマスターになったばかりですけど、それなりに戦えますよ。少なくともソロで四十階までは行ける実力はあると思います。」


 二十階で苦戦している俺たちのあてつけか。


 この女、いつか跪かせてやる。


 「ありがたい申し出だな。いくらだ。」


 「そうですね。緊急依頼なので金貨40枚は相場かと思います。」


 温厚な俺様もさすがに切れた。


 「ふざけんな。さっきのポーションと合わせて金貨50枚だと。ぼったくってんじゃねえよ。帝国騎士様だぞ! 」


 「帝国騎士だからこそ払えるでしょう。」


 どこまでの生意気な女だ。まあ良い。カノンを捕まえれば金が入る。


 「分かった。最下層まで俺様たちを連れて行かなければ払わない。それでいいか。」


 ニーナが頷く。


 「よし。交渉成立だ。ニーナお前が先を歩け。お前たち休憩はもう良いだろう。先に進むぞ。」


 ニーナを先頭に歩き始める。


 ニーナの後ろ姿を嫌らしい目で見ながら笑いが止まらない。


 払うわけねえだろ。逮捕すると脅して踏みたおせばいい。バカな女だ。


 俺様は天才だな。


 

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