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ノース鉱山防衛戦Ⅰ 不穏な足音

サンドラが慌てている。警戒の鐘が鳴って居るということは、よっぽど大事と言うことか。


ニーナさんが「慌てないで。状況確認をしてください。」と言い、サンドラを落ち着かせている。


男がギルドに駆け込んできて叫ぶ。


「サンドラさん、ニーナさん大変です。スタンビートだと思われます。魔獣が街に向かって進んでいます! 目に見えるだけでも魔獣の数は300はゆうに超えていて。後一時間もせずに街まで到着する見込みです! 」


 スタンビートとは魔獣がダンジョンから外に出て暴れ出す行為を指す言葉だ。


「なんでスタンビートが起こるんですか…そんなこと、この十年は聞いたことがありません。」


ニーナさんが走ってきた男性に水を差し出す。男はノンストップで見張りから走ってきたのだろう。肩で息をしている。


 「いえ。明確にはわかりませんが、どうもダンジョンのドアが閉め忘れたんじゃないかと思われます。近づけるわけもなく、あくまで仮説ですが。」


 ニーナが、振り返りサンドラに聞く。


 「サンドラさん、ダンジョンの扉に鍵をかけてちゃんと締めましたか? 」


 サンドラの顔が青ざめている。ダンジョンの扉を閉めるのは、ギルマスの仕事らしい。


 「いや…その、俺はカノンの調査で忙しかったから…。」


 サンドラが口籠る。どうやら、サンドラの締め忘れが原因みたいだ。


 「おう。ニーナはいるか。」


 屈強な男たちと、冒険者の格好をした人が数人入ってきた。


  「あっ、頭領! 」


 ニーナさんが手を振る。


 「挨拶は抜きだ。どうなってやがる。」


 屈強な男たちは鉱山で働いている鉱夫を引き連れている。皆を代表して話をしているのが頭領なのだろう。


 「どうやらスタンピードみたいです。ダンジョンの扉が開いているらしくて、魔獣が村に向かってきています。それ以外にも原因は何かしらあると思いますが不明です。」


 頭領の後ろで聞いてい男たちがざわめく。


 「どうする。皆逃げるか。」「冒険者は十人しかいないし。10倍以上の敵に立ち向かうのは無理だ! 」

 「でもそうすると、街はまた壊されるぞ。女、子どもは逃げきれねえ。」

 「俺は逃げるぞ命が何個あって足りねえ。」



 「お前たち黙れ。」


 頭領が一喝すると、皆は黙り込んだ。


 「締め忘れってことはギルマスの責任か。今責めても何にもならねぇ。10年前のスタンビートでは街の女や子どもも多く殺された、逃げたところで無駄だろう。ギルドとしてはどう考えている。」


 「その…そうですね…できれば逃げようかと…」


 自分の責任でスタンビートが起きてるのに、サンドラは最低な男だ。


 サンドラの胸ぐらを頭領が掴む。


 「おいお前、いい加減にしろよ。今殺してもいいんだぜ。」


 「まっ…待ってくれ。わかった。戦うよ。」


 「こんなやつに俺たちのことを任せられねえ。ニーナお前が指揮を取ってくれるか。」


 ニーナが頷く。


 「はい。わかりました。鉱山の皆さんも戦闘に不慣れだと思いますが、手伝って下さい。三人一組でパーティを組んで、魔獣に当たりましょう。防衛線は我々ギルドの冒険者が受け持ちます。まずは多すぎる数を減らしましょう。」


 「鉱山の男達は三十人は超えるが、筋肉だけの男たちだ。戦闘経験は少ない。そうしよう。」


 「ええ。でもそれだと、守るだけでいつかは魔獣の数量に押し切られてしまいます。扉を閉めないことには勝利はないでしょう。でも冒険者も十人はいないので、魔獣の中を突破していくのは正直かなり厳しいかもしれません。」


 男がギルドに入ってきた。


 姿を見る限り、彼は憲兵だろう。


 「魔獣の数は三百は超えている。骸骨ロードの姿も見えた。俺たちの戦力では無理だ。女、子どもだけでも逃がせっ! 」


 皆、黙り込む。


 死が現実味を帯びている。当然だ。


 「もう時間もありません。女性と子どもは初級冒険者に引率してもらって、サンタルークの街まで避難してもらいましょう。」


 ニーナさんが提案する。


 「ああ。俺たちが最低でも逃げる時間を食い止める。ってことか。」


 頭領も発言をして黙り込む。




 吹っ切れた顔をして頭領が皆に伝える。


 「俺たちは生きては戻れないだろう。だが、女とこどもでも逃がせば、ノース鉱山は死なない。いつでも復興できるんだ! 10年前の時のようにな。お前たち、3分で別れを済ませろ。その後、広場に全員集合させろ。俺たちが愛した奴らだ。俺たちが最後は救うぞ! 」


 男たちは、悲しそうな顔をしていたが、勇ましい顔に変わる。すごい統率力だ。


 雄叫びをあげてギルドを出て行った。


 ニーナさんがオレに話しかけてくる。


 「カノンさん。今日でお別れです。絶対にS級冒険者になれると思いますのでこれからも頑張って下さいね。最後に隣町サンタルークまでの引率を副ギルドマスターとしてお願いします。歩いて数時間の距離ですし、助けがサンタルークの街から冒険者が来ます。合流するまで街道にはほとんど敵は出ないと思いますのでカノンさんなら大丈夫です。」


 そう言うと、ニーナがオレに抱きつく。


 抱きついた手が、いや全身が震えている。


 「わかりました。責任を持って引率しますね。」


 「ええ。どうか、お元気で。」


 と言うと、ニーナは奥に入っていった。サンタルークに連絡するためだろう。


 オレは呆然としているギルマスサンドラとギルド内で二人っきりになってしまった。


 外が騒がしい。地響きも少しずつ大きくなってきた。


 引率も依頼されたし、広場に向かおう。


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