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二次元より愛を込めて  作者: デカ百足
ハツラツな彼女
9/47

ver.7.0 合言葉

 ピピピピ、ピピピピ……。


「うぅ〜ん……うっさい!」


 カチ。

 部屋に置いてあった目覚まし時計を止める。

 この音はどこでも同じなのか。本当に聞きたくない音。

 だけど、ここはいつもの場所とは違う。

 ()()()は適当に身支度をすませると朝食を食べるべく食堂に向かった。


 食堂で朝食をとるのは初めてだ。

 夕食はここで食べた。海鮮丼を注文したけど大変美味しかった。

 おっと、思い出すだけでよだれがへへへ。

 なぜかお腹は相変わらず減っていないようだけど、全然へっちゃらだ。


「おばちゃーん、朝食セットB!サラダ大盛りね」

「はいよぉ〜」


 ここのおばちゃんは「はいよぉ↑」ではなく「はいよぉ↓」というのがポイントだ。

 そういうところには目ざとく気がつくわたしなのであった。

 ちなみに朝食セットBは小さめのクロックムッシュとコンポタージュ、それからサラダ。

 定番といえば定番だけれど、やたら豪華に見えるのはおばちゃんの熟練の技なのか。


 ここで食べられる食事はレストランのようにいちいちお金を払ったり事前に食券を買う必要はないらしい。

 周りの様子を見ていて気がついたのだが、入学費かなんかと一緒に支払われているのか。

 それともそこまで考えられていないのか。


 ともかく、わたしはすぐに出てきた(用意されてたのかな)朝食セットBを受け取ると軽い足取りでテーブルについた。

 どうやら時間帯によって使用できるクラスが異なるらしく、わりと席取りには困ることはなかった。

 わたしはその時間指定とかは知らないからテキトーに来て座っているんだけどね。こういう人が多いとルールも意味をなさなくなるんだろうなぁ。

 とか思いつつ、


「いただきます!」


 備え付けのウォーターサーバーでまずはお水を一口飲み整える。


「っかー!普通の水だね!!」


 全然口に出してるので注目を浴びているが特に気にしない。

 水ではなく牛乳やオレンジジュースも頼めるのだが、体質的にそれらは忌避すべきだと過去のわたしから教わっている。

 そしてクロックムッシュをぱくついて感動していると、ドタドタと男の子二人組が食堂に入ってきた。


「やっぱり人生ゲームを朝3時過ぎまでやってたら寝坊もするわ!!」

「うはは……自分も起きられなかったくせにな……」


 片方はシャキシャキと、また一方は引きずられるようにしてその二人はやってきた。

 まだ時間的には余裕があると思うんだけど……。


「あっ!」


 時計を見て驚いた。

 わたしがクロックムッシュを楽しみすぎている間に思った以上に時間が進んでいたらしい。

 これが相対性理論ってやつなんか。


「…………」


 思い切り「あっ!」って叫んじゃったせいか、シャキシャキの人が思い切りこっちを見てきた。

 そんな見る?っていうくらい見てくるし。ちょっと失礼じゃないかな?

 わたしは残りの料理を急いでかきこむと返却口にトレー等を返して部屋に戻ることにした。


「アイツか」


 と、食堂を出るタイミングで聞こえたような気がした。


 ………………

 …………

 ……


 さて。

 部屋に戻ってきたはいいけれど、これからどうしようかな。

 もっと学校を巡って見たいのだけれど。

 自分が何年何組なのか、何をどこに持っていけばいいのかもよく分からないや。

 とりあえずカバンに教科書適当に入れて、うろついてみますか!

 この寮から学校へは思ったよりは遠い。

 学校の中にあればいいのに。道路を隔てて向こう側にあるものだから、どんなに急いでいても信号機に引っかかってしまえばおしまいだ。

 幸い信号は青だったので周りの生徒と同じようにしてそそくさと渡っていると校門の前に、今朝ドタドタと食堂に入ってきた二人組が何かを待つようにして立っていた。

 二人はコソコソと何かを話していたようだったがわたしがそれに気が付いた時、向こうもこちらを見てきたので自然、わたしたちは数秒間見つめ合うこととなった。

 ?

 こういう人もこの世界にはいるんだろうか。

 気味も悪いしそっと横切ろうとした時に、シャキシャキの男の子が


「dear Lover……」


 と呟いた。


「!!」


 日常会話だとしたらキザすぎるその言葉はわたしを驚かせるのに十分で、すぐに振り向きシャキシャキの彼を怪訝な顔で見つめてしまった。


「やっぱりか」

「さすがだよ」


 二人組は得意げに笑っていたが、わたしはもう何が何だか分からなくなっていた。

 

っていうか、


「わたしだけじゃなかったのかよっ!」

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