カノン冒険者ギルドに登録する
カノンとライカは数日かけて商人の街サンタルークにたどり着いた。
着いてから数日間、宿でゴロゴロして犬型に戻ったライカと遊んで過ごしていたが、それも飽きてきた。
暇だ。
フェンリルからもらった金貨500枚はある。
働く必要はない。
もう戦場には行きたくはないが、美味しいご飯を食べて、女と遊んでも、生死をかけたゾクゾクした感覚は味わえない。
毎日が退屈なのだ。
今日は何をしようか。目的なく街をライカとぶらぶら歩く。
情報収集も兼ねて商人に話しかけるが、どうも警戒されているみたいだ。
どうも最近では帝国の治安が悪くなっていて、旅人を装った盗賊が増えていているらしい。
だから旅人だと言うと怪しまれたのか。
話を聞くと、街の北にノース鉱山という名所があるみたいだ。ミスリルや金などが発掘できる鉱山で、良い素材が安く買えるらしい。
どうしよう。暇だしノース鉱山にでも向かおうか。
でも、途中で盗賊と勘違いされて厄介事には巻き込まれたくないな。
ふと見上げると、冒険者ギルドがあった。
「そうだ。冒険者だ! 冒険者になろう! 」
勢いのあまり大きな独り言を出してしまった。
周りから見られる。すごく恥ずかしい。
冒険者は冒険者ギルドに身分を保証される。これで旅をしても怪しまれることもないだろう。まさに名案だ。
冒険者ギルドに入ると、中は人でごった返していた。
受付に進み。冒険者の登録を申し込む。
受付の女性が、オレの顔を見てあっと言った。壁に貼られていた捜索願の紙とオレの顔を見比べている。
しまったな。帝国から捜索願を出されていたか。
「他人の空似。人違いですよ。」と言って、ギルドを出た。
危なかった。迂闊な行動だったか。
ギルドを出て、走って人目が少ない場所に移動する。
帝国騎士団くらいだったら撃退することはできるが、面倒事には巻き込まれたくはない。
そうだ。ノース鉱山のギルドで登録しよう。
田舎のギルドなら顔を隠せばバレないだろうから。
◇
ノース鉱山に向かう。すぐにサンタルークの街を出た。
距離的に、翌朝には着くみたいだ。
念のため、顔がバレない様に目だけを隠す仮面を露店で買った。
顔の傷が気になるとか言えば、大丈夫だろう。多分。
道中、魔獣も見かけたが、ライカが先に走って狩ってくれる。人間と比べられないくらい耳が良いのだろう。
索敵能力が異常に高い。
街までの距離の半分は進んだだろうか。『ノース鉱山まで数時間の距離』と看板に書かれている。
夜中に行くのも訳ありだと思われて疑われても困る。
今日はここでライカと野宿しよう。
ライカがいれば、警戒せず寝れる。火を焚かなくてもライカを抱くと温かいしモフモフが気持ちいい。安眠できる。
誰にも気づかれず、魔獣に襲われないで熟睡できるのは旅する上ですごいメリットだ。
ライカを抱きしめ、仮面を外し、眠りにつく。
明日には冒険者だ。新しいことに挑戦するのはワクワクする。
◇
街に入る前に仮面を付ける。
ノース鉱山のギルドには人は数人しかいない。田舎のギルドなんてこんなものなのだろうか。いや、街中に鉱夫はたくさんいた。この街では冒険者の数が少ないのだけだろう。
バレないと良いが…。
「すみません。冒険者登録したいのですが。」
「はい。少々お待ちくださいね。」
受付の女性の胸元を見ると、名前がニーナと書かれて、役職:副マスターと書かれているのが見える。
ニーナさんは茶髪で長髪の女性だ。目がくりくりしていて小動物みたいだ。すごく胸も大きくて、背は少し小さいが姿勢が良い。年齢もオレより少し上の20歳くらいだろうか。
頼む。バレないでくれ。
「こちらの紙を書いてくださいね。名前と職業を書いて、水晶で能力値を測れば終わりです。」
名前をライカと書く。バカ正直にカノンと書く必要はない。
職業を書くところで、筆が止まる。
オレの職業はなんなのだろう。
帝国騎士か。書けるわけがない。騎士と書いてもいいが、騎士は上位職だ。目立っては困る。
「ライカさんはテイマーじゃないんですか。ウルフに首輪付けて連れていますし。」とニーナが言った。
「ええ。そうでした。テイマーってあまり有能職でないので、なんて書こうって悩んでました。」
「嘘を書いちゃだめですよ。ライカさん。」
ニーナさんが優しく笑う。
そうですね。と言い、職業欄にテイマーと書く。
最後は水晶だ。自分の力をかなり抑えて水晶に手をかざす。
これで誤魔化せてくれ。
水晶を見るとランクは全てEクラスと表示されていた。
「ライカさん。能力はEクラスです。魔獣は強いので無理はしないでくださいね。Eランクあたりのクエストから受けてみて下さい。少しずつ成長すればいいんですから。」
ニーナさんは優しい。
「ありがとうございます。無理せず、頑張ります。」
そう言うと、後ろから声をかけれた。
「おい、ニーナそんな能力の低いやつ、断っちまえよ。」
振り返るとギルドマスターの名札を付けた男がいた。サンドラと書かれている。
「そんなひどい事言わないで下さい。サンドラさん、ノース鉱山のギルドは入会を断る決まりはないじゃないですか。」
ニーナさんが庇ってくれている。良い人だ。
「そんなんだから、ノース鉱山のギルドは舐められるんだよ。俺も早くサンタルークに戻りたいぜ。」
そう言うと、男は舌打ちして去っていった。
「ごめんなさいね。ライカさん。ギルマスが失礼なこと言って。」
「いえ。オレの能力が低いから悪いので、頑張ります。ギルドとダンジョンの説明してくれませんか。」
「はい。勿論です。」そう言うとニーナさんは丁寧に説明してくれた。
鉱山の中にダンジョンがあり、階層は地下40階まで。敵は一番強いボスでもCランク程度であるが、今のライカさんだと厳しいから、十階より下には行かないほうが良いと言われた。
夜になると、敵の動きが活発になりダンジョンを出てくるから、18時には門が閉められて、ダンジョンの出入りができなくなるらしい。
「丁寧に説明していただきありがとうございます。」
決まりだ。明日からダンジョンに籠もろう。
お礼を言って、ギルドを出る。
ギルマスのサンドラは嫌なやつだ。皆ギルドの職員は制服を着ているのがルールなのに、ギルド職員の帽子でなく教会の神父が被る黒い帽子をかぶっているのは気になる。
こんな田舎街では教会も悪さはしないだろう。さすがに考えすぎか。
今日は宿に泊まって、明日からダンジョン攻略だ。どんな魔獣が出てくるのだろう。
カノンはワクワクしてしまい、なかなか寝付くことはできなかった。
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